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【ヒアルロン酸の論文】注入ヒアルロン酸は15年以上も持続する??MRIでの研究レビュー

ヒアルロン酸注入の持続期間は1年程と考えられていたが、最長15年も持続することが確認された。”

*タイトル

Hyaluronic Acid Filler Longevity in the Mid-face: A Review of 33 Magnetic Resonance Imaging Studies

*著者、雑誌名、公開年

Mobin Master, Arshia Azizeddin, Vahid Master

Plastic and Reconstructive Surgery Global Open, 2024年

この記事のポイント
  • 研究背景と目的
    従来、注入されたヒアルロン酸(HA)は3~12ヶ月の短期間で吸収されるとされてきたが、近年の研究ではその持続期間が数年に及ぶ可能性が示唆されている。


    本研究は、HAフィラーの持続性を磁気共鳴画像(MRI)を用いて評価し、治療計画の見直しに貢献することを目的とした。
  • 方法と結果
    33人の被験者(女性32人、男性1人)を対象に、HAフィラー注入後2年以上経過した中顔面をMRIで検査。


    結果、全員の中顔面にHAの残存が確認され、一部の患者では注入から15年経過後も残っていたことが確認された。
  • 考察と結論
    本研究は、HAフィラーが長期間持続することを示唆し、従来の「一時的なフィラー」という認識を覆すものである。


    注入されたヒアルロン酸が長く残ることを考慮し、適切な再注入のタイミングや治療計画を見直す必要がある。

こんにちは!皆さんは、ヒアルロン酸注入をしたことはありますか?

ヒアルロン酸は人体の内にも存在する成分ですが、注入することでボリュームを加えて輪郭を整えたり肌質を改善することができます。

美容の目的でよく使われ、ボトックスに次いで世界で2番目に行われている美容施術です。

注入されたヒアルロン酸は、体の中に存在する分解酵素によって少しずつ減っていき、大体1年ほどで吸収されると考えられていました。

しかし、今回の2024年オーストラリアの研究では、ヒアルロン酸注入後2年以上経ってヒアルロン酸がどれくらい生体内に残っているかをMRIを用いて調べました。

最長15年もヒアルロン酸が残っているという興味深い結果もあるので、ぜひ見てみてください。

目次

研究背景 〜ヒアルロン酸の持続期間は??〜

これまでヒアルロン酸(HA)フィラーは「3〜12ヶ月で吸収される」とされてきました。

しかし、最近の報告では「数年にわたって持続する可能性がある」と指摘され始めています。

フィラーは、シワやボリュームの補填など美容医療の分野で広く使われていますが、正確な持続期間についてはあまり研究が進んでいませんでした。

本研究は、磁気共鳴画像(MRI)を用いて、HAフィラーの中顔面での持続期間を科学的に評価することを目的としています。

研究方法 〜33名をMRIで測定〜

15年以上前にRestylane(Galoderma, スイス)およびRevolax(Fox pharma, 英国)を投与されたことがある15年以上前にRestylane(Galoderma, スイス)およびRevolax(Fox pharma, 英国)を投与されたことがある53歳女性のMRI T2画像。
頬骨に残留ヒアルロン酸を示す明るいT2(白)信号が散在していることが示されている。

本研究は、ヒアルロン酸(HA)フィラーの持続性を評価するために、磁気共鳴画像(MRI)を用いた観察研究です。

研究には33名の被験者(女性32名、男性1名)が参加し、以下の条件で行いました。

• 被験者はHAフィラーの注入後2年以上が経過していること

• 永久フィラーの注入歴がないこと

MRIを使用してフィラーが顔のどの位置に残っているのか、量や深さを確認しました。

調査期間は2020年2月から2022年9月までの2年半で、MRI撮影は高性能な「3T Pioneerスキャナー」を使用しました。

具体的な手順や条件は以下の通りです:

1. 対象者の選定

• 合計 33人(女性32人、男性1人)が対象。

• 除外基準:顔の手術歴、フィラーの分解酵素(ヒアルロニダーゼ)使用歴、皮膚感染や炎症がある場合。

2. MRIの実施

3T Pioneer MRIスキャナー(GE Healthcare製)を使用。

• 撮影方法:顔面のT2脂肪抑制(T2 fat saturation)画像を複数の断面(軸位・冠状断面)で撮影し、フィラーの分布と厚みを測定。

• 撮影期間:2020年2月〜2022年9月 の約2年半。

3. 評価基準

残っているヒアルロン酸フィラーの量(厚み)を「軽度」「中程度」「高度」の3段階に分類:

 軽度:1〜5mm

 中程度:5〜10mm

 高度:10mm以上

MRI画像は、2人の放射線科医がブラインド(二重盲検)で評価し、結果の精度を測定

2012年から2017年の間に、顔面中央部に合計6mLのJuvederm VoliftとVolux(Allergan、カリフォルニア州アーバイン)の組み合わせを注入した64歳女性のMRIスキャン。MRIは2020年1月に実施。眼窩下脂肪区画(短い矢印)と隔壁後部(長い矢印)に広範囲のフィラー信号が見られる。顔面に残っているフィラーは明るい信号(白)として見える。

研究結果 〜2年以上経っても全員にHA残存〜

研究の結果、全員の顔からHAフィラーが確認され、完全に消失したケースはゼロでした。

注入から「2〜5年後」の被験者が21名、「5年以上経過」の被験者が12名含まれ、最も長いケースでは15年間フィラーが持続していました。

フィラーの残存量については「軽度(1〜5mm)」が9名、「中程度(5〜10mm)」が13名、「高度(10mm以上)」が11名でした。

MRI画像の読み取り精度は95%信頼区間で「84.47% ± 4.43%」と高い精度を示しました。

結果を簡単にまとめると以下の通りです:

1. 全対象者のフィラー残存

• 33人全員において、HAフィラーが 完全には消失せず 残存していることが確認されました。

2. 持続期間

2〜5年後 の被験者が 21人(63%)

5年以上経過 した被験者が 12人(37%)

• 最長では、ある被験者において 15年間 フィラーが持続していることがMRIで確認されました。

3. フィラーの深さと量

• 軽度(1〜5mm):9人(27%)

• 中程度(5〜10mm):13人(39%)

• 高度(10mm以上):11人(33%)

4. 信頼性と精度

• MRI画像の評価の信頼性は、95%信頼区間で84.47% ± 4.43% と高い精度を示しました。

5. 製品の種類

• フィラー製品には、Juvederm UltraRestylaneVolumaVolbella など複数のブランドが含まれていました。

・中顔面におけるヒアルロン酸注入量は1mL〜8mLの範囲ですが、注入量が不明の方も複数名いました。

• 特定の製品が他の製品より長く持続する傾向は見られませんでした。

結論と考察 〜ヒアルロン酸注入は長期的視点で〜

本研究では、注入から2年以上経過したHAフィラーが中顔面に残存していることが全対象者で確認され、最長で15年もの持続性が示されました。

この結果は、美容医療分野において、これまでの「短期間で吸収される」という認識を大きく覆す重要な発見となりました。

これは、フィラー管理の方法に大きな影響を与える結果です。

再注入やメンテナンスのタイミングを再検討し、治療計画をより長期的視点で考える必要があります。

研究の限界としては、被験者数が33名と比較的少なく、またすべての被験者でフィラーの種類や注入量が正確に記録されているわけではなく、データのばらつきがあることが考えられます。

フィラーが完全に消失するまでにかかる期間下顔面・上顔面のヒアルロン酸吸収スピードについては、さらなる研究が必要でしょう。

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