「レチノールとビタミンC、どっちが美肌に効くの?」
美容クリニックやスキンケア商品の成分として人気のこの2つ。
実はそれぞれ働き方がまったく違うんです。
本記事では、海外の研究結果や論文データをもとに、シミ・小ジワ・毛穴・美白への効果を比較。
化粧品だけでなく、美容医療レベルの成分までわかりやすく解説します。
美肌を目指すあなたにとって、今使うべきはどちらなのか?
今日からスキンケアに自信がもてるヒントをお届けします。

レチノールとビタミンC、それぞれどんな成分?

レチノールは「肌を生まれ変わらせる」ビタミンA誘導体
レチノールはビタミンAの一種で、肌に塗るとターンオーバー(新陳代謝)を促進し、コラーゲンの生成を助けます。小ジワや毛穴、シミへの効果が高く、“肌を生まれ変わらせる”ような働きがあるのが特徴です。
レチノールは、皮膚に吸収されると酵素反応でレチナールやレチノイン酸(トレチノイン、オールトランスレチノイン酸)に変換されます。
レチノイン酸は皮膚細胞のレチノイド受容体に作用し、細胞のターンオーバー(新陳代謝)を促進しコラーゲン産生を増やします。
これにより表皮の厚みが増し真皮のコラーゲン密度が高まるため、小ジワの改善やハリ向上につながります。
また、角質の整序化・剥離促進作用でシミのある表皮細胞を排出し、肌のトーンを均一化する働きもあります。
代表的なレチノイド製剤にはレチノールとトレチノイン(医薬品の外用レチノイン酸)があり、他にもレチナールデヒド(レチナール)やアダパレン、タザロテンなどが存在します。
ビタミンCは「肌を守って育てる」抗酸化&美白成分
一方、ビタミンC(アスコルビン酸)は抗酸化作用が強く、メラニンの生成を抑えてシミやくすみを予防します。肌のトーンアップやハリ改善、紫外線によるダメージ修復にも効果的です。
ビタミンCは水溶性ビタミンで、メラニン合成酵素(チロシナーゼ)の活性を阻害し、既存の酸化メラニンを還元して色を薄くする作用が報告されています。
また、コラーゲン合成に必須の酵素(水酸化酵素)の補酵素として働き、コラーゲン線維の安定化と新生を助けます。
さらに紫外線で発生する活性酸素を中和し、紫外線による光老化や色素沈着から肌を保護する効果もあります。
ビタミンCそのもの(L-アスコルビン酸)は不安定で酸化されやすいため、化粧品には誘導体(例:リン酸アスコルビルMg=MAP、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル=THD、パルミチン酸アスコルビルなど)が用いられます。
誘導体は安定性に優れますが皮膚で遊離アスコルビン酸に変換されてはじめて効果を発揮するため、透過性・酵素変換効率とのバランスが重要です。
例えばリン酸アスコルビルマグネシウム(MAP)は水溶性で安定性が高く、美白目的の製品に10%程度で配合されます。
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル(脂溶性誘導体)は浸透性が高く高濃度配合が可能で、後述の研究では30%製剤が使用されています
化粧品レベル(OTC)と医療用(高濃度処方)の効果の違い
レチノール vs トレチノイン(レチノイン酸)
レチノイン酸(トレチノイン)は医療用の処方薬で、レチノールよりも直接的・強力に作用するため効果も高いですが刺激も強くなります。
OTCのレチノールも長期使用で効果がありますが、体内で活性型に変換されるプロセスが必要なため、レチノイン酸に比べて作用は穏やかです。
例えば、ミシガン大学のKafiら(2007年、Arch Dermatol)は平均87歳の高齢者36名を対象に0.4%レチノールローションを片腕に24週間塗布する試験を行い、レチノール塗布側で有意なシワ改善が確認されています。
24週後の細かいシワのスコア変化はレチノール側で -1.64点改善に対し、対照側では -0.08点のみであり、統計的に非常に有意な差でした(P<0.001)
皮膚生検でもグリコサミノグリカンとⅠ型プロコラーゲンの増加が認められ、レチノールが真皮マトリックスを増強することが示唆されています。
このようにレチノール(OTC)でも十分な効果がありますが、効果発現までに時間がかかり、高齢者の皮膚で半年ほどの継続使用が必要でした。
一方、トレチノイン(医療用レチノイド)は多数の大規模臨床試験で光老化改善効果が実証されています。
Weissら(1988年、JAMA)の研究では、0.1%トレチノインクリームを顔に4ヶ月間外用し、細かいシワ・深いシワ・肌のざらつき・黄ぐすみなどがプラセボより有意に改善しました。
Weinsteinら(1991年、Arch Dermatol)による251名対象の大規模試験でも、0.05%トレチノイン群は0.01%やプラセボ群よりシワ、色ムラ、粗大な肌理の著明な改善を示し、濃度依存性の効果が確認されています。
トレチノインは短期数ヶ月で効果が現れ、6~12ヶ月以上の長期使用で真皮コラーゲン増生と持続的な改善が認められています。
こうした強力な効果により、0.02%トレチノインクリームは米国FDAにより光老化治療薬として承認されています
ただしトレチノインは処方薬であり、副作用管理が必要なため医師の指導下で使用されます。
まとめると、化粧品レベルのレチノールでも長期間でシワ・色ムラ改善効果がありますが、医療用レチノイン酸はより短期間で大きな改善が期待できます。
ただし後述のように副作用リスクも高いため、OTCと処方薬では効果と安全性のトレードオフがあります。
なお、レチノールとレチノイン酸の中間的存在としてレチナールデヒド(レチナール)があります。
レチナールはレチノイン酸の一歩手前の形で、レチノールより速やかに作用しつつ刺激はレチノイン酸より穏やかとされ、ヨーロッパではレチナール配合コスメも販売されています。
ビタミンC製剤(OTC)と医療的応用
ビタミンC自体は医薬品として処方されることは基本的になく、高濃度のビタミンC美容液や導入治療が医療の現場で用いられます。
OTC化粧品では濃度5~20%程度のL-アスコルビン酸を配合した美容液が一般的です。
研究では濃度20%で皮膚吸収が頭打ちになり、20%以上では吸収が逆に低下したとの報告もあります
そのため市販品でも15~20%前後が実用上の上限濃度です。
一方、医療現場ではビタミンCを電流で浸透させる「イオン導入(イオントフォレシス)」や、高濃度ビタミンCを真皮に直接注入するメソセラピーが行われることがあります。
例えばHuhら(2003年、Dermatology)はビタミンCイオン導入を片側顔面の肝斑患者29名に行い、12週後に有意な色素減少(カラー値L値の改善)を認めています。
これは医療機器を用いた例ですが、ビタミンC自体は非処方成分のため高濃度かつ安定な製剤であれば美容クリニック以外でも入手可能です。
実際、テトラヘキシルデカン酸アスコルビルなどは30%配合の高濃度美容液が市販されており、後述の研究でも30%製剤の安全性と有効性が示されています。
総じて、ビタミンCはOTCと医療用の差はレチノイドほど明確でなく、どちらも高濃度の安定製剤を使えば効果が期待できます。
ただし浸透性を高める医療的手法(レーザー後の導入やイオン導入等)を組み合わせると、より短期間で効果を出せる可能性があります。
シミ・美白に効くのはどっち?

レチノール・レチノイン酸の美白効果
レチノイドは元来シミ治療薬として開発されたわけではありませんが、表皮のターンオーバー促進によって過剰なメラニンを含む表皮細胞を排出し、またメラノサイトの暴走を正常化することで色素沈着を薄くする効果があります。
実際、トレチノイン外用は光老化の老人性色素斑(いわゆるシミ)を漂白する(薄くする)作用があると1980年代から報告されています。
上記のWeissら(1988年)の試験でも、0.1%トレチノインにより色調の均一化(黄ぐすみや色ムラの改善)が認められています。
さらにWeinsteinらの大規模試験(1991年)では、6ヶ月間でまだらな色素沈着(mottled hyperpigmentation)の有意な改善を示しました。
0.05%トレチノインを用いた群では色ムラが明らかに減少し、濃度の低い0.01%群やプラセボ群との差が統計的に確認されています
また、日本人や中国人のシミにも有効で、0.1%トレチノインクリームを12週間使用した試験ではアジア人の光老化による色素斑が有意に薄くなったとの報告があります。
これらのエビデンスに加え、トレチノインは肝斑治療で用いられるトリプルコンビネーション療法(ハイドロキノン+トレチノイン+ステロイド)の一成分として配合され、相乗的にメラニンを抑制する目的で使われています。
つまり医療用レチノイン酸はハイドロキノンなどと併用することで強力な美白効果を発揮します。
一方、OTCレベルのレチノール単独での美白効果は穏やかですが、臨床試験で有効性が示唆されています。
たとえば0.3%および0.5%レチノール配合美容液を12週間使用した比較試験では、両濃度でシミの面積と濃さが減少し、全顔の色ムラが有意に改善しました
高濃度のほうが若干効果が大きかったものの、0.3%でも十分な改善が認められています。
またHerndonら(2016年、J Drugs Dermatol)の試験では、0.5%レチノールと30%ビタミンC誘導体を組み合わせた12週間のケアで、開始8週目から色素沈着の臨床評価スコアが有意に低下(改善)しています。
この試験はレチノール単独効果ではありませんが、レチノールを用いたスキンケアで2~3ヶ月程度継続すればシミ・くすみの目立ちにくい肌になることが期待できると示唆しています。
ビタミンCの美白効果
ビタミンCはメラニン生成経路の複数段階に作用し、シミやくすみを改善すると考えられています
まず、チロシナーゼ酵素を阻害してメラニン産生を抑制し、次にメラニン前駆体の酸化を還元してメラニンそのものを薄い状態に戻す働きがあります。
さらに抗酸化作用で紫外線照射後に発生するフリーラジカルを消去し、炎症後色素沈着や日焼けによるシミを予防します。
実際の臨床効果として、ビタミンC外用は肝斑や色素沈着の治療補助に用いられてきました。
Huhら(2003年)の肝斑研究では、12週のビタミンCイオン導入後に客観的な色みの改善がプラセボ側より有意に大きく、肝斑の色素が減少しています。
また、Kameyamaら(1996年、JAAD)は日本人59名を対象に10%リン酸アスコルビルマグネシウム(MAP)配合クリームを用いた試験を行い、肝斑やそばかすの患者34名中19名(56%)に有意な美白効果が認められたと報告しています。
正常肌では効果が乏しかったものの、色素沈着のある皮膚では半数以上に有効だったことになり、安定型ビタミンC誘導体でも臨床的なシミ軽減効果があることを示しています。
さらに近年のシステマティックレビュー(Correiaら2023年、J Cosmet Dermatol)では、ビタミンC外用に関する7つのRCT(総参加者139名)を分析し、ビタミンC処置部位の皮膚は有意に明るくなったと結論づけています。
客観的な色素計測で有意な肌の明るさ向上が示され、臨床的にも「ビタミンCには色むらを改善する、脱色素作用がある」と結論されています
もっとも、改善は穏やかで目に見える変化には長期使用が必要とも指摘されており、即効性ではハイドロキノンなどに劣る面もあります。
実際、5%アスコルビン酸 vs 4%ハイドロキノンの肝斑治療比較試験(16名対象、Wangら2004年、Int J Dermatol)では、ハイドロキノン群の93%が「良好以上の改善」と評価されたのに対し、ビタミンC群では62.5%に留まりました。
ただ、ハイドロキノンには及ばないまでも、半数以上の患者でビタミンCも改善効果を示した点は注目すべきです。
しかも副作用が少ないというメリットがあります。
まとめ
以上より、シミ・美白効果の総合比較としては、「既にできた濃いシミを強力に薄くする」点では医療用レチノイド(トレチノイン)が勝ります。
特にハイドロキノンなどと併用した処方ではビタミンCより明確な改善が期待できます。
一方、「肌全体のくすみをとりトーンを上げる」「予防的に美白ケアをする」目的ではビタミンCが適しています。
ビタミンCは抗酸化による予防効果が強く、日中のUVダメージから肌を守り新たなシミを出来にくくする働きがあるからです。
実際、ビタミンCと日焼け止めを併用するとUVによる色素沈着を減らせるとの研究もあります(ビタミンC+E+フェルラ酸配合美容液でUV防御効果が2倍になった報告など)。
したがって、既存のシミにはレチノイド、全体的なくすみ改善や予防にはビタミンCという風に使い分けるのが効果的でしょう。
小ジワ・たるみに強いのはどっち?

レチノール・レチノイドの抗シワ効果
小ジワ改善の代表成分といえばレチノール。
皮膚のコラーゲン生成を促し、シワを内側から押し上げるように目立たなくします。
レチノイドはシワ改善のゴールドスタンダード(最も信頼できる治療法)とされています。
1980年代後半以降、複数の二重盲検試験でトレチノインがシワを浅くし肌質感を改善することが実証されました。
前述のWeissら(1988年)の研究では、医師の臨床評価で細かいシワも深いシワも有意に軽減し、触った時の粗さも減少しています。
Leverら(1990年)の試験では0.05%トレチノインを3ヶ月使用して表皮の厚み増大と細かいシワの改善を確認しています。
さらにWeinsteinら(1991年)の大規模試験では、シワの深さ・数の顕著な減少に加え、肌のハリ低下(たるみ)やキメの粗さも改善し、これらの効果がトレチノイン濃度に依存して高まることが示されました。
長期試験でも効果持続が報告されており、Olsenら(1997年)の研究では0.05%トレチノインを12ヶ月間適用し、6ヶ月目までシワ改善が進行しその後維持されたとされています。
こうしたエビデンスから、レチノイン酸は長期使用で真皮リモデリング(コラーゲン新生)をもたらし、シワを内側から押し出すと理解されています。
OTCレベルのレチノールについても、「抗老化作用はレチノイン酸と類似しうる」ことが分かってきました。
Kangら(1995年、J Invest Dermatol)は、健常者でレチノールとレチノイン酸の作用を比較しました。
レチノール外用でも表皮の肥厚(厚み増加)とレチノイン酸結合タンパク質の発現増加が起こり、レチノイン酸と同様の組織変化を生じることを報告しています。
(しかもレチノールでは肌への刺激反応が少なかったです)
臨床的なシワ改善効果も、例えば0.1%レチノール配合クリームを用いた複数の二重盲検試験において、4週間という短期間で目尻のシワや肌の質感が有意に改善したとの報告があります。
また前述のKafiら(2007年)の24週間試験では、高齢者の肉眼的なしわの程度がレチノール塗布側で明らかに軽減し、組織学的にも真皮コラーゲン量増加が確認されています。
要するにレチノールも継続すればシワを減らせるということです。
ただし、処方薬トレチノインに比べると効果発現は遅くマイルドなので、深いシワや重度の光老化肌ではトレチノイン使用の方が早い改善が見込まれます。
ビタミンCの抗シワ効果
ビタミンCもコラーゲン生成への関与や抗酸化作用から、シワ改善に一定の効果があります。
Fitzpatrick & Rostanら(2002年、Dermatol Surg)は10%アスコルビン酸+7%テトラヘキシルデカン酸アスコルビル配合ジェルを片側顔面に、反対側にプラセボを12週間塗布する試験を行いました。
その結果、ビタミンC側の方が頬のシワ・口周りのシワスコアが有意に減少し(p<0.01)、顔全体としてもビタミンC適用側に優位な若返り効果がみられました。
患者自身の評価でも「ビタミンCを塗った側のほうが良くなった」と感じた人が複数おり、組織学的解析ではビタミンC側の皮膚で新生コラーゲンの増加が認められています。
このようにビタミンCはシワの深さを浅くし、肌表面の滑らかさを向上させることができます。
さらに先述の2023年システマティックレビューでも、ビタミンC処置群はプラセボ群に比べ肌表面がより滑らかでシワが目立ちにくくなったと報告されています。
ただし、水分量改善(保湿効果)についてはプラセボと同程度であったとのことで、ビタミンC自体に保湿作用はあまりなくあくまでコラーゲン増生と抗酸化による質的改善でシワに対処しているようです。
まとめ
総合すると、シワ改善効果が高いのはレチノイドです。
特に深めのシワ・長年の光老化にはトレチノインが最も効果的で、レチノールも長期間で有効です。
一方、ビタミンCは細かいシワやちりめんジワの改善に有用で、エイジング予防の観点からもコラーゲン合成を助けて将来のシワ形成を抑える効果が期待できます。
臨床的には「既存のシワを積極的に減らす」のはレチノイド、「できかけの細かいシワを目立たなくする」のはビタミンCという位置付けです。
しかし、ビタミンC単独でも12週間で有意なシワ改善が可能であるため、刺激などでレチノールが使えない人にとって代替手段となり得ます。
理想的には両者を併用し、レチノイドでコラーゲン新生・表皮再生を促進しつつ、ビタミンCで酸化防止とコラーゲン補強をすることで、より効果的にシワ対策ができます。
毛穴の開きに効くのはどっち?

レチノール・レチノイドの毛穴縮小作用
毛穴が気になるならレチノールが最適です。
レチノイドは毛包内の角質詰まりを改善し皮脂分泌を抑制するため、もっぱらニキビ治療に使われますが、その過程で毛穴を目立ちにくくする効果もあります。
毛穴が開大して見える原因の一つは、毛穴周囲のコラーゲン減少(ハリ低下)と毛穴内部の角質・皮脂詰まりです。
レチノイドは真皮コラーゲンを増やし毛包周囲の構造を引き締めるとともに、
角質細胞の異常な凝集を抑えて毛穴の詰まり(面皰)を減らすため、長期使用で毛穴のサイズ自体が小さくなることが期待できます。
実際、最近の臨床研究レビューによれば「トレチノインとレチノールの両方で毛穴の開きが改善した」との報告があり、レチノイドは毛穴治療の第一選択になり得るとされています。
Curologyの皮膚科医による記事でも、ビタミンA誘導体はコラーゲンとエラスチン産生を増やし毛穴の見た目を改善するとまとめられています。
0.1%レチノールクリームで24週間後に毛穴サイズが有意に縮小したとの報告や、
アダパレン0.3%やタザロテン0.1%といった処方レチノイドも臨床的に毛穴径縮小が報告されており、総じてレチノイド類は毛穴対策に有効といえます。
毛穴は遺伝的要因も大きく完全に消すことはできませんが、継続的なレチノール使用で目立たなくすることは可能です。
ビタミンCの毛穴への影響
ビタミンCについては、毛穴そのものを収縮させる直接的作用は確認されていません。
毛穴の開大は主に皮脂腺の大きさ・皮脂分泌量、毛穴周囲のコラーゲン変性によるたるみなどに起因します。
ビタミンCは皮脂分泌を抑える作用が特に報告されておらず、またレチノイドのように毛包上皮のターンオーバーを促す作用もありません。
そのため毛穴詰まりの改善や皮脂減少といった毛穴縮小メカニズムは持ち合わせていないと考えられます。
ビタミンCのコラーゲン増生補助作用で毛穴周囲のハリがわずかにアップすれば毛穴が引き締まる可能性はありますが、臨床研究で毛穴サイズの変化を評価した例はほとんどありません。
一部、ビタミンC配合製品で肌全体のきめが整い結果的に毛穴が目立ちにくくなったとの主観的報告はありますが、これは肌質改善による間接的な効果と考えられます。
上述のレビューでも毛穴に関するビタミンCの記載は特に触れられていません。
まとめ
毛穴対策としてはビタミンCよりもレチノイドの方が有用です。
毛穴の開きが気になる場合はレチノール/トレチノイン主体のケアを行い、ビタミンCは全体的な肌質向上の補助として位置づけるのが良いでしょう。
それぞれの副作用や注意点は?

レチノールは使い始めに赤みや乾燥が出ることも
レチノイドの主な副作用は皮膚の刺激症状です。
具体的には、発赤(赤み)、乾燥、皮剥け、ヒリヒリ感などのいわゆる「レチノイド反応(A反応)」が、使用開始から数週間程度現れることがあります。
これはレチノイドが表皮の細胞増殖を促し角質を速く剥がすため一時的に皮膚バリアが乱れることによるものです。
ほとんどの場合、使用を継続するうちに肌が慣れて耐性がつき、約2週間~1ヶ月でこうした症状は改善します。
実際、ある研究では「レチノイド副作用への皮膚の順応がわずか2週間で起こった」と報告されており、予想以上に早期に肌が慣れるケースもあります
とはいえ個人差が大きいので、最初は週2~3回から始める・保湿を徹底するなどして様子を見るのが基本です。
副作用リスクは濃度と製剤タイプに依存し、例えばOTCのレチノール0.1%では軽度な乾燥程度で済むケースが多く、一方トレチノイン0.05%クリームではもう少し強い皮膚刺激が出やすいです。
トレチノイン製剤の添付文書にも日光曝露による刺激増強の注意や、紅斑・落屑が一定頻度で起こる旨が記載されています。
レチノイドの全身的安全性については、外用であれば血中移行量がごく微量であり基本的に安全です。
ただし妊娠中の使用は禁忌とされています。
経口ビタミンA製剤(アキュテイン等)は催奇形性が高く厳重な避妊管理が必要ですが、外用であっても100%リスクがないとは断言できないため妊婦・授乳婦へのレチノール・トレチノインの使用は避けるのが通例です。
安全性試験で外用レチノイドによる奇形発生との明確な関連は示されていませんが、念のため控える方がよいでしょう。
小児や敏感肌での安全性も確立していないため、基本的には成人の美容目的に限り自己責任で使用する成分と言えます。
ビタミンCは低刺激で妊娠中も使いやすい
ビタミンCは非常に安全性の高い成分です。
外用による全身吸収はごく僅かで、体内のビタミンCプールに影響を与えることもありません。
また人体に必須のビタミンであるため、妊婦を含めあらゆる層で使用可能です。
実際、妊娠中はレチノイドの代替としてビタミンC美容液がよく推奨されます。
臨床試験でも、0.6~10%濃度のビタミンCまたは誘導体を使用して有害事象が報告されなかったとのレビュー結果があります
濃度が高い場合でも、15~20%程度までなら大半の人で問題なく使えます。
ただし刺激を感じる場合もわずかながらあります。
低pHの純粋アスコルビン酸美容液(pH3以下)は、傷があると染みたり敏感肌では一時的に発赤することがあります。
また20%以上の極端に高濃度な製剤では接触皮膚炎を起こした例も報告されています。
ただ、それらは稀であり概ねビタミンCは皮膚に対して穏やかです。
日中に塗って紫外線に当たっても特に光毒性や光感作性はなく、むしろ塗っていた方が紫外線防御になると言われていますで。
総じてビタミンCは長期使用しても安全であり、副作用と言えば「ごく稀に刺激を感じる」「製剤の酸臭が気になる」程度でしょう。
安定性と製剤上の注意
レチノールとビタミンCはいずれも不安定な成分であり、製剤・保管方法に注意が必要です。
レチノールは酸化されやすく光でも分解するため、遮光・密閉容器で保存し夜間に使用するのが基本です。
化粧品ではレチノールをカプセル化(カプセルレチノール)して配合し、安定性と浸透性を高めている製品も多くあります。
トレチノインもアルミチューブに入れ遮光されているのが通常で、開封後は早めに使い切る必要があります。
ビタミンC(アスコルビン酸)はさらに不安定で、空気・熱・光でどんどん酸化してしまいます。
開封後に黄ばんできた美容液は、アスコルビン酸がデヒドロアスコルビン酸(DHA)に酸化したもので、有効性が低下しています。
そのため、ビタミンC美容液は開封後数ヶ月以内で使い切る、小分け容器にする、冷暗所で保管する、といった工夫が推奨されます。
またpHも重要で、アスコルビン酸が皮膚に浸透するにはpH4以下の酸性環境が望ましいですが、低pHほど不安定かつ刺激が強くなります。
このジレンマを解決するために誘導体を用いたり、他の抗酸化成分と組み合わせる手法が取られます。
特に有名なのがビタミンC+ビタミンE+フェルラ酸の組み合わせです。
この組み合わせは2005年の研究で、15%ビタミンCと1%ビタミンEに0.5%フェルラ酸を添加するとビタミンCの化学的安定性が90%向上し、光防御効果が2倍になったと報告されています。
ビタミンEが酸化ビタミンCを再生し、フェルラ酸がpHを安定化して紫外線吸収も助けるためと考えられています
市販の高機能美容液にもこの処方を採用したものがあり、抗酸化相乗効果も得られるため理にかなった方法です
一方、ビタミンC誘導体は安定ですが、前述の通り浸透後に酵素変換されないと効果が出ません。
例えばリン酸アスコルビルなどは安定な代わりに経皮吸収性が劣り、皮膚内での酵素反応性も限定的との指摘があります。
実験ではリン酸型ビタミンCは肌での浸透率が低く作用も限定的だったという報告もあります。
それでも長期使用すれば効果は発揮されるため(Kameyamaらの10% MAPクリーム試験など)、安定性重視なら誘導体、即効性重視なら純粋アスコルビン酸と選ぶとよいでしょう。
最後に使用上の安全対策として、レチノイド使用時は高いUV防御が重要です。
上述のようにレチノイド自体は厳密には光毒性を持たない可能性がありますが、皮膚のバリアが弱まり紫外線ダメージを受けやすくなる恐れがあります。
何より、せっかくシミ・シワ改善を目指しているのに日焼けしては台無しですから、朝はSPFの高い日焼け止めを必ず塗る習慣が必要です
ビタミンCはむしろ日中に使うことでUVによるフリーラジカルダメージを減らす可能性があるので、日焼け止めとの併用で美白・抗老化効果を最大化できます。
総じて、レチノールとビタミンCはいずれも適切に使えば高い美容効果と安全性を両立できる成分です。
それぞれの長所・短所を理解し、上手に取り入れることで、シミの少ない明るい肌・ハリのある若々しい肌・目立たない毛穴を手に入れる手助けとなるでしょう。
レチノールとビタミンCは一緒に使っていいの?

朝はビタミンC、夜はレチノールがゴールデンルール
併用は可能であり、むしろ推奨されることが多いです。
実際、Herndonら(2016年)の試験では0.5%レチノール製剤(夜用)と30%ビタミンC誘導体配合保湿剤(朝用)の2製品併用で12週間後にシミ・シワ・ハリ・キメなどあらゆる項目が有意に改善しています。
被験者の自己評価でも大半が満足し、総合的な肌の若返り効果が確認されました。
なお、「同時に塗るとお互いの効果を打ち消すのでは?」という声も一部にあります。
過去には、ビタミンCの低pH環境下ではレチノールの安定性が損なわれるとか、併用で刺激が強まるといった懸念がありました。
しかし近年の見解では、適切に処方・製剤化されたものであれば同時使用しても問題ないとされています。
例えばビタミンC誘導体(THDなど)は高いpHでも安定ですし、レチノールもカプセル化技術で徐放性・安定性が向上しています。
ただ、敏感肌でどうしても刺激を感じる場合は無理に同時に重ねず朝晩で分けるor交互日に使うなど調整すると良いでしょう。
基本的にはレチノール+ビタミンCの組み合わせは美容皮膚科学的に理にかなっており、「しみ・しわ」に総合効果を発揮するため広く推奨されています。
注意点は、両方とも酸化しやすい成分なので、開封後は早めに使い切る・冷暗所で保管すること。
また、刺激が強いと感じたら、頻度を調整することが大切です。
まとめ|肌悩み別のおすすめ成分と使い方
美肌を目指すには、自分の肌悩みに合った成分を選び、正しい使い方を続けることが大切です。
レチノールとビタミンCは、どちらも美容医療の現場でも使われる“信頼できる成分”。 上手に取り入れて、透明感とハリのある理想の肌を目指しましょう!
参考文献
- Weiss JS et al. (1988) JAMA – Topical tretinoin improves photoaged skin (PMID: 3346983)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Weinstein GD et al. (1991) Arch Dermatol – Topical tretinoin for photodamaged skin (PMID: 2056316)pmc.ncbi.nlm.nih.gov
- Kafi R et al. (2007) Arch Dermatol – 0.4% retinol improves naturally aged skin (PMID: 17515510)pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
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