幅広い年代から人気のメディカルコスメ “ゼオスキン”!
その効果の根拠となる論文をみつけたので解説していきいます。
今回紹介する研究のスキンケア方法は、ゼオスキン製品およびその使用法とかなり類似しています。
この記事では、Journal of Drugs in Dermatologyに掲載された2016年の臨床研究報告に基づき、特定の4%ハイドロキノン(HQ)スキンケアシステムと1.0%レチノールクリームを併用する治療法が、肝斑と光老化の両方にどのような効果をもたらしたのかを詳しく解説します。


はじめに

多くの女性が抱える肌の悩みの中でも、特に改善が難しいとされるのが肝斑(かんぱん)と光老化です。
肝斑は、両頬などに左右対称に現れる境界が不明瞭なシミで、ホルモンバランスや摩擦などが関係すると言われています。
一方、光老化は、長年の紫外線暴露によって引き起こされる肌の変化で、シミ、小じわ、深いしわ、肌のざらつき、たるみなどが含まれます。
特に、アジア人を含む肌の色が濃いタイプ(Fitzpatrick Skin Type III-VI)の方にこれらの悩みは多く見られます。
これらの肌の悩みは、見た目だけでなく、自信の低下や社会生活への影響といった精神的な負担にもつながることが知られています。
肝斑を持つ患者さんが、同時に光老化の兆候を示すことは珍しくないため、両方の問題を同時に解決できるスキンケアや治療法が求められています。
本研究では、ハイドロキノン4%+レチノール1.0%クリームを塗布した時の効果について、24週間フォローアップして検証しています。
研究で評価された治療法

この研究で評価されたのは、4%ハイドロキノン(HQ)スキンケアシステム(Obagi Nu-Derm®)と、1.0%レチノールクリームを組み合わせた併用療法です。
指示された日常のスキンケアには、洗顔料、化粧水、4%ハイドロキノンクリーム、アルファヒドロキシ酸を含む角質ケア製品、そしてSPF50の日焼け止めが含まれていました。
具体的な使用方法は以下の通りです。
朝 : 洗顔料、化粧水、4%ハイドロキノンクリーム、角質ケア製品、日焼け止め(SPF50)
夜 : 洗顔料、化粧水、4%ハイドロキノンクリームと1.0%レチノールクリームを1:1で混ぜて塗布
ハイドロキノンは古くから色素沈着の治療に使われ、「ゴールドスタンダード」とされています。
一方、レチノイド(レチノールの誘導体含む)も肝斑に効果があり、光老化の様々な症状を軽減することが示されています。
高濃度で使用すると副作用が出ることもあるため、近年では組み合わせ療法が注目されています。
過去の研究では、4%HQと0.3%レチノールの組み合わせが、光老化の兆候改善において他の治療法よりも効果的であることが示されています。
研究の方法
この研究は、単一施設で行われた医師盲検試験として実施されました。
これは、治療を評価する医師にはどの患者がどのような治療を受けているかが知らされない形式です。
研究の対象となったのは、35歳から65歳の健康な女性で、軽度から中等度の肝斑と軽度から中等度の顔の光老化があり、Fitzpatrick Skin Type IIIからVIに該当する方でした。
これらの肌タイプは、メラニン色素が多く、肝斑や色素沈着が起こりやすい傾向があります。
対象者の平均年齢は50.8歳で、対象者の肌タイプは多様で、アジア系、ヒスパニック系、黒人などFitzpatrickタイプIII〜VIの比較的色素の多い肌が中心でした。(対象者のうち約3割がアジア人)
参加者は24週間にわたり、前述のスキンケアとレチノール併用療法を実施しました。
効果の評価は、主に以下の方法で行われました。
- 医師による肝斑の重症度、色素沈着強度、MASI(Melasma Area Severity Index)スコアの評価
[MASIスコアは、肝斑の面積、色素の濃さ、均一性を考慮して算出され、最大48点] - 医師による全体的な顔の光老化および個別の光老化兆候(しみ、ざらつき、たるみ、しわなど)の評価
- 顔写真の撮影
- 患者自身による肌の状態、治療効果、製品の使いやすさ、そして治療の忍容性(副作用の程度)に関するアンケート
これらの評価は、治療開始前(ベースライン)、そして治療開始後4週目、8週目、12週目、18週目、24週目に行われました。
最終的な結果は、研究を完遂できた31名で評価されました。(研究途中で脱落した7名は不遵守やフォロー落ちが主な理由で、副作用や効果不十分が原因で中止した人はいませんでした)
研究結果:肝斑と光老化がここまで改善!

得られた効果: わずか4週間で見えた改善
結論から言うと、このHQ+レチノール療法は肝斑にも光老化にも極めて有望な結果を示しました。
まず、開始わずか4週間後の最初の評価時点で、早くも肝斑の色素沈着の濃さが有意に改善し、肝斑の広がり・重症度スコアにも改善の兆しが見られました。
同時に、肌全体の光老化スコアや、まだらなシミ(色ムラ)も4週間で統計的に有意に改善しています
つまり、わずか1か月で「シミが薄くなってきた」「肌のトーンが整ってきた」という変化が客観的に確認できたのです。
8週間時点(2ヶ月後)の効果
8週間(2か月)経過時点では、効果はさらに広がり、肝斑そのものの重症度(顔に占める肝斑範囲の評価)が有意に改善しました。
また、光老化に関しても、肌の手触り(ざらつきの軽減)や細かいシワの減少、皮膚のちりめんじわの改善、紫外線による小さなシミ(老人性色素斑)の減少、肌のハリ向上(たるみの軽減)といった多面的な効果が8週間で統計的に確認できました。
言い換えれば、レチノールの抗シワ・ハリ効果が出始め、HQの美白効果と相まって、肌全体の若返りが2か月で着実に進んだということです。
18週間時点(約4か月)の効果
18週間(約4か月)が経過する頃になると、今度は深いシワにも有意な改善が見られるようになりました。
小じわより手強い額や口元の深いシワが、この時点でようやく目に見えて浅くなってきたのです。
これはレチノールによるコラーゲン産生などの効果が蓄積し、肌の構造自体が改善してきたことを示唆します。
24週間時点(6か月後)の効果
24週間(6か月)終了時点では、ほぼ全ての評価項目で劇的な改善が達成されていました。
肝斑に関しては、医師の評価による肝斑重症度スコアが平均4.27から2.68へと約37%改善し、色素沈着の濃さスコアも4.88から2.58へと約48%改善しました。
肝斑面積重症度指数であるMASI(0〜48点で高いほど重症)は15.32から5.58へと64%もの大幅低下を記録しています。
これは、平均すると「肝斑が半分以上消えた」ことを意味し、見た目にもかなり肝斑が薄くなったことを示しています。
また、顔全体の光老化総合スコアも3.76から2.19へと42%改善し、シミ・シワを含む肌老化の指標が全般的に良くなりました。
実際、評価対象となった11項目中10項目で、参加者の75%以上がなんらかの改善を示したとのことで、唯一改善がやや限定的だったのは“深いしわ”のみでしたが、それでも被験者の約50%には深いシワの改善が見られたとのことです。
総合すると、このプログラムによる肝斑の改善度は平均で「著明な改善(51〜75%の改善)」に相当し、ほぼすべての患者で何らかの改善効果が得られました。

0週=治療前を100%とした場合の平均スコア推移)。MASIは肝斑の広がりと濃さを総合評価する指標で、数値が低いほど肝斑が軽いことを意味します。本治療では、開始4週でMASIが大きく低下し始め、その後も一貫して改善が進みました。24週後にはMASIスコア平均が 約64%減少(改善) しており、肝斑の大幅な薄まりが客観的に示されています。
グラフからも明らかなように、肝斑の改善効果は比較的早い段階(1〜2か月以内)に現れ、その後6か月目まで緩やかではありますが着実に効果が積み重なっていったことが分かります。
また、肝斑以外の症状についても、
例えばまだらな色素沈着は4週で有意改善、小さなシミ(老人性肝斑)やキメ・ハリ・小じわ等は8週で有意改善、深いシワは18週で有意改善と、
それぞれの症状に応じて改善のタイミングは異なるものの、最終的にはあらゆる面でプラスの変化が見られたことが報告されています。
言い換えれば、このプログラム一つで「シミが薄く、肌がなめらかに、ハリが出て、細かいシワが目立たなくなる」という総合的な美肌効果が得られたと言えるでしょう。

青緑とオレンジのバーは肝斑に関する指標で、左から肝斑重症度スコア(顔全体に占める肝斑範囲と濃さの総合評価)と色素沈着の濃さスコア。紫のバーは肝斑の面積・重症度指数MASI(数値が大きいほど重症)、ピンクのバーは光老化総合スコアです。6か月間の治療で肝斑は約半分程度に薄くなり、光老化スコアも約40%改善していることが分かります。特にMASI指数の64%改善は顕著で、肝斑治療として非常に大きな効果と言えます。
上の図2に示したように、肝斑と光老化の両方で有意な改善が得られています。
MASI指数のような総合指標だけでなく、個別の症状別に見ても多面的な効果が確認されています。
医師の評価では、参加者全体の96.8%でMASIが改善し、83.9%の患者で肝斑重症度が改善、93.5%で色素沈着の濃さが改善しました。
また96.8%の患者で光老化スコアの改善が見られています。
患者さん本人の実感としても、「自分の肌の調子が良くなった」と答える人が大多数でした。
例えば、治療開始から3か月・6ヶ月時点で約75%の人が肌の質感(テクスチャ)が良くなったと感じています。
同様に、肌のハリ(弾力)については患者の75.0%が3か月で改善を実感、6か月後には84.0%に増加、シミ・色ムラの改善実感は81.2%→87.1%、小じわ・大じわに関しても53.1%→64.5%と、多くの患者が様々な項目で「良くなった」と回答しています。
このように、客観的評価と主観的評価の両面で高い改善効果が示されたことは、この治療レジメンの有効性を裏付ける重要なポイントです。
使用感と安全性: 患者満足度は?副作用はあった?
いくら効果が高くても、副作用が強かったり使い心地が悪かったりすれば治療は長続きしません。
では今回の4%HQ+1%レチノール療法において、患者さんの感じた使用感や満足度はどうだったのでしょうか?
結果から言えば、患者満足度は非常に高く、副作用も多くの人にとって許容範囲内でした。
まず、24週終了時に行われたアンケートでは、90.4%の患者が「今までの治療より効果がある」または「ずっと効果がある」と本治療を評価しています。
また、93.6%もの患者が「結果に非常に満足」または「満足」と回答し、ほとんどの方が効果に満足していたことがわかります。
使用感についても、67.8%の患者が「この治療は簡単(塗りやすい)」と答えており、毎日複数の製品を使うスキンケアであっても煩わしさはあまり感じなかったようです。
さらに注目すべきは、96.8%の患者が「肌が前よりスムース(なめらか)になった」と実感していた点でシミ以外にも肌質そのものが改善されたことでスキンケアの手応えを感じていたことがうかがえます。
副作用に関しては、レチノールとハイドロキノンを毎日使うということで多少の肌刺激は予想されましたが、ほとんどの患者で症状は軽度〜中等度に留まりました。
例えば医師による定期的な肌チェックでは、強い発赤(赤み)や激しい乾燥・皮むけが起きた人はおらず、中等度の赤み・乾燥がみられたのも数名に限られました。
ごく軽いヒリヒリ感やほてりを一時的に感じた人はいましたが、日常生活に支障をきたすレベルの刺激症状はありませんでした。
実際、深刻な副作用によって途中で治療を中止した患者は一人もいませんでした
ただし、中には1名だけ、治療初期の4〜8週にかけて強い乾燥と皮むけ(重度と判定されるレベル)を経験したケースが報告されています。
幸いこの方も治療自体は継続でき、適切な保湿ケアや塗布量の調整でのりきったものと考えられます。
副作用として最も多かったのは肌の乾燥や軽い刺激感ですが、これは高濃度レチノールやHQ製剤では想定内の反応であり、大半は一過性かつ軽微な症状でした。
研究者らも「観察された副反応は、レチノールやHQ配合の外用剤では典型的な範囲内であり、概ね良好に耐容された」と総括しています。
総合すると、このスキンケア療法の安全性は比較的高く、適切な指導の下で使えば多くの人が無理なく続けられると言えるでしょう。

まとめと結論
肝斑と光老化という二重の悩みに対して、4%ハイドロキノン+1%レチノールを中心とした包括的スキンケアは、想像以上に高い効果を発揮し得ることが今回の研究で示されました。
今回の研究で用いられたスキンケア手法は、ゼオスキンの製品を使用したスキンケアプログラムと似ているため、ゼオスキンで得られる効果について科学的根拠を知りたい方には参考になるはずです。
6か月のスキンケア継続使用により、肝斑が平均で半分以上薄くなると同時に、シワ・たるみ・肌質までも改善し、患者の満足度も非常に高かったことから、美容皮膚科領域における有力な治療オプションとして注目できます。
もちろん、効果について更なる検証も必要です。
本研究は単一グループでのオープンラベル試験(対照群なし)であり、プラセボや他治療との厳密な比較を行ったわけではありません。
また参加者の多くは女性であり、男性の肝斑患者で同様の効果が得られるかは未検証です(ただし肝斑は女性に多いため、臨床的なインパクトは大きいでしょう)。
しかしながら、肝斑患者の大半が抱える光老化の症状まで一緒に改善できるという本アプローチの利点は大きく、QOL(生活の質)の向上にも寄与すると期待されます。
重要な注意点(免責事項)
この記事は、特定の臨床研究の論文に基づいてその結果をまとめたものです。
この研究で使用された製品は、特定のブランド(Obagi Nu-Derm®)のスキンケアシステムと1.0%レチノールクリームでした。
個人の肌質や肌の状態、現在の治療状況、ライフスタイルによって、効果の現れ方や副作用は異なります。
肝斑や光老化の治療を検討する際は、必ず専門家(皮膚科医など)に相談し、ご自身の肌に合った、適切な診断と指導のもとでの治療法を選択してください。自己判断での使用は避けてください。