ナイアシンアミド(ビタミンB3)の美容効果と正しい使い方【科学的エビデンス】

目次

ナイアシンアミドとは?|その美容における役割

ナイアシンアミドとは

ナイアシンアミド(ニコチンアミド)はビタミンB3の一種で、水溶性かつ安定性に優れる美容成分です。

近年スキンケア製品で注目されており、美白(シミ・くすみの改善)、毛穴ケア(皮脂抑制による毛穴の目立ち改善)、シワ対策(抗老化作用)など幅広い効果が報告されています。

ナイアシンアミドは皮膚のバリア機能を強化し、潤いを保持するのにも役立つため、肌質を選ばず敏感肌からエイジングケアまで幅広く利用されています。

さらに抗炎症作用も持ち、ニキビや赤ら顔のケアにも有用とされています。

主な効果をまとめると以下の通りです:

  • 美白作用(シミ・くすみ改善): メラニンの肌への移行を防ぎ、色むらのない明るい肌へ導く
  • 毛穴・皮脂抑制: 皮脂分泌をコントロールしテカリを抑えることで、毛穴の目立ちを軽減
  • シワ改善・抗老化: コラーゲン産生の促進や抗酸化作用により小ジワやハリ低下を改善
  • バリア機能強化: セラミド産生を高め、水分保持力をアップさせて肌荒れを防止
  • 抗炎症作用: 肌の炎症や赤みを和らげ、ニキビ・ロザセア(赤ら顔)の症状緩和に寄与

このようにナイアシンアミドは科学的エビデンスに支えられた多機能な成分であり、化粧品業界では市販のOTC製品から医療グレードの処方製剤まで幅広く研究・応用されています。

以下では、美白・毛穴・シワといった効果ごとに、その根拠となる海外の研究結果をわかりやすく解説します。

ナイアシンアミドの美白効果【シミ・くすみへの作用】

ナイアシンアミドの美白効果

ナイアシンアミドはメラニンの過剰産生や移動を抑制することで美白効果を発揮します。

2021年韓国のレビュー論文によると、メラノサイト(色素細胞)からケラチノサイト(肌表皮の細胞)へのメラノソーム転送(色素顆粒の受け渡し)を遅らせる作用が確認されています。

この機序により、肌表面に沈着するメラニンが減少し、シミやくすみの改善につながります。

実際、日本の厚生労働省でもナイアシンアミドは「メラノソームの移動抑制による美白有効成分」として承認されており、

海外の研究でも肝斑や日焼けによる色素沈着を有意に減少させることが報告されています。

臨床試験のエビデンスも豊富です。

例えば、18人の日本人女性を対象にしたランダム化試験では、5%ナイアシンアミド配合の保湿クリームを8週間使用したところ、使用していない側の肌に比べて明らかに総色素沈着面積が減少しました。

また、肝斑患者27人を対象とした試験では、4%ナイアシンアミドクリームと美白成分ハイドロキノン4%クリームを左右の頬にそれぞれ塗布して比較しています。

8週間後、両群とも肝斑の面積・重症度指数(MASI)が有意に改善し、ナイアシンアミド群の44%で「良好〜優れた改善」が見られました(ハイドロキノン群は55%)。

副作用発生率はナイアシンアミド群18%に対しハイドロキノン群29%で、効果が近い一方で刺激の少ないナイアシンアミドの有用性が示されています。

さらに2013年の別の研究では、4%ナイアシンアミド配合クリームが脇の下の慢性的な黒ずみを改善し、抗炎症剤(デソニド0.05%)と比較して若干劣るものの有意な美白効果を示しました。

以上のように、ナイアシンアミドはシミ・くすみの予防と改善に有効であり、刺激の強いハイドロキノンやレチノイドの代替・補助としても注目されています。

日本でも医薬部外品の美白有効成分として、ナイアシンアミドが配合された製品が販売されており、その安全性と有効性から長期使用に適した美白成分と言えるでしょう

ナイアシンアミドの毛穴・皮脂への効果【テカリ防止と毛穴の引き締め】

ナイアシンアミドの毛穴への効果

毛穴の開きや黒ずみは過剰な皮脂分泌と関連することが多いですが、ナイアシンアミドにはその皮脂分泌を抑制する作用があります。

2006年のプラセボ対照試験では、2%ナイアシンアミド配合の保湿剤を使用したグループで2週間後に平均21.3%もの皮脂分泌量低下が認められ、プラセボ群(8.6%低下)と比較して有意な効果でした。

4週間の継続でも同様に皮脂レベルが減少しており、ナイアシンアミドが肌の油分バランスを整えることが示唆されています。

皮脂が減少しテカリが抑えられることで、毛穴が過剰な皮脂で押し広げられるのを防ぎ、毛穴の目立ちが改善する効果が期待できます。

さらにナイアシンアミドは抗炎症作用を持つため、赤みやニキビを抑える働きもあります

炎症によって毛穴周囲の組織がダメージを受けると毛穴がさらに開大しやすくなるため、ナイアシンアミドの抗炎症効果は毛穴悪化の予防にもつながります。

実際、4%ナイアシンアミド配合の化粧品を8週間使用した試験では、使用しなかった側に比べて毛穴のサイズが有意に縮小し、肌の凹凸(キメの乱れ)も改善したとの結果が得られています。

この試験では12週間で小ジワの改善も確認されており、ナイアシンアミドが総合的に肌質(テクスチャ)を滑らかに整える効果が裏付けられました。

なお、ナイアシンアミドは抗菌薬とは異なるアプローチでニキビに作用するため、抗生物質外用剤(クリンダマイシンなど)と同程度の有効性を示した研究(1995年)もあります。

ただ、中等度のニキビ患者に行った2003年の別の研究では、リン酸クリンダマイシン1%とニコチンアミドゲル4%の併用療法が、リン酸クリンダマイシン1%単独療法と比較して、追加的な利点を示すことはありませんでした。

これらの知見から、ナイアシンアミドは毛穴の目立ちや皮脂過多・ニキビに悩む肌の味方となる成分です。

ナイアシンアミドのシワ改善効果【ハリ・エイジングケア】

年齢とともに現れるシワやハリ低下に対しても、ナイアシンアミドは有望な効果を示します。

ナイアシンアミドは細胞のエネルギー代謝やDNA修復を助ける補酵素(NAD⁺)の前駆体であり、コラーゲン産生や抗酸化にも関与すると考えられています。

加えて肌のバリア機能を強化し水分保持を改善するため、長期使用で乾燥小ジワの軽減にもつながります

こうした生物学的作用は実際の臨床研究でもエイジングケア効果として表れています。

前述した4%ナイアシンアミド配合クリームを用いた8週間の二重盲検試験では、適用側のシワの程度が明らかに軽減し、医師による視覚評価でも有意なシワ改善が確認されました。

レプリカ法(肌の型取りによる表面解析)でもシワの深さが減少しており、ナイアシンアミド単独でもシワを浅くする効果が示されています。

このようにナイアシンアミドはコスメティック成分でありながら医療レベルのエイジングケア効果を発揮し得る点で特筆すべき存在です。

実際、ナイアシンアミド(4〜5%)配合化粧品を適切に組み合わせて用いることで、レチノール製品に匹敵するほどのシワ改善効果が期待できるとも指摘されています。

さらにナイアシンアミドとレチノールを併用すれば相乗効果が得られるとの報告もあり、レチノールの刺激を和らげつつ効果を底上げする組み合わせとして注目されています。

これらのエビデンスから、日本でもナイアシンアミドは「しわを改善する」効能を持つ有効成分として承認されました。

例えば資生堂は、ナイアシンアミド配合クリームで法令線など真皮シワの有意な改善データを提示し、厚労省の認可を取得しています。

その意味でナイアシンアミドは、美白とシワ改善という2大エイジングケア効果を公式に認められた希少な成分です。

ナイアシンアミド配合製品:OTC化粧品と医療グレードの研究

ナイアシンアミドは上述のようにOTC(一般化粧品)から医療分野まで幅広く研究・応用されています。

市販の美容液やクリームでは主に2〜5%程度の濃度で配合され、シミやシワを予防・改善する機能性コスメとして位置付けられています

一方、医療の現場や臨床研究では4%ナイアシンアミドが肝斑治療の選択肢として用いられたり、ニキビ治療で抗生物質の代替として用いられる例があります。

これらの場合、ナイアシンアミドは処方薬ではなく処方指導下で使用される高機能な成分といえます。

例えば肝斑の臨床研究では前述の通りハイドロキノン4%と同等の効果が示され、イドロキノンに耐えられない患者への代替療法としてナイアシンアミドが提案されています。

また、中等度のニキビ患者を対象にした試験では、ナイアシンアミド4%配合ゲルがクリンダマイシン1%ゲル(抗生物質外用)の治療効果に匹敵し、副作用や耐性菌リスクのない安全な治療オプションとなり得ることが示唆されています。

さらに先行研究では、ナイアシン(ニコチン酸)を経口投与して皮膚がんリスクを低減させる試みや、肌の赤み(酒さ)患者に対する外用ゲルの抗炎症効果など、医学領域での応用可能性も模索されています。

総じて、OTC化粧品の分野では安全性と美容効果の高さから広く使われ、臨床(特に皮膚科)の分野でも補助療法として活用されているのがナイアシンアミドです。

処方箋なしで入手できる成分でありながら、エビデンスに裏付けられた効果を持つため、医師や専門家からも高く評価されています

実際、ナイアシンアミド配合製品は皮膚科医推奨のスキンケアにも採用されており、患者の肌質・悩みに応じて処方コスメ的に用いられるケースも増えています。

こうした「コスメと医療の橋渡し的存在」である点も、ナイアシンアミドの大きな魅力と言えるでしょう。

ナイアシンアミドの推奨濃度と安全性【どの濃度を選ぶべき?】

ナイアシンアミドの推奨濃度

ナイアシンアミドの推奨濃度は一般に2〜5%前後とされています。

多くの臨床研究がこの範囲で有意な効果を確認しており、初心者にはまず約5%以下の製品から始めることが勧められます。

実際、皮膚科専門医も「初心者には2〜5%の濃度が適切」と述べており、肌が慣れてきたら最大10%程度まで段階的に上げてもよいとしています。

5%を超える高濃度製品(例: 10%美容液)はより頑固な悩みに追加効果を発揮する可能性がありますが、人によってはわずかな刺激(軽い発赤や痒み)を感じる場合もあります

実験データでは、21日間連続適用の累積刺激試験でも5%製品で刺激性は認められず、10%という高濃度でも一時的なほてりや刺激は生じにくいことが報告されていますが、敏感肌の方は慎重に様子を見ることが大切です。

高濃度のものを使う場合は腕などでパッチテストを行い、安全性を確認してから顔全体に使用すると安心です。

幸いナイアシンアミドは非常に安全性の高い成分として知られており、通常使用濃度(<5%程度)では長期使用でも肌トラブルが起きにくいことが確認されています。

したがって適切な濃度範囲であれば毎日使っても問題ないと言えます。

ただしどんな成分でも個人差はあるため、使用中に強いヒリヒリ感や異常な赤みが出た場合はすぐに使用を中止し医師に相談してください。

ナイアシンアミドの正しい使い方【スキンケアへの取り入れ方】

ナイアシンアミド配合製品を効果的に使うには、毎日のスキンケアに継続して組み込むことがポイントです。

一般的には朝晩1日2回まで使用可能で、安定性が高いため朝のケアにも夜のケアにも適しています

使用手順としては、洗顔後に化粧水などで肌を整えた後、ナイアシンアミド配合の美容液やクリームを顔全体になじませます。

その後、普段お使いの保湿クリームで蓋をしたり、朝であれば必ず日焼け止め(SPF)を重ねるようにしましょう。

ナイアシンアミド自体にも抗酸化・抗炎症効果があり光老化(紫外線ダメージ)から肌を守る働きがありますが、

日焼け止めとの併用でより万全な紫外線対策となります。

実際、ナイアシンアミド配合製品とSPF30の日焼け止めを併用した群では、紫外線によるシワ・シミの進行が有意に抑えられたとの報告もあります。

他のスキンケア成分との相性も良いのがナイアシンアミドの利点です。

例えば保湿成分のヒアルロン酸とはお互いの作用を補完し合い、より高い保湿・バリア改善効果が期待できます。

またレチノイド(レチノールやトレチノイン)との併用では、ナイアシンアミドが炎症を抑えてくれるためレチノイドの刺激感(赤みや乾燥)を軽減できるとされています。

そのうえレチノールとナイアシンアミドはいずれもコラーゲン産生を促すためエイジングケア効果が相乗的に高まる組み合わせです。

実際、ナイアシンアミドをレチノールと併用することでレチノール単独より優れたシワ改善効果が得られたという研究結果もあります。

使う順番として明確なルールはありませんが、一般的には「軽い質感のものから先に、油分の多いものは後に」という原則に従うと良いでしょう。

ナイアシンアミド配合の美容液は水っぽく軽いものが多いため、レチノールクリーム(油性が高め)より先に塗布して肌になじませ、その後レチノールやクリームを塗ると効率的です。

朝のケアで高濃度ビタミンC美容液(水溶性・低pH)も併用する場合は、ビタミンC→ナイアシンアミドの順で塗るか、あるいは別のタイミング(例:ビタミンCは朝、ナイアシンアミドは夜)に分けても構いません。

基本的にはナイアシンアミドは他成分と同時に使っても、安定で作用が損なわれにくいです。

複数の有効成分を上手に組み合わせて、お互いのメリットを最大限に引き出しましょう。

ナイアシンアミドとビタミンCの併用は可能?【相乗効果と注意点】

ナイアシンアミド 他の成分との併用

「ナイアシンアミドとビタミンCは一緒に使わない方が良い」という噂を耳にしたことはないでしょうか?

海外のサイトでは、近年の研究では通常の使用条件下でナイアシンアミドとビタミンCが有害な相互作用を示すことはなく、安全に併用できるとの見解を示すものがあります。

実際、2022年の研究でナイアシンアミドとビタミンC誘導体(アスコルビルグルコシドなど)を配合した美容液が、シミ改善効果や抗酸化作用を持つ可能性を示唆しています。

また、2025年の肝斑治療の研究でも、ナイアシンアミド 5%、トラネキサム酸 1%、安定化ビタミンC 0.2%、およびさまざまなヒドロキシ酸を含む美容液とハイドロキノン4%の効果を比較し、同程度の効果があったと報告しています。

このように、ナイアシンアミドとビタミンCは作用メカニズムが異なるため併用することで相乗効果が期待できる関係です。

具体的には、ビタミンCが抗酸化&コラーゲン合成促進によるエイジングケアやチロシナーゼ阻害による美白を担い、

ナイアシンアミドがバリア強化やメラニン輸送阻害による美白・抗炎症を担うことで、多角的に肌悩みにアプローチできます。

結論として、ナイアシンアミドとビタミンCは併用可能であり、両者の力を合わせることでより優れた美容効果が得られるといえます。

まとめ:ナイアシンアミドを味方につけて効率的なスキンケアを

ナイアシンアミド(ビタミンB3)は、美白・毛穴・シワという主要な肌悩みにエビデンスに基づいた効果を発揮する万能成分です。

海外の論文や臨床試験を通じ、そのメカニズムから実際の使用結果まで信頼性の高いデータが蓄積されています。

メラニンの移送抑制によるシミ改善効果、皮脂抑制による毛穴縮小効果、コラーゲン増生によるシワ改善効果、など、科学的根拠に裏打ちされた作用のおかげで、ナイアシンアミドはプロの皮膚科医から一般のスキンケア愛好家まで広く支持されています。

安全性も高く、他の有効成分とも組み合わせやすいため、毎日のスキンケアに取り入れる価値は十分にあるでしょう。

使い方のポイントは、自分の肌に合った濃度から始めて継続利用すること、そして日焼け止めや他のエイジングケア成分とうまく併用することです。

ナイアシンアミドを賢くスキンケアに組み込み、シミの目立たない明るい肌、引き締まった毛穴、滑らかなハリ肌へ近づきましょう。

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この記事を書いた人

監修者:mio 〜美容のせんせい〜

美容皮膚科・美容外科を専門とする現役医師。4年以上にわたり、都内や地方都市の美容クリニックで美肌治療やリフトアップ施術を担当。論文ベースの確かな情報をもとに、読者が安心して美容医療を選べるよう発信しています。

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