【クマ取りの論文】下眼瞼のたるみとtear trough(ティアトラフ)に対する経結膜脂肪除去と切除脂肪移植の有効性

経結膜脂肪除去切除脂肪注入は、安全で効果的な方法であり、患者と医師の満足度が非常に高い”

*タイトル

Effectiveness of Transconjunctival Fat Removal and Resected Fat Grafting for Lower Eye Bag and Tear Trough Deformity

*著者、雑誌名、公開年

Hyung Su Kim, Chong Won Choi, Bo Ri Kim, Sang Woong Youn; JAMA Facial Plastic Surgery; 2019

この記事のポイント
  • 研究背景と目的
    目の下のクマ取りに対する施術では、脂肪除去から脂肪再配置(ハムラ法)へ技術が移行していますが、ハムラ法には瞼の外反リスクや目の運動障害リスクがあります。

    本研究は、脂肪除去に続けて切除脂肪を移植する方法が、安全かつ効果的な代替技術であるかを検証しました。
  • 方法と結果
    2011年から2017年の229例を対象に、経結膜脂肪除去+切除脂肪移植を実施。

    手術後、患者満足度は97.8%と高く、修正Goldbergスコアで目の下脂肪の突出やtear trough(ティアトラフ)の溝の改善が確認されました。
  • 考察と結論
    本手法は、施術に伴うリスクを減らしながら、手技習得も比較的容易で、患者と医師の満足度を両立しました。従来の目の下のクマ膨らみ治療の代替手段として有望と考えられます。

こんにちは!皆さん、目の下のふくらみを改善したいと思ったことはありますか?

目の下のふくらみに対する治療は、眼窩脂肪だけをとれば改善するものと皮膚のたるみや靭帯による皮膚の引き込みまで治療しないと効果が乏しいものがあります。

特に悩みとして多いのが、tear trough(ティアトラフ)という目の下内側の溝とその上に脂肪が突出しているパターンです。

今回紹介する2018年韓国の研究では、この目の下の膨らみと溝を同時に解消する画期的なアイデアを紹介しています。

200名以上を対象に調査して、合併症のリスクを減らしつつ、手技も簡単で満足度の高い方法が紹介されていますので、興味のある方はぜひご覧ください。

目次

研究背景

従来の目の下のクマ治療は、脂肪を取り除く方法が主流でした。

しかし、脂肪を取り除きすぎると、もともと脂肪があった目の下がくぼみ、不自然な印象になるリスクがあります。

最近では、脂肪を移動させるハムラ法、つまり目の下の脂肪を凹み部分に再配置する技術が注目されていますが、従来の施術と比べて術後合併症やダウンタイムの大きさが課題です。

本研究は、新しい代替技術として「経結膜脂肪除去」と「切除脂肪移植」が有効であるかを検証しました。

研究方法

韓国ソウルのクリニックで、2011年から2017年にわたり229人の患者(平均年齢41歳、71.6%が女性)を対象に、経結膜脂肪除去と切除脂肪移植を行いました。

手術手順は、まず経結膜的に眼窩脂肪を切除し、その切除した脂肪を細かく刻んで、ティアトラフなどの領域に移植するというものです

主要評価項目は、患者満足度および改変Goldbergスコアの術前・術後の変化でした

平均追跡期間は 6.45 か月 でした。

手術の効果を確認するため、手術前後の写真をもとに「修正Goldbergスコア」という指標を使用し、涙槽のくぼみや脂肪の膨らみ、皮膚の透明度などを評価しました。

手術方法

局所麻酔をして下眼瞼縁5mm下の結膜にCO2レーザーを使用して切開を行った。

眼窩下脂肪に向かい剥離をすすめ眼窩脂肪を露出させた後、眼球に軽く圧力をかけ、切開部から突出している脂肪をCO2レーザーで切除。

切除した脂肪は直ちに生理食塩水に浸し、ハサミで細かく切り刻んで脂肪注入用の1mLルアーロックシリンジに移した。

ティアトラフ溝の外側とゴルゴラインの延長線上に注入口を作成し、Tulip 0.9 mm鈍先端インジェクター(Tulip Medical Inc)を使用して、眼輪筋と眼窩下隔膜の間のスペースに脂肪を注入。

眼輪筋が透けてみえる青クマの方は、眼輪筋と皮膚の間にさらに脂肪を注入。

術後最初の 48 時間は、耐えられる範囲で冷湿布を使用。

A, B:切除した脂肪を細かく刻む
C:脂肪を脂肪注入用の1mLロックシリンジに移す
D:脂肪を眼輪筋と眼窩下隔膜の間の空間に注入します。

研究結果

研究の結果、合計 224 人の患者 (97.8%) が手術結果に満足しました。

内訳で言うと、68 人 (29.7%) が非常に満足、156 人 (68.1%) が満足と回答しています。

懸念を示した患者はわずか5名 (2.2%) でした。

修正Goldbergスコアでは、脂肪の膨らみ(1.94→0.07)、涙槽のくぼみ(1.61→0.33)、皮膚の透明度(1.15→0.22)などが大幅に改善しました。

一方、皮膚弾性のスコアは0.66から1.05に低下し、目周りのシワがわずかに悪化しました。

合併症については、合併症率の増加は見られなかったと報告されています。

局所合併症として、下眼瞼の色素沈着(37.6%)、皮下硬化または触知可能な結節(約3分の1に見られ、そのうち3.0%が1ヶ月以上持続)、眼輪筋痙攣(1.3%)、眼窩周囲の凹み(3.0%)、充血、熱傷、眼瞼外反(1例)などが記録されています。

これらの多くは一過性で自然に改善しました

Changes in the Mean Modified Goldberg Scores After Transconjunctival Fat Removal and Resected Grafting
(経結膜脂肪除去+切除脂肪移植後の平均修正ゴールドバーグスコアの変化)

結論と考察

論文ではこの手法の利点として、

中顔面の組織を障害しないため、脂肪再配置術にみられる拘縮などのリスクがないこと

比較的習得・実施が容易であること

眼窩脂肪切除と移植を同時に行うため簡便であること

薄く透明な皮膚の下の血管が見えるタイプのクマ(紫くま)や中顔面の増強にも対応できること

などが挙げられています。

リスクとしては、

皮膚のシワが悪化する可能性があり、特に高齢患者では追加治療が必要となる場合があること

眼輪筋肥大との鑑別の重要性

移植脂肪の吸収率の問題(細かく刻んだ脂肪の生着率は今後の研究が必要)

が述べられています。

また、研究自体の限界として、多くの患者で追跡期間が短いこと、他の手術手法との直接比較がないこと、客観的評価における主観性の介在などが挙げられています。

結論として、この研究は経結膜的眼窩脂肪切除および切除脂肪移植術が、下眼瞼の脂肪ヘルニア治療において、合併症率を増加させることなく有効かつ安全な手法であり、

高い患者満足度および術者満足度が得られることを示唆しており、くま治療の外科的選択肢として検討されるべきであると結論づけています

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この記事を書いた人

監修者:mio 〜美容のせんせい〜

美容皮膚科・美容外科を専門とする現役医師。4年以上にわたり、都内や地方都市の美容クリニックで美肌治療やリフトアップ施術を担当。論文ベースの確かな情報をもとに、読者が安心して美容医療を選べるよう発信しています。

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