“高密度焦点式超音波(HIFU)と施術時のグルタチオンおよびヒアルロン酸を含む薬剤塗布で、肌質と色みを有意に改善し、安全かつ効果的な治療法であることが示された”
*タイトル
“Noninvasive High-Intensity Focused Ultrasound for Skin Brightening Efficacy Using a Topical Agent Containing Glutathione and Hyaluronic Acid”
*著者、雑誌名、公開年
Kyu-Ho Yiら, Journal of Dermatological Treatment, 2024
- 研究背景と目的
HIFUの美容効果は広く認知されていますが、薬剤塗布との相乗効果は未だ示されていませんでした。本研究は、HIFUとグルタチオン・ヒアルロン酸配合製剤の併用効果を検証しました。
- 方法と結果
20人の女性を対象にHIFU+薬剤併用群と薬剤塗布単独群で比較。HIFU+薬剤併用群では、シワ・しみ・肌水分量が有意に改善しました(p < 0.05)
- 考察と結論
HIFUと塗布薬剤の併用は、肌の質と明るさを改善し安全性も確認されました。さらなる研究で最適な治療法の確立が期待されます。
こんにちは!皆さん、HIFUの施術をするときは何か薬剤を塗ったりしますか?
美容施術をするときには、効果を高めるための薬剤を併用することがありますが、HIFUの場合は単独で施術することが多いですよね。
HIFUは特にたるみの改善に効果があることがわかっていますが、さらに効果を高めるためにHIFU施術の時に薬剤を塗ってみたらどうか?というのがこちらの研究の発想です。
今回紹介する2024年9月に公表された韓国の最新研究では、美白目的によく使われるグルタチオンと保湿成分ヒアルロン酸を配合した薬剤を肌に塗布して、HIFUの効果がどう高まるかを検証しています。
被験者が20人という小規模研究であることや、研究方法で薬剤塗布タイミングや薬剤の詳細な成分の記載がないなど、エビデンスとしては低めではありますが、面白い発想なので気になる方はぜひご覧ください!
研究背景 〜HIFUに薬剤塗布して効果ある?〜
高密度焦点式超音波(HIFU)は、肌のリフトアップや引き締め効果が広く認められている、非侵襲的な美容技術です。
本研究では、HIFUによる振動と熱が、グルタチオン(美白成分)とヒアルロン酸(保湿成分)を含む塗布薬剤の吸収をどの程度促進するかを調査しました。
目標は、HIFU を局所薬剤と併用すると、肌の明るさと全体的な肌質の改善が高まるかどうかを判断することで、
このテーマは今まで十分に研究されておらず、新たな知見を見出すことを目的としています。
研究方法 〜アジア人女性20名を対象〜
この研究では、30歳から55歳のアジア人女性20名を対象としました。
参加者は以下の条件を満たすよう選ばれました:
- 肌タイプ:Fitzpatrickスキンタイプ II~III
- 除外基準:妊娠中、授乳中、電気機器の埋め込み、肌トラブルや自己免疫疾患を持つ人
参加者は以下の2つのグループにランダムに割り振られました:
- グループA(HIFU+薬剤塗布併用)
- HIFU治療は2週間間隔で2回実施。
- 使用機器:ULTRAFORMER MPT(CLASSYS Inc., 韓国製)。
- HIFUのパラメータ:1.5mmのカートリッジを使用し、500ショット(0.2~0.3ジュール)を顔全体に照射。
1回のセッションは約7分。 - 塗布薬剤(グルタチオン+ヒアルロン酸配合)の塗布タイミングは記載なし。
(恐らく塗布した状態でのHIFU施術と思われる。施術直後に塗布パックした可能性も否定はできない)。 - 塗布薬剤に含まれるグルタチオンやヒアルロン酸の濃度、配合割合についても記載なし。
- グループB(トピカル剤のみ)
- 同じ塗布薬剤を同じ頻度(2週間ごと)で計2回塗布。
- 前後の処置や塗布時間などは記載なし。
評価方法:
- デジタル分析:専用機器(A-One Smart™)でシワの深さ、色素沈着、肌水分量を測定。
- 肉眼評価:Global Esthetic Improvement Scale(GAIS)で3名の専門家がスコアリング(改善度を「非常に改善」から「悪化」まで5段階で評価)。
- 自己評価:患者自身がアンケート形式で治療結果を評価。
研究結果 〜しわ・しみ・肌水分量すべて改善〜
研究の結果、HIFU+薬剤併用群(グループA)では、小じわ・しみ・肌水分量・自己評価及び専門家による評価のすべての項目で改善を示しました。
一方、薬剤塗布単独群(グループB)では、小じわ・しみ・肌水分量のスコアで統計的に有意な改善はなく、自己評価及び専門家による評価でもグループAより劣る結果となりました。
この結果から、HIFUの振動と熱が塗布薬剤の吸収を促進し、相乗効果を生む可能性が示唆されました。
各項目の結果について以下に詳しく記載します。
1. シワの改善:
- グループA(HIFU+薬剤併用):シワのスコアが6.25から3.10に減少(-50%、p < 0.05)。
- グループB(薬剤塗布のみ):シワのスコアが6.30から5.90に減少(-6%、p > 0.05)。
2. しみの改善:
- グループA:しみスコアが3.50から2.10に改善(-40%、p < 0.05)。
- グループB:しみスコアは3.60から3.50とわずかな変化(-2.7%、p > 0.05)。
3. 水分量の増加:
- グループA:水分量は28から55に増加(+96%、p < 0.05)。
- グループB:水分量は30から32に微増(+6.7%、p > 0.05)。
4. 自己評価および専門家評価:
- グループA:患者の70%以上が「非常に改善」または「改善」と回答。GAIS評価でも同様の結果。
- グループB:患者の30%が「改善」と回答し、GAIS評価でも効果は限定的。
結論と考察 〜HIFUの温熱効果が薬剤の浸透を助ける?〜
HIFUによる温熱効果が塗布薬剤の浸透を助け、効果の向上につながったと考えられます。
特にグルタチオンはメラニンの生成を抑制し、ヒアルロン酸は肌の保湿を強化します。
この相乗効果が、グループAの顕著な肌質改善に寄与したと推測されます。
この研究の限界としては、参加者が少数(20名)であったことや、対象がアジア人女性に限定されていたことが挙げられます。
また、片側の顔のみを治療する「スプリットフェイスデザイン」を採用していれば、より信頼性の高いデータが得られた可能性があります。
HIFUと薬剤塗布の併用は、肌質を高めるための安全で効果的な治療法であり、薬剤塗布のみの場合よりも優れた結果を示しましたが、HIFU単独治療との比較はなされていませんでした。
HIFU単独施術との効果比較も、併用治療の優位性を示すためには行うべき将来的な研究テーマです。
従来のHIFU研究では、主に肌の引き締め効果に焦点が当てられていましたが、本研究は薬剤塗布との併用に着目し、美白や保湿といった新たな効果を示した点や、
研究報告の少ないHIFUと薬剤塗布の併用に関して調査した点は、特に評価に値すると考えられます。