“高密度焦点式超音波(HIFU)1回で、眉のリフト最大1.7mm、アゴ下平均26mm²の縮小、マリオネットライン約3%のリフトアップ”*タイトル
“A Systematic Review of the Efficacy of Microfocused Ultrasound for Facial Skin Tightening”
*著者、雑誌名、公開年
Mark Contini et al., International Journal of Environmental Research and Public Health, 2023
- 研究背景と目的
マイクロフォーカス超音波(MFU)は、超音波を使用した非侵襲的な治療法で、皮膚の引き締めやシワの軽減を目的としています。本研究では、その有効性と安全性を系統的にレビューすることを目標としています。
- 方法と結果
合計16件の研究を対象に解析した結果、90日後に92%の患者が皮膚の引き締めとシワの改善を報告しました。軽度から中等度のたるみ治療では効果ありましたが、高BMIやたるみの強い人では効果の低い傾向が見られました。
- 考察と結論
MFUは軽度から中等度の皮膚弛緩に対して効果的です。今回の研究はHIFU1回施術後の効果を調べましたが、複数回施術時の効果も今後のテーマとして興味深いです。
こんにちは!皆さん、HIFUという美容施術を聞いたことありますか?
HIFUはダウンタイム少なく手軽にたるみを引き締めることができ、どの年齢層からも人気ですよね!
ただ、施術を1,2回うけても目にみえる効果を感じた人は少ないのではないでしょうか?
今回紹介する2023年に公表されたオランダのレビュー論文では、HIFU1回の施術で顔のたるみに対する引き締め効果がどれくらいあるかを詳しく調査しています。
Systematic Reviewというエビデンスの高い研究報告をまとめているので、気になる方はぜひご覧ください!
研究背景 〜HIFUのたるみ改善効果どの程度?〜
マイクロフォーカス超音波(MFU)は、非侵襲的な美容治療法として注目されています。
この技術は、超音波エネルギーを使って皮膚の深い層に熱を加え、コラーゲンの生成を促すことで皮膚を引き締めます。
本研究では、MFUが顔の皮膚弛緩(たるみ)やシワ改善にどの程度効果があるのか、過去の研究を系統的にレビューすることを目的としています。
MFUとHIFUの違い(個人的見解)
MFUとHIFUはどちらも超音波を利用した美容医療技術で、主に皮膚のリフトアップや引き締めに使用されますが、細かな点で違いがあります。
日本のクリニックでは、MFUもHIFUも同じ意味で使用されていることが多く、広い意味でのHIFUの中にエネルギー焦点化を細かくしたMFUが含まれる、と考えて良いかと思います。
簡単にそれぞれの特徴を以下にまとめます。
1. エネルギー焦点化の程度
- MFU(Microfocused Ultrasound)
- 「マイクロフォーカス」と名前が示す通り、超音波エネルギーを**小さな点(1mm³程度)**に非常に高精度に集中させます。
- 皮膚の浅い層から深い層まで特定の深さ(1.5mm、3mm、4.5mmなど)にピンポイントで照射できるのが特徴です。
- ターゲットは主に皮下組織やSMAS(表在性筋膜系)です。
- エネルギーが細かく焦点化されているため、施術中の痛みが軽減されやすい。
- HIFU(High-Intensity Focused Ultrasound)
- 「高密度焦点式超音波」という和訳が示すように、超音波エネルギーを集中させる施術です。どの範囲に集中させるかは厳密には決まっておらず、MFUより広い範囲に集中させることもあります。
- 腫瘍治療(例:子宮筋腫や前立腺がん)などの医療分野で使用される技術から派生しており、美容目的でも広く利用されています。
- ターゲットはMFUと同様にSMASや皮下組織です。
- 広いエリアにエネルギーを集中するため、施術時の痛みがやや強い場合があります。
2. 使用目的
- MFU
- 顔のリフトアップや皮膚の引き締めに特化しており、主に美容医療で利用されます。
- 皮膚の浅い層を狙えるため、目元や額などの繊細な部位にも適しています。
- コラーゲンやエラスチンの生成を促進し、自然な肌の再生をサポートします。
- HIFU
- MFUと同様に美容目的でも使用されますが、体の脂肪溶解(痩身)にも利用されます。
- より深く広く効果を与えることから、顎下や首、体の脂肪の分解・引き締めに効果的です。
研究方法 〜16件の論文を解析〜
本研究は、2019年から2021年の間に公開された関連研究を対象に、PubMedとEmbaseを用いて系統的にレビューされました。以下の基準を満たす研究が選定されました:
- 被験者数が10人以上であること
- 顔の皮膚弛緩(たるみ)やシワの改善を対象としたもの
- 最低3か月以上の追跡データがあること
合計で693件の研究がスクリーニングされ、重複や基準外のものを除外した後、最終的に16件が解析対象となりました。これらの研究には、無作為化比較試験(RCT)やコホート研究が含まれており、評価方法は以下のように設定されました:
- 写真による客観的評価: 眉の高さや皮膚弛緩の改善を数値で測定(例: mm単位のリフト効果、面積縮小)
- 研究者による評価(IGAIS): 治療後の皮膚の改善を4段階または5段階でスコアリング
- 患者による評価(SGAIS): 患者が自己評価する皮膚の改善スコア
使用した治療機器とプロトコル
- 治療機器
- 主にUlthera(ウルセラ)やUltraformer(ウルトラフォーマー)を使用
- 治療深度
- 超音波エネルギーは1.5mm、3mm、4.5mmの深度に照射
- 治療回数
- 各研究は1回の治療を基準としており、その後の継続治療の効果は未評価
研究結果 〜客観的にも主観的にも効果あり〜
研究の結果、MFU施術の臨床効果は、客観的にも主観的にも認められることがわかりました。
特に、90日から180日後に効果がピークを迎え、多くの患者が長期間にわたって改善を実感しました。
機械による測定では、眉上領域のMFU施術で眉が最大1.7mmリフトすることがわかり、あご下の引き締め効果や、マリオネットライン改善効果も認められました。
研究者と患者自身による90日後の評価では、それぞれ92%と75%の患者で改善を報告しました。
MFU治療は、軽度から中等度の顔の皮膚弛緩に対して高い有効性を示し、一方で、BMIが30を超える人や皮膚のたるみが強い人では効果が低い傾向が確認されています。
また、副作用として軽度の腫れや赤みが多くみられ、2%の患者では一時的な感覚異常や白色線状変化や隆起が報告されました。
研究の詳細は以下に記述します。
1. 効果の客観的測定
- 眉のリフト効果
- 眉のリフト効果(高さの変化)は、以下のように観測されました:
- 90日後の平均リフト効果:0.47mm(最小値)~1.7mm(最大値)
- 180日後には、効果が若干低下(平均1.22mm)
- 施術を眉の上外側方向にする方が、水平方向にするよりリフト効果が高い
- 眉が0.5mm以上リフトした患者の割合は、3ヶ月後に35%、6ヶ月後に45%と増加したが、1年後に39%へ若干減少
- 眉のリフト効果(高さの変化)は、以下のように観測されました:
- あご下のたるみ引き締め効果
- マリオネットラインのリフト効果
- 米国の研究でHIFU前後の耳下とマリオネットラインの中点を結んだラインを測定:
- 90日後:2.4〜3.8%の範囲で変動(改善)ありと報告
- 米国の研究でHIFU前後の耳下とマリオネットラインの中点を結んだラインを測定:
2. 研究者による評価(IGAIS)
MFU施術後の顔の変化を、研究者の立場から観察してどれくらい変わったか評価しました。
- 各研究の評価を統合した結果
- 90日後の調査では、全体の92%の患者が皮膚の引き締めやシワの改善を報告した。
- 90日後と比べ、180日後で中程度改善したという報告が増えた。
- それぞれの効果を報告した患者の割合は以下の通り:
- 変化なし:7%(90日後)、5%(180日後)
- 軽度の改善:47%(90日後)、34%(180日後)
- 中等度の改善:36%(90日後)、52%(180日後)
- 大幅な改善:8%(90日後、180日後ともに)
3. 患者の主観的評価(SGAIS)
MFU施術後の顔の変化を、患者自身から見てどれくらい変わったか評価しました。
- 各研究の評価を統合した結果
- 90日後の調査では、全体の75%の患者が皮膚の引き締めやシワの改善を報告した。
- 90日後と比べ、360日後に軽度および中等度改善したという報告が増えた。
- それぞれの効果を報告した患者の割合は以下の通り:
- 変化なし:25%(90日後)、5%(360日後)
- 軽度の改善:42%(90日後)、53%(360日後)
- 中等度の改善:25%(90日後)、32%(360日後)
- 大幅な改善:9%(90日後)、11%(360日後)
- BMIの影響
ある研究では、低BMI(25以下)の患者ではSGAISスコアが有意に高かったとの報告あり、別の研究では高BMI(30以上)の患者では改善率が低かったとの報告があった。
4. 副作用
- 一般的な副作用
- 多くの患者で治療直後に軽い赤みや腫れが見られたが、数日以内に解消。
- 多くの患者で治療直後に軽い赤みや腫れが見られたが、数日以内に解消。
- 稀な副作用
- 一部患者(2%未満)で以下の副作用が報告
- 一時的な感覚異常(しびれや過敏症状):4例
- 皮膚の線状変化や火傷:2例
- その他:あざや白色の皮膚膨らみが数例。
- 一部患者(2%未満)で以下の副作用が報告
結論と考察 〜1回のMFU施術でもやる価値あり〜
本研究では、臨床的に1回のMFU施術でも、長期的な皮膚の改善効果をもたらすことが確認できました。
IGAIS/SGAIS スコアに基づく全体的な結果では、対象患者のほとんど (>90%) で HIFU により皮膚の引き締めがさまざまな程度に改善されたことが示されています。
MFU治療の効果が長く続くのは、28日目に始まるリモデリング過程によるものかもしれません。
STAT3シグナル伝達経路阻害による線維芽細胞の増殖とコラーゲン産生による創傷治癒に関与するヒートショックプロテイン(HSP47)の発現は、組織を加熱して3か月で増加します。
このHSP47の発現は新しいコラーゲン生成を意味し、治療後少なくとも3か月間持続する引きしめ効果の理由を映している可能性があります。
このレビューでは1回のMFU治療の結果のみを評価したため、異なる時間間隔で複数回の MFU 治療を行うと、皮膚の引き締めに追加の効果があるかどうかを知ることは興味深いです。
MFUは皮膚の引き締めに非常に効果があるように思われますが、その結果にはもちろん限界があります。
まず、過度の皮膚のたるみは明示的に除外基準として挙げられていました。
今までの研究で、皮膚のたるみが重度になるほど、HIFUの効果が落ちることが報告されています。
MFUは、軽度から中等度の皮膚弛緩を抱える患者に対して、非侵襲的で安全かつ効果的な治療法ですが、治療効果を最大化するためにはBMIや皮膚の状態を考慮する必要があります。
研究の限界としては、本論文の被験者はほとんどが女性であり、男性の皮膚に対する効果が不明です。
また、長期的なデータや異なる治療設定の比較研究が不足しており、今後も研究は続けられるでしょう。