“ニキビ(尋常性痤瘡)は広く見られる皮膚疾患で、特に思春期から成人に影響を及ぼす。
本ガイドラインでは、最新の科学的根拠に基づき、ニキビの効果的な治療法を提示する”*タイトル
“Guidelines of care for the management of acne vulgaris”
*著者、雑誌名、公開年
Rachel V. Reynolds, et al., Journal of the American Academy of Dermatology, 2024
- 研究背景と目的
ニキビは世界中で最も一般的な皮膚疾患の一つで、特に思春期や成人に多く見られます。本ガイドラインの目的は、最新の科学的知見に基づいたニキビ治療の指針を提供し、患者の生活の質向上を目指しています。
- 方法と結果
システマティックレビューを通じて、18の推奨事項と5つの実践的なガイドラインが策定されました。
過酸化ベンゾイル、局所レチノイド、局所抗生物質、および経口ドキシサイクリンが強く推奨されています。
経口イソトレチノインは、重度のニキビ、心理社会的負担や瘢痕を引き起こすニキビ、または標準的な経口または局所療法が奏効しないニキビに強く推奨されています。
局所クラスコテロン、サリチル酸、アゼライン酸、および経口ミノサイクリン、サレサイクリン、複合経口避妊薬、およびスピロノラクトンについては条件付き推奨が行われています。
適正実施方針として、複数の作用機序を持つ局所療法の併用、全身抗生物質の使用制限、全身抗生物質と局所療法の併用、および大きなニキビ病変に対する病変内コルチコステロイド注射の追加が推奨されています。
- 考察と結論
治療法の多様性を踏まえ、患者ごとのニーズや症状に応じた個別化治療が重要視されています。抗生物質の耐性問題、治療費用、アクセスの平等性などが依然として課題であり、持続的な対策が必要とされています。
こんにちは!今回は、米国皮膚科学会(American Academy of Dermatology)から2024年に公表されたニキビ治療ガイドライン“Guidelines of care for the management of acne vulgaris”を解説していきます。
ニキビに悩まされる人は世界中にいます。
日本の皮膚科学会からもニキビ治療に対するガイドライン“尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023”が公表されていますが、アメリカの方がニキビ研究に関して先進的な部分があることも事実です。
今回は、アメリカの最新ニキビ治療ガイドラインをできるだけ個人的な意見を交えず、そのまま解説していきます。
100%正確に情報を翻訳できるか分かりませんが、ぜひお悩みの解決に役立ててみてください!
Scope and objectives 〜研究範囲と目的〜
尋常性ざ瘡は、米国および世界中で皮膚科医が診断および治療する最も一般的な皮膚疾患の1つです。
このガイドラインは、米国およびカナダの皮膚科医、ニキビを治療する臨床医、および患者の観点から、9歳以上の成人、青年、および思春期前児童の尋常性ざ瘡の臨床管理の指針となるエビデンスに基づく推奨事項を提供することを目的としています。
これらのガイドラインは、2016年の米国皮膚科学会によるざ瘡管理のケアガイドラインを更新したものです。
私たちは、痤瘡のグレード及び分類・検査・局所療法・全身抗生物質・ホルモン療法・経口イソトレチノイン・物理的療法・補完代替医療・食事と環境介入に関する文献の系統的レビューに基づいてエビデンスを検討します。
これらのガイドラインは、米国食品医薬品局 (FDA) によって承認され、米国で一般的に使用されているざ瘡治療に焦点を当てています。
ニキビ様発疹および薬剤誘発性ニキビについては触れられていません。
乳児ニキビ、9 歳未満小児のニキビ、ニキビ誘発性色素沈着および瘢痕の診断と治療は、このガイドラインの範囲外です。
Methods 〜研究方法〜
米国皮膚科学会(AAD)とEvidinno, Inc.は、2021年5月から2022年11月にかけて一連の体系的なレビューを実施し、
9歳以上の成人に対する尋常性ざ瘡の管理おいて現在米国で承認されている治療法の有効性と安全性を判断しました。
研究グループは、9 人の認定皮膚科医、3 人の認定小児皮膚科医、スタッフ連絡担当者 1 名、および患者代表 1 名で構成されました。
強い推奨とは、メリットがリスクと負担を明らかに上回ると考えていることを意味し、
条件付き推奨とは、メリットがリスクと負担とほぼ均衡していると考えていることを意味し、ほとんどの人がその行動を望むと考えられるものです。
Definition 〜ニキビの定義〜
ニキビ(尋常性痤瘡)は、毛包脂腺系の慢性炎症性皮膚疾患です。
ニキビは主に顔面や体幹に開いた面皰または閉じた面皰、丘疹、膿疱、結節として現れ、痛み、紅斑、色素沈着、瘢痕が生じることがあります。
Introduction/background 〜導入と研究背景〜
尋常性ざ瘡は一般的な皮膚疾患で、2010 年には世界人口の 9.4% が罹患しており、世界で 8 番目に多い疾患となっています。
10代の若者の約 85%に影響を及ぼしますが、ほとんどの年齢層で発生する可能性があり、成人期まで続くこともあります。
障害調整生存年数(disability-adjusted life years)で測定されたざ瘡の負担は、2013年にすべての皮膚疾患の中で2位にランク付されました。
米国では 5,000万人以上がニキビに悩まされています。
510万人以上のアメリカ人がニキビ治療を求め、2013 年には医療費が8億4,600 万ドル、患者と介護者の生産性の損失が3億 9,800万ドルに達しました。
ニキビは、感情機能、社会的機能、人間関係、余暇活動、日常活動、睡眠、学校、仕事に重要な影響を及ぼします。
また、差別、いじめ、うつ病、不安、自尊心の低下、自殺念慮のリスク増加と関係しています。
ニキビの多因子性病因には、毛包の過角化、アクネ菌による微生物の定着、皮脂の生成、先天性免疫と後天性免疫の両方が関与する複雑な炎症メカニズム、神経内分泌メカニズム、遺伝的および非遺伝的要因が含まれます。
ニキビ発症のリスク因子には、思春期の加齢、ニキビの家族歴、脂性肌タイプなどがあります。
Acne grading and classification 〜ニキビのグレードと分類〜
ニキビの臨床グレーディングおよび分類システムは、研究および臨床の場で、ニキビの全体的な重症度、病変の数と形態、影響を受ける解剖学的部位、および色素沈着異常や瘢痕などの関連する二次的変化を評価するために、数多く使用されてきました。
ニキビのグレーディングおよび分類システムを一貫して使用することで、臨床診療において治療上の意思決定を容易にし、治療反応を評価するのに役立つ可能性があります。
利用可能なグレーディングには、Investigator Global Assessment (IGA)、Leeds 改訂ニキビグレーディングシステム、Global Acne Grading System、Global Acne Severity Scale、Comprehensive Acne Severity Scaleなどがあります。
臨床現場ではニキビのグレーディングシステムとして広く受け入れられているものはありませんが、米国では IGA が最も一般的に使用されており、臨床医と患者の評価がよく一致しています。
IGAスケールは、ニキビ治療の多くのランダム化比較試験 (RCT) で使用されており、理想的なニキビのグレーディングシステムを確立するための一貫したフレームワークとして提案されています。
理想的なニキビのグレーディングシステムは、ニキビ病変の種類、病変数、ニキビの範囲と領域を測定し、写真による重症度分類機能、使いやすさ、説明のしやすさを必要とします。
International Dermatology Outcomes Measuresと米国皮膚科学会の関係者は、日常診療におけるニキビやその他の炎症性皮膚疾患の重症度を定量化するために、5段階の順序尺度 (0 ~ 4: クリア、ほぼクリア、軽度、中等度、重度) で合意に達しました。
この尺度は、顔面および体幹のニキビに使用するために標準化および検証される必要があります。
Microbiological and endocrine testing 〜微生物・内分泌の検査〜
C. acnes(旧称Propionibacterium acnes)は、主にニキビの病因に関与するグラム陽性嫌気性桿菌で、一部の菌株は病原性がある可能性が高いですが、多くは皮膚微生物叢に共生しています。
C. acnesは、通常の細菌培養ができず培養するのに必要な要件があります。
また、ニキビの病変部でStaphylococcus epidermidis、Staphylococcus aureus、およびMalassezia種も見つかっていますが、因果関係はまだ証明されていません。
一部のC. acnes種は抗生物質の耐性がありますが、日常的な微生物学的検査や抗生物質感受性検査はニキビの治療に影響しないため通常行われません。
特にテトラサイクリン治療が長期にわたる状況で、口囲領域の発疹性の均一な膿疱から結節を呈する患者は、グラム陰性毛包炎の診断に病変培養が有益となる可能性があります。
pityrosporum(Malassezia) 毛包炎の診断のために、体幹部の丘疹および膿疱を呈する患者に対して微生物学的検査が考慮される場合もあります。
テストステロンやデヒドロエピアンドロステロン硫酸塩などのアンドロゲンは、ニキビの発症に中心的な役割を果たしています。
ただ、ニキビの重症度とアンドロゲン濃度の関係は不明で、ある研究では正の相関が示されましたが、他の研究では相関が示されないなど結果が定まっていません。
ニキビ患者のほとんどには、通常の内分泌検査は適応とはなりません。
ニキビがあり、多毛症、稀発月経または無月経、男性型脱毛症、不妊症、多嚢胞性卵巣、陰核肥大、肥満などのアンドロゲン過剰症の臨床的兆候または症状がある患者は、アンドロゲン過剰症のさらなる内分泌検査が必要となる場合があります。
多嚢胞性卵巣症候群は、排卵障害または超音波検査で多嚢胞性卵巣が認められることを特徴とする、アンドロゲン過剰症の一般的な原因です。
血清中の総テストステロンおよび/または遊離テストステロン、デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩、アンドロステンジオン、黄体形成ホルモン、卵胞刺激ホルモンの検査が考慮される場合があります。
高アンドロゲン血症の女性では、17-ヒドロキシプロゲステロン値による21-水酸化酵素欠損による非典型的先天性副腎過形成のスクリーニングが適応となる場合があります。
重度のニキビ患者のでは、血清成長ホルモン、インスリン様成長因子、性ホルモン結合グロブリン、遊離アンドロゲン指数、脂質パネル、インスリン、プロラクチン、エストロゲン、プロゲステロンも異常となる可能性がある。
内分泌検査で異常が認められる患者、また基礎疾患として内分泌障害が懸念される患者は、内分泌専門医による評価を受けるべきです。
Acne management 〜ニキビの管理〜
ニキビの治療選択肢には、局所療法、全身抗生物質、ホルモン剤、経口イソトレチノイン、物理療法、補完代替医療、食事および環境介入などがあります。
ニキビの治療選択肢が多様であることを考えると、潜在的な治療の利点とリスク、ニキビの重症度、範囲、部位、治療費、患者の好み、その他の要因に基づいてニキビケアを個別化することが重要です。
Topical therapies 〜局所外用療法〜
局所療法はニキビ治療の主流です。
局所療法は単独療法(局所抗生物質を除く)としてニキビの初期治療および維持療法に使用したり、他の局所薬または経口薬と組み合わせて使用したりできます。
一般的に使用される局所療法には、局所レチノイド、過酸化ベンゾイル(BP)、抗生物質、クラスコテロン、サリチル酸、アゼライン酸などがあります。
局所療法でニキビを管理する場合、効果を最適化し、抗生物質耐性のリスクを軽減するための優れた実践法として、複数の作用機序を組み合わせたマルチモーダル療法が推奨されています。
Topical retinoids 〜外用レチノイド〜
局所用レチノイドはビタミン A 誘導体で、面皰溶解性および抗炎症性があり、色素沈着を改善し、ニキビの消失を維持できるため、ニキビ治療の基礎となります。局所用トレチノイン、アダパレン、タザロテンおよびトリファロテンを含む4種類の局所用レチノイドが、米国でニキビ治療薬としてFDAの承認を受けています。各レチノイドは異なるレチノイン酸受容体に結合し、活性、忍容性、および有効性に若干の違いをもたらします。
20 件の研究による中等度の確実性のエビデンスに基づき、ニキビ治療には局所レチノイドを推奨します。
4件のRCTでは、12週間時点でプラセボと比較して、局所レチノイドで治療した患者の方がIGA成功を達成した割合が高くなりました。
局所レチノイドの副作用として、灼熱感、乾燥、赤み、皮向け、疼痛などのが生じることがありますが、3件のRCTでは、12週時点で治療中止につながる有害事象の割合は1.4%と低かったです。
既存のデータ比較では、ある局所レチノイドが他の局所レチノイドより優れていることを示す根拠はなく、有効性と任用性は濃度と製剤の種類によって異なります。
刺激は特に高濃度でよくみられますが、使用頻度を減らし保湿剤と併用することで軽減される場合があります。
一部のトレチノイン製剤は光不安定性のため夕方に塗布する必要があり、酸化と不活性化を避けるために過酸化ベンゾイル(BP)と一緒に塗布してはいけません。
微粒子加工された局所トレチノイン、アダパレン、タザロテンにはこのような使用制限はありません。
局所レチノイドは光過敏症を引き起こす可能性がありますが、日焼け止めを同時に使用することでリスクを減らすことができます。
Benzoyl peroxide(BP) 〜過酸化ベンゾイル〜
BPは、遊離酸素ラジカルを放出し、軽度の面皰溶解作用を持つ市販の局所抗菌剤です。
8件の研究から得られた中程度の確実性のエビデンスに基づき、ニキビ治療にBPを推奨します。
3件のRCTでは、12週間時点でプラセボと比較して、BPで治療した患者の方がIGA成功率が高くなりました。
研究の中で、12週時点でBPを使用した群では炎症性病変数が平均22.13%減少し、非炎症性病変数も平均17.05%減少と大きな改善がみられました。
BPの使用も濃度と製剤によって、灼熱感や刺すような痛み、乾燥、紅斑、皮膚剥離、布の漂白、接触アレルギーなどが起こり得ます。
低濃度BPの使用と塗布して早めに洗い流す方法をとることで、副作用に耐えられる場合があります。
BPに対するC .anesの耐性報告はありません。
Topical antibiotics 〜外用抗菌薬〜
局所抗生物質(エリスロマイシン、クリンダマイシン、ミノサイクリン、ダプソンを含む)は、抗菌作用と抗炎症作用の両方を通じてニキビを治療します。
14件の研究から得られた中程度の確実性のエビデンスに基づいて、ニキビ治療には局所抗生物質を推奨します。
3件のRCTでは、12週時点でプラセボと比較して、局所抗生物質で治療された患者の方が IGA 成功を達成した割合が高かったです。
また、8件のRCTで、12週時点で局所抗生物質の方がプラセボよりも平均−10.86%減と炎症性病変の大幅な減少が見られました。
しかし、別の7件のRCTでは、12週時点での非炎症性病変数の減少に関するグループ間の差は統計的に有意ではありませんでした。
特に、局所抗生物質の単独療法は、抗生物質耐性の懸念があるため推奨されません。
局所抗生物質とBPを併用すると、有効性が向上し、抗生物質耐性の発生を防ぐことができます。
BPをダプソンまたはスルファセタミドと同時局所塗布すると、オレンジがかった茶色の皮膚変色を引き起こしますが、洗い流すことができます。
したがって、BPは局所ダプソンとは別の時間帯に使用する必要があります。
局所ダプソンを開始する前にグルコース-6-リン酸脱水素酵素のスクリーニングを行う必要はありません。
局所抗生物質は一般的に忍容性が高いですが、局所クリンダマイシンの使用に関連した下痢やクロストリジウム・ディフィシル関連大腸炎の症例報告がまれにあります。
ある局所抗生物質が他の抗生物質より優れているかどうかを判断するには、比較研究が不足しています。
Fixed-dose topical combinations 〜配合局所外用薬〜
BP、レチノイド、抗生物質のうち2つを配合した局所外用製剤により、治療レジメンの遵守が容易になります。
BP+局所レチノイド配合剤の7件の研究、BP+抗菌薬配合剤の9件の研究、局所レチノイド+抗菌薬配合剤の3件の研究から得られた中等度のエビデンスに基づき固定用量配合の局所外用薬を推奨します。
3 件のRCTでは、12週時点で対照群と比較して、BP+局所レチノイドの併用で治療した患者の方がIGA成功率の高い患者が多かった。
また、別の4件のRCTでは、12週時点でのBP+局所抗生物質の併用で、対照群と比較して炎症性病変数が平均-37.34%減少し、非炎症性病変数は平均20.47%減少と大きな改善がみられた。
抗生物質への耐性を防ぐため、局所レチノイド+抗生物質配合剤とBPの同時使用が推奨される。
配合剤の副作用は、それぞれの薬剤単体でみられる副作用を合わせたものである。
配合外用薬の中には、個々の成分を別々に処方するよりも安価なものもあります。
Clascoterone 〜クラスコテロン〜
クラスコテロンは局所抗アンドロゲン薬で、アンドロゲン受容体に直接結合し、アンドロゲンを介した脂腺細胞からの皮脂および炎症性サイトカインの合成を阻害します。
エビデンスの高い2件の研究と、治療へのアクセスおよび費用に関するグループの議論に基づいて、ニキビ治療にクラスコテロンを条件付きで推奨します。
2件のRCTでは、12週間時点でクラスコテロンを投与された患者の方が、対照群と比較してIGA成功率が高いことが示されました。
臨床試験の証拠に基づくとリスクを上回る利益の確実性は高いものの、クラスコテロン治療の現在の高額な費用がニキビ治療の公平なアクセスに影響を与える可能性があることを懸念して、作業グループは条件付き推奨に投票しました。
この条件付き推奨は、治療費とアクセスの変化に応じて将来的に変更される可能性があります。
Salicylic acid 〜サリチル酸〜
サリチル酸は、濃度が0.5%~2%の局所面皰溶解剤です。
1件のRCTによる中程度のエビデンスに基づき、ニキビ治療に条件付きでサリチル酸を推奨します。
0.5%サリチル酸を使用したとき、12週間の時点で対照群と比較して、炎症性病変が25%減少し、開放性面皰が11% 減少しました。閉鎖性面皰に差がありませんでした
10%~30%のサリチル酸を使用したケミカルピーリングについては、Physical modalitiesのセクションで別途説明します。
Azelaic acid 〜アゼライン酸〜
アゼライン酸は、局所の面ぽう溶解剤であり、さらに抗菌薬、抗炎症薬としても機能し、色素沈着を改善する効果もあるため、敏感肌や肌の色が濃いタイプの患者に特に有効である可能性があります。
3件のRCTから得られた中程度のエビデンスに基づいて、ニキビ治療に局所用アゼライン酸を条件付きで推奨します。
92名を対象とした1つのRCTで、アゼライン酸20%クリームを1日2回投与された患者群では、対照群と比べて、3か月使用時点でに総病変数が50% ~ 100%減少した患者が28%も多くいました。
Considerations in topical therapies 〜局所療法における考慮事項〜
妊娠中の患者では、予想される全身吸収が限られていることから、アゼライン酸、BP、エリスロマイシン、およびクリンダマイシンの外用による胎児への害のリスクは予想されません。
サリチル酸は施術範囲と施術時間が限られている場合は妊娠中に使用できます。全身吸収の可能性があるため、広い領域または閉塞下での使用は推奨されません。
妊娠中または授乳中の外用ダプソンおよびクラスコテロンの安全性に関するデータはありません。
タザロテンは、動物の生殖研究、レチノイドの薬理学、および全身吸収の可能性に基づき、妊娠中に禁忌です。
ヒトの研究で、外用レチノイドの使用と先天異常との因果関係を確立した研究はありませんが、妊娠中は外用レチノイド以外の外用療法が好まれます。
固定用量配合局所外用薬であるBP2.5%/アダパレン1%ジェル、トレチノイン0.1%/BP3%クリーム、トレチノイン 0.05%ローション、トリファロテン0.005%クリーム、ダプソン5%ジェル、ミノサイクリン4%フォームは、9歳以上でFDA承認されており、
その他のほとんどの局所用レチノイド、抗生物質、クラスコテロン、アゼライン酸は、12歳以上で承認されています。
ニキビ治療のための局所用グリコール酸、硫黄、スルファセタミドナトリウム、およびレゾルシノールの使用に関する推奨を作成したり、
局所用BP、レチノイド、抗生物質、およびそれらの組み合わせを直接比較する推奨を行うには、利用可能なエビデンスが不十分です。
Systemic antibiotics 〜内服抗菌薬〜
全身への抗生物質投与は、中度から重度のニキビの治療に広く使用されています。
ドキシサイクリン、ミノサイクリン、サレサイクリンなどの経口テトラサイクリン系抗生物質が一般的に使用されています。
テトラサイクリン系抗生物質は、細菌リボソーム30Sサブユニットの16SリボソームRNAに結合してタンパク質合成を阻害することで抗生物質特性を示し、
また好中球走化性およびマトリックスメタロプロテアーゼを阻害し、炎症性サイトカインを下方制御することで抗炎症特性を示します。
特に、テトラサイクリン系抗生物質は、妊娠中、授乳中、および歯の発育中の 9 歳未満の小児には禁忌です。
繰り返し曝露すると永久歯のエナメル質形成不全または変色を引き起こす可能性があるためです。
可能であれば、内服抗菌薬の使用を制限することは、抗生物質耐性やその他の抗生物質関連合併症の発生を減らすため推奨されています。
2021年には、皮膚科医は他のすべての専門分野よりも臨床医1人当たりの経口抗生物質を多く処方し、抗生物質の大部分はニキビ治療に使用されました。
抗菌薬耐性に関する懸念に加えて、経口テトラサイクリン系抗菌薬の使用は、炎症性腸疾患(IBD)、咽頭炎、クロストリジウム・ディフィシル感染症、およびカンジダ外陰膣炎と関連付けられています。
外来によける抗菌薬の適正使用として、患者に対して”正しい抗菌薬”を”正しい用量”だけ、”正しいタイミング”で”正しい期間”の処方をすることが求められています。
米国疾病管理予防センターは、外来患者に対する抗生物質管理プログラムに、(1)抗生物質処方と患者の安全性を最適化する取り組み、(2)管理方針または実践の実施、(3)臨床医のフィードバックまたは自己評価による処方実践の追跡、(4)教育リソースおよび専門知識へのアクセスを含めることを推奨しています。
内服抗菌薬でニキビを治療する場合、抗生物質耐性のリスクを減らし、全身性抗生物質への曝露期間を制限するために、BPや他の局所療法の併用を推奨します。
経口抗生物質は、ニキビ治療の単独療法として使用しないでください。
全身性抗生物質の使用は、国際ガイドラインで推奨されているように、通常3〜4か月を超えないように、可能な限り短期間に制限する必要があります。
抗菌薬を使用しない治療法において治療効果が不十分であったり禁忌があるため、より長期の内服抗菌薬療法が必要な患者については、
フォローアップと定期的な再評価により内服抗菌薬の使用を最小限にし、治療中および治療後に局所療法を併用することで治療エンドポイントを維持する必要があります。
Doxycycline 〜ドキシサイクリン〜
5 件の研究から得られた中等度のエビデンスに基づき、ニキビ治療にはドキシサイクリンを推奨します。
2件のRCTでは、4か月時点で対照薬と比較して、ドキシサイクリンで治療された患者の方がIGA 成功率が高くなりました。
別の3件の試験では、ドキシサイクリンの方がプラセボよりも副作用による治療中止が多くありました (1.3%vs0.3%)。
ドキシサイクリンは、吐き気、嘔吐、下痢、食道炎、光毒性、まれに頭蓋内圧亢進などの胃腸障害を引き起こす可能性があります。
ドキシサイクリンを食事や十分な水とともにまっすぐ立った姿勢で服用すると、胃腸の副作用を軽減できる可能性があります。
低用量ドキシサイクリン(20 mg を1日2回または徐放性40 mgを1日1回)は、中等度の炎症性ニキビ患者に有効だと実証されていますが、異なる用量の経口ドキシサイクリンを直接比較する十分な証拠はまだありません。
エビデンスレベルの低い4件の研究に基づき、ニキビ治療には条件付きでアジスロマイシンよりドキシサイクリンを推奨します。
治療12週時点でドキシサイクリンの方がアジスロマイシンよりも病変総数の減少が大きく見られました。
アジスロマイシンは、呼吸器感染症およびその他の感染症をカバーする広域スペクトルのマクロライド系抗生物質であり、アジスロマイシンの使用が増えると抗生物質耐性が増加する可能性があります。
Minocycline 〜ミノサイクリン〜
5 件の研究から得られた中等度のエビデンスと、治療の潜在的な副作用を考慮した作業グループの議論に基づき、ニキビ治療にミノサイクリンを条件付きで推奨します。
2件のRCTでは、12週時点で対照群と比較して、ミノサイクリンで治療された患者の方がIGA成功を達成した割合が高くなりました。
研究では、治療中止を必要とする副作用はミノサイクリンの方がプラセボよりも高かったです (9.1% vs 1.0%)。
経口ミノサイクリンはドキシサイクリンと同様の副作用をもたらします。
臨床試験の証拠に基づくと、リスクを上回るベネフィットの確実性は中程度であるにもかかわらず、めまい、自己免疫性肝炎、皮膚の色素沈着、薬剤誘発性狼瘡、過敏症症候群など、ミノサイクリンのまれな潜在的副作用に対する懸念から、作業グループは条件付き推奨に投票しました。
ドキシサイクリンとミノサイクリンを直接比較する証拠は不十分であるため、各治療オプションの潜在的なリスクとベネフィットを考慮する必要があります。
さらに、1件のRCTでは、軽度から中等度のニキビに対する経口ミノサイクリン単独療法は、局所 BP 5% またはエリスロマイシン 2%/BP 5% よりも優れているとは示されていません。
入手可能なエビデンスでは、タザロテンゲル単独よりも、3〜4ヶ月以上のミノサイクリン単独療法またはタザロテンとの併用療法が効果が高いという十分な根拠はありません。
Sarecycline 〜サレサイクリン〜
3 件の研究から得られた高いエビデンスと、治療へのアクセスと費用に関する作業部会での議論に基づき、条件付きでサレサイクリンをニキビ治療に推奨します。
サレサイクリンは狭域スペクトルのテトラサイクリン系抗生物質であり、2件のRCTでは、12週時点で対照群と比較してサレサイクリン投与患者の方が IGA 成功率が高いことが示されました(22.3% vs 13.0%)。
サレサイクリンは体重当たり1.5 mg/kg で投与され、一般的に忍容性が高く、胃腸障害、光過敏症、カンジダ感染の副作用の発生率が低いです。
臨床試験によると、リスクよりも利点の方が確実性が高いにもかかわらず、作業グループは、サレサイクリン治療の現在の高額な費用がニキビ治療の公平なアクセスに影響を与える可能性があるという懸念から条件付きの推奨に投票しました。
この条件付き推奨は、治療費とアクセスの変化に応じて将来的に変更される可能性があります。
Considerations in systemic antibiotics 〜内服抗菌薬おける考慮事項〜
経口ドキシサイクリン、ミノサイクリン、およびサレサイクリンは、ニキビの治療薬として FDA の承認を受けています。
妊娠中または授乳中の患者の場合、胎児または授乳中の乳児の永久歯の変色や骨の成長阻害の可能性があるため、テトラサイクリン系の抗生物質の使用は避けるべきです。
2016年の米国皮膚科学会ニキビガイドラインでは、妊婦に対する経口エリスロマイシンおよびアジスロマイシンの限定的な使用、およびテトラサイクリン系薬剤に耐えられない患者に対するトリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX)またはトリメトプリムの限定的な使用について説明しました。
ニキビ治療における経口アジスロマイシンまたはTMP-SMXの使用に関する推奨事項を作成するにはエビデンスが不十分です。
さらに、TMP-SMXは、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死融解症や急性呼吸不全などの重篤な副作用を伴う可能性があります。
これらの抗生物質は、肺炎や尿路感染症などの市中感染にも適応があり、抗生物質耐性菌の選択を避けるため、ニキビへの広範な使用は控えるべきです。
また、内服抗生物質同士を直接比較したり、局所療法と比較するには、利用可能なエビデンスが不十分です。
Hormonal agents 〜ホルモン療法〜
Combined oral contraceptives 〜複合経口避妊薬〜
複合経口避妊薬 (COC) には、エストロゲンとプロゲスチンの組み合わせが含まれています。
COC は、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、および黄体形成ホルモン(LH)を阻害することで、排卵と妊娠を防ぎます。
COC は、全体的な抗アンドロゲン特性によってニキビを治療します。
この特性により、卵巣アンドロゲンの産生が減少し、性ホルモン結合グロブリン(SHBG)が増加し、アンドロゲン受容体を活性化する遊離テストステロンが減少します。
COCは、5α還元酵素の活性を低下させ、アンドロゲン受容体をブロックします。
エチニルエストラジオール(EE)は、COCで最も一般的なエストロゲン成分であり、1日の投与量は通常10~50μg です。
プロゲスチンは合成されたプロゲステロン類似体で、従来は世代によって分類されていました。
第1、第2、第3世代のプロゲスチンはテストステロンから誘導され、単独で使用するとアンドロゲン活性があります。
第1世代の経口プロゲスチンの例には、ノルエチンドロンとエチノジオールジアセテートがあります。
第2世代にはレボノルゲストレルとノルゲストレルがあります。
第3世代にはノルゲスチメートとデソゲストレルがあり、これらは以前の世代よりもアンドロゲン活性が低いと考えられています。
プロゲスチンのみの経口避妊薬、筋肉内注射、子宮内避妊器具、または皮下インプラントは、ニキビを悪化させる可能性があります。
第4世代のプロゲスチンには、経口ドロスピレノンとジエノゲストがあります。
ドロスピレノンは、テストステロン由来ではないスピロノラクトン類似体であり、抗アンドロゲン特性があります。
エストロゲンと組み合わせると、すべてのCOCは純粋な抗アンドロゲン特性をもたらします。
ノルゲスチメート/EE、ノルエチンドロン酢酸塩/EE/フマル酸鉄、ドロスピレノン/EE、およびドロスピレノン/EE/レボメフォレートの4つのCOCが、経口避妊を希望する女性のニキビ治療薬としてFDAに承認されています。
現在、すべてのCOCは、米国でジェネリック医薬品として入手可能です。
10件の研究から得られた中等度のエビデンスと、避妊に関する患者の価値観や嗜好のばらつきに基づいて、ニキビ治療にCOCを条件付きで推奨します。
ニキビ治療の承認された特定の適応症に関係なく、ニキビの結果に関するすべてのCOC製剤のデータが統合され、プラセボと比較されました。
3件のRCTでは、サイクル6終了時の対照群と比較して、COCで治療された患者の方がIGA成功を達成した割合が高くなりました。
また、別の複数の研究でも、サイクル6終了時にCOCの方が対照群よりも炎症性病変数が平均15.81%減少し、非炎症性病変数も平均19.45%減少と大きなニキビ改善効果が得られました。
複数の研究における25%~35%という被験者の高い脱落率は、COC継続に関する患者の好みのばらつきを部分的に反映している可能性があります。
現在のデータでは、COC の処方や投与量によるニキビへの反応に一貫した違いは示されておらず、ニキビ治療においてあるCOCが他のCOCより優れていることを裏付けるものではありません。
副作用の報告および副作用による治療中止は、プラセボよりもCOC群の方が多いです。
ニキビ治療におけるCOCの効果は、顎のラインに発症しているニキビや月経前症候群、多毛症、または高アンドロゲン症の患者だけに限定されません。
臨床医は、COCによるニキビ改善が通常3~6か月以内に起こることを患者に説明し、治療の反応を早めるために早期にCOCと他のニキビ治療薬を組み合わせることを検討する場合があります。
以下COC処方時の注意点です。
COCを処方する前に、包括的な病歴を取得し、血圧を測定することが重要です。
臨床医は、妊娠の症状や兆候がなく、特定の基準 (例: 正常月経開始後 7 日以内に受診した、または前回の正常月経開始以来性交を行っていない) を満たす患者は妊娠していないと合理的に確信できます。
尿妊娠検査も検討される場合があります。
COC開始前に、骨盤および乳房の検査、子宮頸がんのスクリーニング、および性感染症のスクリーニングは必要ありません。
特定の特性または病状の患者に対する避妊法の選択に関する推奨事項は、米国の避妊使用に関する医療適格基準 2016 に記載されており、臨床現場での使用を容易にするためにモバイル アプリケーションとして利用できます。
COCの絶対的および相対的禁忌は本ガイドラインの表IVにまとめられています。
COCの潜在的な利点とリスクを比較検討する議論は、その適応症によって異なる場合があります。
COCが妊娠を防ぐための適応症である場合、そのリスクと利点は、望まない妊娠のリスクと利点と比較して考慮する必要があります。
COC がニキビ治療のみに適応症である場合、そのリスクと利点は、ニキビのリスクと利点と比較する必要があります。
COC の潜在的な副作用には、静脈血栓塞栓症 (VTE)、心筋梗塞、脳卒中、乳がん、子宮頸がんなどがあります。
EEの一般的な使用は、1日用量50μg未満では、50μgを超えるEEの使用と比較してVTEリスクが低くなりますが、米国ではそのような使用はもう行われていません。
既存のデータでは、EEの用量を50μgよりさらに少なく減らしてもVTEリスクに有意な影響は示されていません。
COCの使用に伴うVTEの絶対リスクは、妊娠中のVTEリスクと比較すると小さいです。
10,000人年あたりのVTE推定発生率は、COCを使用しない非妊娠女性では約1~5、COC使用者では3~9、ドロスピレノン含有COC使用者では10、妊娠中では5~20、産後12週間では40~65と推定されています。
COCの使用は、特に35歳以上の喫煙患者、または高血圧、糖尿病、または片頭痛のある患者で、心筋梗塞および脳卒中のリスクのわずかな増加と関連しています。
心血管イベントは重要な安全上の懸念事項ですが、生殖年齢の患者ではまれであり、相対リスクのわずかな増加は依然として全体的な絶対リスクが低いことを示しています。
COCは、システマティックレビューにおいて、乳がんおよび子宮頸がんのリスクのわずかな増加と、子宮内膜がん、卵巣がん、大腸がんのリスクの減少と関連付けられています。
英国で46,022人の女性を対象にした長期コホート研究では、 30年間の追跡調査の結果、過去にCOCを使用していた人々の短期および長期のがんリスクとベネフィットは全体的に中立であることが示されました。
COCは、避妊やニキビ治療以外にも、月経周期の調整、無月経の誘発、月経性片頭痛の予防、月経困難症、多毛症、月経過多、子宮内膜症に伴う骨盤痛、月経前症候群などの治療など、さまざまなメリットをもたらします。
潜在的なメリット、リスク、患者の価値観や好みのばらつきが多数あるため、避妊法の開始または中止の共同意思決定において患者の価値観、好み、実体験を優先する患者中心の避妊カウンセリングが重要です。
すべての患者が生殖目標を達成できるように、米国産科婦人科学会は、有色人種やその他の疎外された人々の生殖欲求が歴史的に軽視されてきたこと、および避妊カウンセリングにおける臨床医の意識的および無意識的な偏見を認める生殖正義の枠組みを意図的に適用することを推奨しています。
COCは、テトラサイクリン系抗生物質やスピロノラクトンなどの他の経口または局所ニキビ治療薬と併用することができます。テトラサイクリン系抗生物質が COC の効果を低下させることは示されていません。
抗菌薬のうち、リファンピシンとグリセオフルビンは明らかにCOCの効果を低下させています。
スピロノラクトンとドロスピレノンの併用により、血清カリウム値の上昇や治療中止を必要とする副作用は認められませんでした。
COC は、14 歳以上 (ドロスピレノン/EE、ドロスペリノン/EE/レボメフォレート) または15歳以上 (ノルゲスチメート/EE、ノルエチンドロン/EE/フマル酸鉄) の女性患者に対してFDA承認されています。
ドロスピレノン/エステロールを配合した新しいタイプの COC は、2021 年に FDA により避妊薬として承認されましたが、ニキビに対するその使用は現在のガイドラインでは評価されていません。
Spironolactone 〜スピロノラクトン〜
スピロノラクトンは、アルドステロン受容体拮抗薬であり、テストステロンの産生を減少させ、皮膚のアンドロゲン受容体へのテストステロンとジヒドロテストステロンの結合を競合的に阻害します。
スピロノラクトンはまた、5α-還元酵素を阻害し、ステロイドホルモン結合グロブリンを増加させる可能性もあります。
スピロノラクトンはニキビ治療薬としてFDAの承認を受けていません。
8 件の研究から得られた中等度のエビデンスに基づき、ニキビ治療にスピロノラクトンを条件付きで推奨します。
40名の患者を対象とした小規模RCTでは、12週間でプラセボとBP2.5%単独の併用と比較して、スピロノラクトン50 mg/日の投与とBP2.5%の併用治療した患者の方がIGA成功率が高くなりました (75.0% vs 30.0%)。
58人の患者を対象とした2件の小規模RCTでは、12週時点での対照群と比較して、1日用量50~200mgのスピロノラクトンを投与された患者の方が、全般的評価で改善を示した割合が高くなりました(77.4% vs. 22.25)。
スピロノラクトンによる治療を開始したニキビ患者と経口テトラサイクリン系抗生物質による治療を開始したニキビ患者を比較したコホート研究では、治療の切り替えによって評価された治療有効率は2つのグループ間で同等であることが示されています。
副作用として月経不順が報告されていますが、これは用量依存的と思われ、COCを使用している患者ほどはみられていません。
他の一般的な副作用には、利尿作用、乳房の圧痛、乳房の肥大、女性化乳房、疲労、頭痛、めまいなどがあります。
スピロノラクトン50~100 mg/日は、最近の410人の患者を対象としたRCTにおいて、プラセボと比較して12週間でIGA が大きく改善し、24 週間でニキビ特有の生活の質と患者の全般的評価も改善したことが示されましたが、
この RCTは現在のガイドラインの文献検索が完了した後に発表されています。
作業グループは、非常に確実性の低い観察研究に基づき、高カリウム血症の危険因子(高齢、併存疾患、薬剤など)がない場合、カリウムモニタリングの有用性は低いと述べています。
ニキビ治療のためのスピロノラクトンの2つの小規模RCTでは、血清電解質の有意な変化は見られませんでした。
30日以上スピロノラクトンを投与されたニキビ患者108,547名を対象とした大規模コホート研究では、0.22%が高カリウム血症と診断され、0.03%が高カリウム血症の診断後30日以内にスピロノラクトンの投与を中止しました。
4年間の後ろ向きコホート研究では、291患者年の追跡調査中に6件の高カリウム血症が報告されました。
ニキビ治療にスピロノラクトン50~200mgを毎日投与された18~45歳の女性974名を対象とした後ろ向き調査では、1,802件のカリウム測定値のうち15件(0.8%) で5.0mmol/Lを超えました。
高カリウム血症の患者は全員無症状で、スピロノラクトン治療を継続しました。
ニキビ治療にスピロノラクトンを投与された139名の日本人男性および女性患者のコホート研究では、20週間かけて1日用量を200mgから50mg まで漸減したところ、カリウムモニタリングを受けたサブセット内の25人の患者全員が、32 週間の追跡調査でカリウム値が正常でした。
ベースラインの血清カリウム値が正常であった124名の健康な女性を対象としたコホート研究では、42〜47歳の患者3名(2.4%)がフォロー中に高カリウム血症を認めました。
カリウムのモニタリングを考慮すべき患者の特性としては、
高齢者、高血圧・糖尿病・慢性腎臓病などの併存疾患のある患者、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬・アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)・ジゴキシンなど腎臓・副腎・肝臓の機能に影響を与える薬剤を服用している患者
が挙げられます。また、スピロノラクトン内服中は、カリウムを多く含む食事を避けることを考慮すべきです。
スピロノラクトンは妊娠中に使用しないでください。スピロノラクトンは胎盤を通過します。
動物実験によると、子宮内での暴露により男児の女性かを引き起こす可能性があります。
ヒトのデータは限られた症例報告に基づいており、妊娠 5 週目までスピロノラクトンを投与された母親の新生児で 5 例で正常な男性生殖器の発達が見られ、1 例で性器の形態が不明瞭になりました。
スピロノラクトンによるニキビ治療では、COCの同時使用がしばしば適応となります。
スピロノラクトンは、ラットに最大でヒト用量の150倍のスピロノラクトンまたはその代謝物を投与した慢性毒性試験に基づき、腫瘍形成の警告が出されています。
450万人を対象とした7件の研究の系統的レビューでは、低いエビデンスに基づいた報告にはなりますが、
18歳以上の男性および女性におけるスピロノラクトンの使用と、乳がん (RR 1.04、95% 信頼区間 0.86-1.22)、卵巣がん (1.52、0.84-2.20)、膀胱がん (0.89、0.71-1.07)、腎臓がん (0.96、0.85-1.07)、胃がん (1.02、0.80-1.24)、または食道がん (1.09、0.91-1.27) のリスクとの間に、統計的に有意な関連性は示されませんでした。
スピロノラクトンの使用は、非使用者と比較して前立腺がんリスクの低下(0.79; 0.68-0.90)につながるとの報告がありますが、そのエビデンスは非常に低いです。
Intralesional corticosteroid 〜病巣内ステロイド〜
病変内コルチコステロイド療法は、ニキビの補助療法として使用されています。
ニキビに対する病変内コルチコステロイド注射を評価する臨床試験データは限られていますが、9人の患者を対象とした小規模RCTでは、トリアムシノロンを注射したニキビ嚢胞の大部分は治療後3~7日以内に消退し、生理食塩水を使用した対照群よりも早く消退しました。
さらに、病変内コルチコステロイド注射は、環状肉芽腫、化膿性汗腺炎、炎症性表皮嚢胞、ケロイドなど、その他のさまざまな炎症性皮膚疾患に有効です。
これらの特徴を合わせると、病変内コルチコステロイド注射が有用な治療選択肢になり得ることが間接的に示唆されます。
そのため、作業グループは、より大きなニキビの丘疹または結節のある患者に対する補助療法としての病変内コルチコステロイド注射の使用に関する適正実施基準を発表しました。
病変内コルチコステロイド注射は、ニキビの瘢痕化のリスクがある患者や炎症や痛みを速やかに改善したい患者には慎重に使用すべきです。
局所的な皮膚萎縮、ステロイドの全身吸収、副腎抑制が起こる可能性があります。
コルチコステロイドの濃度と量を低く抑える(例:トリアムシノロン 2.5~5 mg/ml)ことで、リスクを最小限に抑えることができます。
Considerations in hormonal agents 〜ホルモン療法における考慮事項〜
ニキビ治療に経口コルチコステロイド、フルタミド、またはメトホルミンを使用することを推奨するには、エビデンスが不十分です。
2016年の米国皮膚科学会(AAD)ニキビガイドラインでは、標準的なニキビ治療を開始するまでの、重度炎症性ニキビに対する経口コルチコステロイドの一時的使用、および副腎アンドロゲン過剰症の患者に対する低用量経口コルチコステロイドについて説明しました。
プレドニゾン0.5mg/kg/日は、劇症ニキビ、イソトレチノイン誘発性劇症ニキビの治療、およびリスクのある患者におけるイソトレチノイン誘発性ニキビの再発予防に使用されています。
しかし、ニキビに対する初期治療としては、長期使用における副作用を考慮し、内服ステロイドは推奨されていません。
Isotretinoin 〜イソトレチノイン〜
経口イソトレチノイン、または 13-シス-レチノイン酸は、1982 年以来、重度の難治性結節性尋常性ざ瘡に対する唯一の FDA 承認治療薬です。
正確な作用機序は不明ですが、イソトレチノインは皮脂腺のサイズと分泌を減らし、皮脂依存性C. acnesのレベルを間接的に低下させ、ケラチノサイトの角質化を正常化することで面皰形成を抑制し、抗炎症作用ももたらします。
日常的な皮膚科診療で観察されるイソトレチノインの顕著な有効性にもかかわらず、その有効性に関する臨床試験データは限られており、質も低いです。
治療抵抗性の嚢胞性ざ瘡および集塊性ざ瘡の患者33名を対象としたRCTでは、嚢胞性病変の平均数は、イソトレチノイン治療1か月後と2か月後にそれぞれ17%と33%減少しましたが、プラセボ治療1か月後と2か月後にはそれぞれ33%と58%増加しました。
さらに、プラセボを投与された17名の患者のうち13名が、ざ瘡悪化のためイソトレチノインに切り替えました。
以前の用量反応研究では、すべての用量(0.1、0.5、および1 mg/kg/日)で有意な改善が示されました。
925名の患者を対象にした、標準イソトレチノインと、体に吸収されやすいように設計されたlidose-イソトレチノインを比較した2014年のRCTでは、標準イソトレチノインで治療した患者の81.0%で病変数が90%減少し、88.9%が治療開始20週後に治療成功を達成しました。
60人の患者を対象とした別のRCTでは、低用量イソトレチノイン(1日5mg)群は、治療開始16週後に対照群と比較して総病変数が少なかったです。
世界中のニキビ専門家の多くが、重度のニキビや瘢痕形成性ニキビ患者にはイソトレチノインが最も適切な治療選択肢であることに同意しています。
これらの特徴を合わせると、イソトレチノインの優れた有効性が示唆されます。
そのため、ワーキンググループは、重度のニキビ患者または経口または局所療法による標準治療が奏効しなかった患者におけるイソトレチノインの使用に関する適正実施基準を発表しました。
ニキビ関連の心理社会的負担および/または瘢痕を伴うニキビ患者は、イソトレチノイン治療の候補として考慮すべきであると述べられています。
イソトレチノインは、他の局所および経口療法に反応しない、または経口抗生物質の中止後に急速に再発する軽度から中等度のニキビの治療に広く使用されています。
イソトレチノインに関連する一般的な副作用は、粘膜皮膚、筋骨格系、および眼科系に関係しており、通常は標準的な治療コースでイソトレチノインを中止すると解消されます。
イソトレチノイン治療中の臨床検査モニタリングには、肝機能検査、空腹時脂質パネル、妊娠の可能性がある患者に対する妊娠検査が含まれ、全血球数モニタリングは含まれません。
5件のイソトレチノインコホート研究のデータでは、基準値を超える肝機能検査異常のリスクは0.8% ~ 10.4%の範囲で、0.9% ~ 4.7%で治療中止が必要であると推定されています。
6 件のイソトレチノインコホート研究のデータによると、高脂血症のリスクは7.1%~39.0%、異常コレステロール値のリスクは 6.8%~27.2%と推定されています。
2件のイソトレチノインコホート研究によると、軽度の正球性貧血リスクは0.4%、血小板異常のリスクは1.2%~2.9%、異常な白血球数のリスクは7.0%~10.8%と推定されています。
血球計算でグレード3以上の異常は認められませんでした。
26件の研究のメタ分析では、検査値異常が認められた患者の割合は低かったですが、最近の2022年の国際研究では、22人のニキビ専門家が、治療開始前およびイソトレチノインのピーク投与時に肝酵素ALTとトリグリセリドを検査し、血算、低密度リポタンパク質、高密度リポタンパク質は検査しないことで合意に達しました。
イソトレチノインで治療した患者の検査モニタリングに関するデータは批判的に評価されており、有害事象を検出するために検査モニタリングが有益であることを裏付ける証拠はほとんどありません。
妊娠の可能性がある人は、イソトレチノイン治療による避妊が必須です。
1982年に米国でイソトレチノインが導入されて以来、胎児の先天異常を招いたイソトレチノイン曝露妊娠の報告が数百件ありました。
iPLEDGEは、妊娠中のイソトレチノイン曝露を防ぐことを目的とした、現在FDAが義務付けているリスク評価およびリスク軽減戦略です。
イソトレチノインを投与されているすべての患者は、iPLEDGEに登録し遵守する必要があります。
iPLEDGEの定義によれば、妊娠できない患者には、子宮摘出および/または両卵巣摘出を受けた患者、閉経後の患者、または男性生殖器を持って生まれた患者が含まれます。
妊娠する可能性のある患者は、イソトレチノイン治療の少なくとも1か月前、治療中、治療後1か月間は完全な禁欲を遵守するか、指定された2つの避妊法を使用する必要があります。
iPLEDGEの実施以降も避妊要件の非遵守が原因で、米国では毎年約150件のイソトレチノイン曝露妊娠が発生し続けています。
非遵守を報告した性的に活動的な患者のうち、29%はコンドームの一貫した使用に従わず、39%は前月に1錠以上の避妊薬を飲み忘れていました。
イソトレチノインを投与されている妊娠の可能性がある患者は、診察のたびに、利用可能なさまざまな避妊法と iPLEDGEシステムの特定の要件について慎重にカウンセリングを受ける必要があります。
子宮内避妊器具や避妊インプラントなどの長期作用型の避妊具は、望まない妊娠のリスクを減らす上で経口避妊薬やコンドームよりも効果が高く、患者の継続的な努力に依存しないため、臨床的に適切である限り、主要な避妊法として検討されるべきと述べられています。
人口ベースの研究では、イソトレチノイン治療を受けているニキビ患者における神経精神疾患またはIBDのリスク増加は確認されていません。
7件の観察研究から得られた低いエビデンスの結論ですが、イソトレチノインの使用と潰瘍性大腸炎およびクローン病を含むIBDの発症率との有意な関連性を支持していません。
イソトレチノイン曝露群と非曝露群間のIBDの全体的なRiskRatioは1.13(95%信頼区間、0.89、1.43)と推定されています。
気分の変化、抑うつ、不安、自殺念慮、自殺既遂などの神経精神医学的副作用が、イソトレチノイン投与患者で散発的に報告されており、潜在的な因果関係を示唆している。
しかし、4件の観察研究による低いエビデンスの報告では、イソトレチノインの使用と神経精神医学的副作用の発生率との有意な関連性は支持されていません。
イソトレチノイン曝露群と非曝露群の間の神経精神医学的副作用の全体的な相対リスクは、0.88 (95% 信頼区間 0.77-1.00) と推定されています。
逆に複数の研究から、イソトレチノインは中等度から重度のにきび患者の生活の質を改善し、不安や抑うつの症状を軽減する可能性があることが示されており、これにより集団レベルで精神医学的副作用のリスクが軽減される可能性があります。
しかし、一般集団、特にイソトレチノイン療法の対象となる可能性のある青少年集団では、うつ病、不安、自殺念慮/自殺の有病率が高いため、臨床医は精神的副作用を監視し、イソトレチノインに対する反応の個人差に基づいて治療上の決定を個別に行う必要があります。
特に、米国予防サービスタスクフォースは、成人および12~18歳の青少年のうつ病のスクリーニングを推奨し、イソトレチノインへの曝露に関係なく 8~18 歳の青少年の不安のスクリーニングを推奨しています。
いずれもグレードBの推奨であり、このようなスクリーニングは良い効果をもたらすと中程度のエビデンスで結論付けています。
The Patient Health Questionnaire-2 and Patient Health Questionnaire-9(患者健康質問票2および9)は、イソトレチノイン治療によるうつ病スクリーニングの効率的で検証済みの手段として提案されています。
3 件のRCTから得られた低いエビデンスの報告に基づいて、イソトレチノインの間欠投与よりも連日投与を条件付きで推奨します。
33名の患者を対象とした2011年のRCTでは、24週時点で、毎日投与 (0.5-0.7 mg/kg/日) の方がイソトレチノインの間欠投与 (0.5-0.7 mg/kg/日を 4 週間のうち1週間) よりも、全般的なニキビグレーディングシステムスコア、炎症性病変数、非炎症性病変数の減少が大きいことが確認されました。
副作用による中止は、間欠投与よりも毎日投与で多く見られました (6.7%対 0%)。
1件の高いエビデンスの研究に基づき、標準イソトレチノインまたはリドース-イソトレチノインのいずれかを条件付きで推奨します。
標準イソトレチノインは高脂肪食と一緒に摂取した場合のバイオアベイラビリティが向上しますが、リドース-イソトレチノインのバイオアベイラビリティは食事と一緒に摂取するかどうかによる影響が少なくなります。
782 人の患者を対象としたRCT では、リドース-イソトレチノインは顔面および体幹の結節性病変の軽減、および20 週時点で全病変の90% 以上の軽減を達成した患者の割合において非劣性を示しました (76.9% vs 81.0%、RR、0.95 [0.88、1.02])。
副作用または治療中止に有意差は認められませんでした。
両方の製剤は、米国ではブランドジェネリック処方薬として入手可能です。
2016 年のニキビガイドラインでは、心血管リスク、骨の石灰化、瘢痕形成、およびS. aureusの定着など追加の潜在的な副作用が取り上げられました。
米国皮膚外科学会の専門家のコンセンサスでは、イソトレチノイン内服中または最近イソトレチノインを投与された患者に対して、脱毛レーザーや光脱毛、血管レーザー、および非アブレーションフラクショナルデバイスを含む、皮膚の浅い層におけるピーリングおよび非アブレーションレーザーによる治療を遅らせることを正当化する証拠が不十分であると結論付けられました。
顔全体の皮膚剥離、回転装置による機械的皮膚剥離、および顔全体または顔以外の領域のアブレーションレーザー治療は、有害事象のリスクが増加するため、イソトレチノイン使用後6か月以内は推奨されません
従来の用量(0.5mg~1.0mg/kg/日)と低用量(0.5 mg/kg/日未満)のイソトレチノイン療法、イソトレチノインと全身抗生物質(局所療法の有無にかかわらず)の比較、イソトレチノイン単独とイソトレチノインと局所薬剤との併用を直接比較するには、利用可能なエビデンスが不十分です。
正式な推奨を行うにはエビデンス不十分ですが、いくつかの小規模研究では、低用量療法は高用量療法と比較し、効果と再発率が同程度である可能性が示唆されています。
Physical modalities 〜物理的療法〜
検討された物理的療法には、ニキビ病変の除去、ケミカルピーリング、レーザーおよび光ベースの治療、マイクロニードルRF、および光線力学療法が含まれます。
ニキビ治療における、ニキビ病変/面皰抽出、ケミカルピーリング(グリコール酸、トリクロロ酢酸、サリチル酸、ジェスナー液、マンデル酸を含む)、レーザーおよび光ベースの機器(585~595 nmパルス色素レーザー、YAGレーザー、1450ダイオードレーザー、KTPレーザー、赤外発光ダイオード、635~670nm赤色光、420 nm青色光と660 nm赤色光の組み合わせ、589 nm/1319nmレーザー、またはIPLを含む)、マイクロニードルRF、またはアミノレブリン酸による光線力学療法の使用に関する推奨を作成するには、入手可能なエビデンスが不十分です。
1件の低いエビデンス研究に基づいて、条件付きでアダパレン0.3% ゲルに空気圧広帯域光を追加しないことを推奨します。
アダパレンに空気圧広帯域光を追加しても、ニキビ病変の数は減少せず、色素沈着および紫斑のリスクと関連していました。
1726nmレーザーは2022年にニキビ治療薬としてFDA の承認を受けましたが、RCTがないため、現在のガイドラインではそのエビデンスが評価されていません。
Complementary/alternative therapies 〜補完代替療法〜
検討された補完代替療法には、植物性または植物由来の薬剤およびビタミンが含まれます。
ニキビ治療のためのティーツリーオイル外用、緑茶の外用、ウィッチヘーゼル外用、パントテン酸内服、亜鉛の内服および外用、ナイアシンアミドの内服および外用に関する推奨を作成するには、入手可能なエビデンスが不十分です。
Diet 〜食事〜
低グリセミック負荷食(低糖質食)によるニキビ治療に関する入手可能なエビデンスは矛盾しているものがあります。
45人の患者を対象とした2010年のRCTでは、8週間の時点で、低グリセミック負荷食の方が高グリセミック負荷食よりも顔面ニキビスコアの大幅な低下が見られました。
次に、32人の韓国人患者を対象とした1件のRCT では、低グリセミック負荷食群で 12 週間の時点でリーズ改訂ニキビスコアの改善が見られましたが、コントロール群では改善が見られませんでした。
加えて、43人のオーストラリア人患者を対象としたRCT では、12週間の時点で、高グリセミック負荷食と比較して低グリセミック負荷食で総病変数の大幅な減少が見られました。
しかし、84人の患者を対象とした2019年のRCTでは、BP2.5%ジェルを開始する患者に低グリセミック食を追加しても、ニキビ病変数に有意な差は見られませんでした。
ニキビ治療における低乳製品食、低ホエイ食、オメガ3脂肪酸、チョコレートの使用に関する推奨を作成するには、入手可能なエビデンスが不十分です。
Gaps in research and study limitations 〜研究のギャップと限界〜
これらのガイドラインでは、ニキビにおける微生物学および内分泌学検査の使用、テトラサイクリン系抗生物質以外の全身抗生物質の使用、物理的療法、補完代替療法、ニキビ治療のための食事介入、およびニキビ治療の費用対効果に関する重要なエビデンスのギャップが特定されました。
長期追跡と比較効果研究を伴うRCT は、患者中心のニキビ治療を検討および比較するために必要です。
局所レチノイドと局所抗生物質の効果比較など、治療クラス内に複数の介入方法が存在するため、比較試験の使用を増やす必要があります。
スピロノラクトンとイソトレチノインを投与されている患者の、検査モニタリングの価値を最適化するための追加研究が必要です。
証拠が不十分なために推奨事項の作成の実行可能な候補とは見なされなかった介入と介入の比較のリストは、Mendeleyのページから入手できる補足表に記載されています。
多様な集団におけるニキビ管理をカスタマイズするには、ニキビ研究パイプラインに多様性、公平性、包摂性を組み込む必要があります。
女性、有色人種の患者、性的少数派の患者は、ニキビにより悩まされている可能性があります。
多くのニキビRCTでは、ホルモン療法に関連する避妊要件と除外基準が指定されています。
妊娠の可能性がある患者とLGBTQ +患者のニキビケアを最適化するために、将来のニキビ研究では、性別、性自認、性的指向に関する高品質の情報を収集し、避妊とホルモン療法の状況が異なる患者を含めることで実際のニキビ治療の効果を調べる必要があります。
妊娠と授乳の状況において、ニキビ治療の安全性と有効性に関する追加研究が必要です。
有色人種の患者は、ニキビによる色素沈着過剰やケロイド状瘢痕などのニキビの後遺症に不釣り合いに悩まされる可能性があり、臨床医はこれらを過小評価または十分に治療していない可能性があります。
ニキビ関連の色素沈着および瘢痕治療に関する系統的レビューは、このガイドラインの範囲外ですが、重要な研究領域です。
ニキビの早期治療に加えて、ニキビによる色素沈着過剰の一般的な治療法には、局所用レチノイド、アゼライン酸、ハイドロキノン、およびレーザーやケミカルピーリングなどの物理的療法があります。
ケロイド状瘢痕の一般的な治療法には、局所用シリコン、病巣内コルチコステロイド、またはレーザーがあります。
有色人種の皮膚におけるニキビに関する55件の研究の最近の系統的レビューでは、肌の色における治療戦略について明確な結論を導き出すことができませんでした。
研究対象の不足は、黒人、アフリカ系アメリカ人、アフリカ系カリブ系の患者で最も顕著でした。
ニキビのRCTの多様性を拡大することは、有色人種の皮膚を持つ患者のニキビ治療を検討する上で重要です。
このガイドラインは、実施時点で入手可能な最良のデータの分析に基づいて作成されています。
今後の研究により、現在の推奨事項の修正が必要になる場合があります。
研究の制限には、文献レビューを英語に限定するという決定が含まれており、これにより他の言語で公開された関連データが除外されている可能性があります。
推奨事項の格付け、評価、開発、および評価方法論を使用したレビューの範囲が広いため、分析にはRCTのみが含まれており、関連する長期追跡データが制限されている可能性があります。
Summary 〜まとめ〜
9つの臨床的質問に基づくこのシステマティックレビューのエビデンスを分析した結果、ニキビ治療に関する18のエビデンスに基づく推奨事項と 5 つの適正治療方針が導き出されました。
過酸化ベンゾイル、局所レチノイド、局所抗生物質、および経口ドキシサイクリンが強く推奨されています。
経口イソトレチノインは、精神的負担や瘢痕を引き起こしている、または標準的な経口または局所治療が奏効しない重度のニキビに強く推奨されます。
局所クラスコテロン、サリチル酸、アゼライン酸、および経口ミノサイクリン、サレサイクリン、複合経口避妊薬、およびスピロノラクトンについては条件付き推奨が下されています。
適正治療方針として、複数の作用機序による局所療法の併用、全身抗生物質の使用制限、内服抗菌薬と局所療法の併用、および大きなニキビ病変に対する病変内コルチコステロイドの注入が推奨されています。