貼るコスメとは?|注目される理由と仕組み
貼るコスメとは、肌に貼ることで美容成分を浸透させる製品です。
主な例を挙げると、マイクロニードルパッチ(細い針で角質層に微細な孔を開けて成分を届ける)、ハイドロゲルシート(高保水のゲル素材で美容成分を保持する)や、目元専用のアイパッチ(目元パッチ)があります。
マイクロニードルパッチは角質層を物理的に貫通し、高分子の美容成分も直接真皮まで届けられる仕組みです。
実際、マイクロニードルは皮膚バリアを回避して有効成分を100%皮膚内に放出することが報告されており、美容液では届きにくいコラーゲンやヒアルロン酸なども浸透させる効果が期待されます。
一方、ハイドロゲルシートはヒアルロン酸やグリセリンなどの保湿成分を含み、シートで肌に密着させることで肌をしっかり潤わせるタイプです
目元パッチも基本的にはハイドロゲルでできており、薄い目元の皮膚に貼って冷却効果や血行促進をもたらし、ヒアルロン酸やビタミンC、カフェインなどで目元の乾燥・クマ・小ジワ対策に用いられます。
いずれも美容液と違い、成分がゆっくり放出される点が特徴です。
美容液との比較:浸透率・効果持続性

貼るコスメは美容液以上の浸透効率を示します。
マイクロニードルパッチは文字通り皮膚の角質層に微細孔(マイクロチャネル)をつくるため、高分子の成分も真皮まで届けられます。
実際、ミクロンサイズの針で肌を刺激する技術は「最大で100%の成分を皮膚内に直接届ける」とされ、従来の塗布型とは比較にならない浸透性を実現します。
一方、ハイドロゲルパッチは保湿力が高いゲルが皮膚表面を覆うため、通常のクリームよりも成分の揮発を防ぎ持続的な保湿効果を発揮します。
例えば温感ハイドロゲルマスクの臨床試験では、30分の使用で皮膚の保湿量や肌色の均一性が有意に改善し、1週間・4週連続使用でさらに効果が持続することが報告されています。
さらに、ある研究では美容成分入りの美容液とマイクロニードルパッチを併用すると、成分がより深部まで届き、美容液だけの場合より色素沈着(メラニン量)を大きく減少させたと報告されています。
このように、貼るタイプは角質を物理的に開通して効果成分を届けるため、同じ成分でも浸透度と効果の持続性が高まると考えられます。
臨床・研究データで見る効果

シワ・アンチエイジング効果
マイクロニードルパッチの抗シワ効果は臨床試験でも確認されています。
韓国の研究では、ヒアルロン酸とペプチド配合のダブル抗シワマイクロニードルパッチを片目に28日間使用し、反対の目にはプラセボを使う比較試験を行いました。
結果、使用部位では目尻の深いシワ(Ry値)が有意に減少し、皮膚の弾力性やリフティング効果も向上、また皮膚からの水分蒸散(TEWL)が減少するなど、プラセボ側と比べて総合的な改善が見られました。
同様に、タイの36名による比較試験では、2種類の針長・密度の異なるマイクロニードルパッチを両目に12週間使用したところ、両者ともに目元の皮膚の粗さが顕著に改善し、深いシワが減少しました。(図1)
針の長さを350μmにすると若干シワ改善効果が高まったものの(痛みもわずかに増加)、いずれも安全に使用でき、副作用は認められませんでした。

引用:The Comparative Efficacy and Safety of 250 μm versus 350 μm Long Microneedle Patch on Under-Eye Skin, Cosmetics 2024
また、1回使うだけで短期的にシワが目立ちにくくなり、7~14日で肌表面の凹凸指標(Rz, Ra値)が改善、28日間でシワと弾力が大幅に向上したという報告もあります
一方、ハイドロゲルシートやアイパッチでも保湿によるプルプル感で小ジワが目立ちにくくなる傾向があります。
実際、あるハイドロゲルマスクの試験では1回の使用で肌の保湿量とトーンが改善し、4週間継続使用で肌の若々しさが大きく向上しました。(図2)
これらの結果から、貼るタイプのコスメはシワ対策に一定の効果があり、特にマイクロニードルパッチは皮膚深部でのコラーゲン産生を促して根本的な改善を狙える点が注目されています。

未貼付側(白)と貼付側(黒)
引用:Thermosensitive Hydrogel Mask Significantly Improves Skin Moisture and Skin Tone; Bilateral Clinical Trial, Cosmetics 2017
色素沈着・美白効果
貼るコスメはメラニン色素にもアプローチできます。
実際、ビタミンC誘導体やナイアシンアミド入りのパッチで目元のくすみや肝斑(メラニン沈着)を改善する試みがあり、マイクロニードルを併用したところ肌への浸透が向上するようです。
2017年の研究では、肌に塗布した後マイクロニードルパッチを貼付すると、美容液のみの場合よりも4-ニブチルレゾルシノール(美白成分)の皮膚内沈着量が増加し、メラニン指数や色素沈着面積の低下が有意に大きくなりました。
このように、貼るタイプで有効成分を肌深部に届けることで、従来の美白クリームでは得られにくかった効果が得られる可能性があります。
肌のハリ・保湿効果
ヒアルロン酸やコラーゲンなど保湿成分を含むパッチは、肌のハリや潤い改善にも役立ちます。
海外の報告では、目元用ハイドロゲルパッチの使用で「肌の水分量と弾力が有意に改善した」との結果が出ています。
同様に前述の全顔用のハイドロゲルマスクを毎週1回4週間使った試験では、短時間の使用でも肌の保湿・明度が改善し、被験者の96%以上が「肌が潤った」と実感しました。
マイクロニードルパッチでも、肌の成分を直接補給するため保湿効果が長持ちしやすいと考えられます。
研究でも、目尻のシワ改善とともに皮膚の保水力が維持され、パッチ使用後も肌のうるおい低下がなかったと報告されています
総じて、貼るタイプのコスメは高いヒアルロン酸配合量や角質層への浸透で肌にしっかりとした潤いを与え、ハリ感を高める点が特徴です
ニキビ・ニキビ跡への効果
貼るコスメはニキビやニキビ跡への効果も検討されています。
例えば、韓国のパイロット研究では、 マグネシウム製の溶解型マイクロニードルパッチを炎症性のニキビに使用しました。
19人の軽中度ニキビ患者に0.25mm針のパッチを患部に適用したところ、7日以内にニキビの数とスコアが有意に減少し、重度の炎症も収まったと報告されています。
副作用は認められず安全に使用できることから、局所的なニキビ治療にも有用と期待されます
マイクロニードルの刺激でコラーゲン誘導が起こり肌再生が促されるため、ニキビ跡の凹凸改善への応用が期待されていますが、現時点では臨床データはまだ少なく、今後の研究が待たれます。
使用方法・注意点・安全性
貼るコスメは使い方も簡単です。一般的な使用手順は以下の通りです:
- 洗顔・拭き取り:使用前に肌表面の汚れや余分な皮脂を落とし、乾いた清潔な肌にします。
- 貼付:パッチをフィルムから取り出し、気になる部位に密着させます。目元パッチなら目尻や目の下、マイクロニードルパッチならシワやくすみが気になる部分に貼ります。
- 放置時間:製品ごとの指示時間(一般的に15~30分や就寝中など)そのまま放置します。マイクロニードルパッチは針が溶けて皮膚に成分を残すタイプが多く、数時間の装着が必要です。
- 取り外し・仕上げ:時間経過後に剥がし、残った美容液は軽く肌になじませます。必要に応じて乳液やクリームで仕上げて保湿を高めます。
使用上の注意点としては、敏感肌やアレルギー体質の方は事前にパッチテストを行いましょう。
傷や炎症のある箇所には貼らず、使用中に赤み・かゆみ・痛みを感じたらすぐに中止します。
マイクロニードルパッチは医療機器ほど針が深くないとはいえ、一時的に微小な孔を開けるため、過度の頻度で使用すると肌バリアが乱れることがあります。
安全性試験では、貼るコスメ使用部位での発赤・腫れ・かゆみなどの副作用はほとんど報告されていません。
マイクロニードルパッチでは透過チャンネルは通常数時間で塞がり、感染リスクは極めて低いとされています。
ただし、妊娠中・授乳中の方や、皮膚科治療中の方は、成分に注意して医師に相談の上で使用してください。
まとめ|貼るコスメはこんな人におすすめ!

貼るコスメは、マイクロニードルやハイドロゲルによって美容成分を効率よく深く届けるため、シワや乾燥に対して従来品より速効性・持続性の高いアプローチを実現できます。
貼るコスメは以下のような方におすすめです:
- 集中的にケアしたい部分がある(目元・ほうれい線など)
- 美容液だけでは効果を実感しにくい
- 肌が敏感で刺激を避けたい
- シワ・色素沈着・ニキビ跡など、複合的な悩みがある
今後、パッチ技術はますます進化していく分野です。
最新の成分とデリバリー技術を組み合わせた「貼るスキンケア」は、美容医療と化粧品の橋渡しとして注目されています。
ただし、自分の肌質や製品の成分をよく確認し、正しい使い方を守ることが重要です。
また、貼るコスメだけに頼りすぎず、日常の保湿やUVケアも併せて行うことで、より効果的に美肌を目指せるでしょう。
正しい知識と適切な製品選びで、貼るコスメのメリットを安全に享受してください。