“ヒアルロン酸の経口摂取は、年齢や肌質に関わらず、肌の保湿や肌色改善の効果をもたらす”
*タイトル
Oral administration of hyaluronic acid to improve skin conditions via a randomized double-blind clinical test
*著者、雑誌名、公開年
Yan-Rui Gao, Rui-Ping Wang, 他.Skin Research and Technology, 2023
- 研究背景と目的
ヒアルロン酸(HA)の経口摂取が肌の保湿や健康に与える影響を調査するため、年齢層や肌質の違いに着目した臨床試験を実施しました。
- 方法と結果
二重盲検法で18~65歳の女性129人を対象にHAの摂取効果を測定し、肌の水分量改善が確認された。肌色、表皮の厚さについても有望な結果がみられた。
- 考察と結論
ヒアルロン酸の経口摂取は年齢や肌質を問わず有効であり、肌の保湿、トーン改善、バリア機能向上が期待できることが示唆されました。
こんにちは!今回は、ヒアルロン酸の経口摂取が肌の健康にどのように影響するかを調査した2023年の最新の研究についてお話しします。
皆さんもご存知の通り、ヒアルロン酸は肌の潤いを保つ大切な成分です。
今回紹介する研究では、実際にヒアルロン酸を飲んでどのように肌に効果があるかを調べています。気になる方は、ぜひ最後までご覧ください!
研究背景 〜ヒアルロン酸内服の効果〜
ヒアルロン酸(HA)は皮膚や関節に多く含まれる体内成分で、加齢とともにその量が減少し、乾燥やシワが現れやすくなります。
HAの経口摂取が肌の健康をサポートするとされていますが、年齢や肌質による効果の違いは明らかにされていませんでした。
HA サプリメントの登場により、一部の研究者は経口摂取したHAの吸収と代謝のメカニズムを調査しました。
研究によると、経口摂取した高分子量 HA (HMM-HA、MW≥100 kDa) は胃液中で有意に分解されませんが、腸管上皮細胞・M 細胞、樹状細胞、マクロファージに取り込まれることがわかっています。
HMW-HA は主に腸管関連リンパ組織に運ばれ、その後血流を介して全身に運ばれます。
一方、経口摂取した低分子量 HA (LMW-HA、MW < 100 kDa) は主に盲腸で吸収され、血流を介して全身に運ばれます。
ラット及び犬における2008年の研究で、シンチグラフィー画像では、腸管関連リンパ組織がHMM-HA分子をそのまま取り込み、4時間後に結合組織に分布し、経口摂取されたHAが関節、椎骨、唾液腺に現れたことが示されました。
近年、臨床試験が行われ、HA の経口投与が皮膚の状態を効果的に改善できることが明らかにされました。
Kawadaら日本人による2014年の研究によると、乾燥肌の患者を対象にヒアルロン酸を経口摂取したところ、皮膚の水分量が有意に増加し、皮膚の乾燥が改善することが示されました。
しかし、これまでの研究では、経口ヒアルロン酸がさまざまな年齢層や肌タイプに与える影響については調査されていませんでした。
たとえば、若い肌には比較的十分なヒアルロン酸含有量があり、脂性肌は乾燥肌よりも保湿能力に優れています。
ヒアルロン酸の経口投与がこれらのタイプの肌に同様のプラスの効果があるかどうかを調査する価値があります。
そこで、上海の健康な女性パネリスト129人を対象にランダム化二重盲検試験を実施し、ヒアルロン酸の経口投与の臨床的利点を調査しました。
この研究は、ヒアルロン酸の経口摂取が異なる年齢層と肌質にどのように影響するかを検証することを目的としています。
研究方法 〜上海の女性129人を対象〜
上海において、18歳から65歳までの129人の女性を対象に、二重盲検法による臨床試験が実施されました。
参加者は0mg(プラセボ)、100mg、200mgのHAを摂取し、皮膚の水分量、肌のトーン、表皮・真皮の厚さを測定しました。
試験期間: 2022年9月27日から2023年1月16日までの約4ヶ月間。
対象者: 上海在住の18歳から65歳までの健康な女性129人が参加。年齢層は18–35歳の「若年層」(61人)と45–65歳の「高齢層」(67人)に分けられ、それぞれ乾燥肌、普通肌、脂性肌に分類されました。
グループ分け: 0mg/日(プラセボ)、100mg/日(低用量)、200mg/日(高用量)の3つのHA摂取量グループに分かれ、毎日1回摂取しました。
摂取方法: 試験では、発酵で得られた食品グレードのHAを提供し、200mLの水に溶かして飲むよう指導されました。また、1.2〜1.4Lの水を日常的に摂取するよう求められました。
測定方法:
肌の水分量はコルネオメーター(Corneometer CM825)で測定。
表皮と真皮の厚さは超音波診断装置(UC22)で測定。
肌のトーンはクロマメーター(CM2600D)を使用し、肌の色L*、a*、b*の値からITAo値を算出。
試験環境は温度22±1℃、湿度50±10%に保たれ、計測前に30分間静かに座るよう指示しました。
研究結果 〜若年でも高齢でも肌の水分量改善〜
1. 肌の水分量
若年層:
2週間後: 100mg摂取群の乾燥肌のグループで有意な水分量の増加が観察されました(p<0.05)。
4週間後: 100mg, 200mg摂取群のどんな肌質でも有意な増加が見られました。
8週間後: 200mg摂取群の乾燥肌、脂性肌のグループでさらに顕著な水分増加が見られました。
高齢層:
4週間後: 200mg摂取群の乾燥肌、脂性肌、正常肌及び100mg摂取群の乾燥肌で肌の水分量増加。
8週間後: 100mg摂取群の脂性肌で肌の水分量増加。
2. 肌のトーン(ITAo値)
4週間後: ITAo値が上昇し、100mg摂取群で肌の明るさが改善しました。具体的には、100mgグループでITAo値平均36.7から38.0に。
8週間後: 200mg摂取群で、肌のトーン改善が有意に見られた。
3. 表皮と真皮の厚さ
12週間後: 表皮の厚さが100mgの摂取グループで有意に増加(平均80.9 μmから85.4 μm)。200mg摂取グループでは表皮の厚さは増加しませんでした。
真皮の厚さは、いずれの群でも顕著な変化が見られませんでしたが、被験者の小じわ改善が肉眼的に確認されました。
4. 真皮密度
12週間後: プラセボ群では真皮密度が減少(8.4から7.6%)。一方、HA摂取群では密度が安定しており、皮膚の状態維持に寄与していると考えられます。
[結果]
• 水分量: 若年層と高齢層の両方で、2~8週間の摂取後に肌の水分量が増加しました。
• 肌のトーン: 4~8週間後には肌の色合いが改善しました。
• 表皮の厚さ: 12週間の摂取で表皮の厚さが増し、肌のバリア機能が向上する可能性がある。
HAの経口摂取は、若年層および高齢層の双方において肌の水分量を増加させました。さらに、トーンの改善や表皮の厚み向上など肌の健康維持に寄与することが示されました。
結論と考察 〜アンチエイジングに役立つかも〜
この研究は、経口摂取によるヒアルロン酸の臨床効果を示し、特に100mgおよび200mgの摂取が肌の水分量を効果的に改善することが明らかになりました。
また、肌のトーンや表皮の厚さを改善する可能性が示されました。
この研究は、経口HA摂取が肌のエイジングケアに役立つ可能性を示し、特にスキンケアの一環としてのHAサプリメントの意義を強調しています。
研究の限界としては、サンプルサイズが小規模であること、また試験期間中にCOVID-19の影響を受けた可能性がある点が限界です。
テストの約10週目に上海でCOVID-19の大規模な発生が発生し、パネリストの63.1%以上が感染し、皮膚の状態に悪影響を与えたかもしれません。
COVID-19の悪影響は真皮密度にも見られます。プラセボ群は、12週目に初期と比較して有意に低い値を示しました。
しかし、経口HAを摂取した試験群は安定した真皮密度を維持しており、経口摂取したHAが皮膚の状態を保護できることを示唆しています。
過去の研究でもHAの保湿効果が確認されていましたが、年齢や肌質に焦点を当てた試験は少なく、この研究はその点で新しい発見を提供しました。