“萎縮性ニキビ瘢痕の治療において、普遍的な施術はなく、タイプ別に最適な治療を選択すべきである。”
*タイトル
“A Comprehensive Review of Non-Energy-Based Treatments for Atrophic Acne Scarring“
*著者、雑誌名、公開年
著者:Curtis Tam, Jeffrey Khong, Kevin Tam, Ruslan Vasilev, Wesley Wu, Salar Hazany
雑誌名:Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology
公開年:2022年
- 研究背景と目的
萎縮性ニキビ瘢痕は、特に若年成人に多く見られ、心理的・身体的な影響が長期間続くことがある。
本論文では、非エネルギーベースの治療法(ケミカルピーリング、マイクロニードリング、フィラー注入など)の効果と最近の進展を包括的にレビューしている。
- 方法と結果
多様な非エネルギーベース治療法をPubMedを用いて調査し、各治療法が特定の瘢痕タイプ(アイスピック型、ボックスカー型、ローリング型)にどの程度有効かを評価した。
単独療法では限界があり、複数の治療法を組み合わせることで効果が向上する傾向が見られた。
- 考察と結論
非エネルギーベース治療法は、それぞれ特定の瘢痕タイプに対して効果的だが、万能な解決策は存在しない。
患者ごとの瘢痕の特性や治療目標に応じた個別の治療プランが重要であり、今後さらなる研究と臨床的知見の蓄積が求められる。
こんにちは!皆さん、ニキビ跡に悩んだことはありますか?
ニキビが続くことでできるニキビ跡は、治療に時間がかかることが多く、
治療方法も様々あるのでどれをすべきか悩みますよね。
そこで今回は、2022年に発表されたアメリカのニキビ跡治療研究を紹介します。
結論としては、ニキビ跡のタイプによって最適な治療は異なるということです。
- アイスピック型 → ケミカルピーリング(CROSS法)が最適
- 深いボックスカー型 → パンチ法が最適
- 浅いボックスカー型 → ケミカルピーリング、ダーマブレーション、サブシジョン、マイクロニードリング、フィラー注入がバランス良く効果あり
- ローリング型 → サブシジョン、フィラー注入が最適
下の図がニキビ跡タイプと施術の有効性をまとめた図ですが、もっと詳しく知りたい人は本文を読んでみてください。
研究背景 〜ニキビ跡の種類を知る〜
ニキビは思春期に多くの人が経験する皮膚疾患ですが、その後に残る「ニキビ跡(萎縮性瘢痕)」は、多くの人に心理的・身体的な負担を与え続けます。
特に、「アイスピック型(下図A)」「ボックスカー型(下図B)」「ローリング型(下図C)」といった異なるタイプの萎縮性瘢痕は、それぞれ異なる特徴を持ち、一つの治療法ですべてに対応するのは難しいとされています。
本論文では、レーザーやエネルギーデバイスを使わない「非エネルギーベース治療法」(ケミカルピーリング、マイクロニードリング、サブシジョン、フェイラー注入など)に焦点を当て、
近年の研究成果や効果的な組み合わせ治療法について包括的にレビューしています。
尋常性ざ瘡の発症は、毛包の過角化と毛包脂腺単位 (PSU) におけるアンドロゲンを介した皮脂の過剰産生から始まります。
過剰な皮脂の存在は、 PSUにおけるプロピオニバクテリウム アクネスの増殖に寄与し、瘢痕化につながる可能性のある強力な炎症反応を引き起こします。
瘢痕化は、炎症反応の強さと期間、および細胞外マトリックスリモデリング (ECM) プロセス中のマトリックスメタロプロテアーゼ (MMP) とMMPの組織阻害剤 (TIMP) の比率に大きく影響されます。
具体的には、TIMPとMMPの比率が増加すると、治癒過程におけるコラーゲン合成が弱まり、萎縮性瘢痕の形成につながります。一方、その逆の場合は、肥厚性瘢痕またはケロイド瘢痕の形成につながります。
萎縮性瘢痕でもっとも多いのがアイスピック瘢痕 (約60%) で、続いてボックスカー瘢痕 (約 25%)、ローリング瘢痕 (約 15%) と言われています。
萎縮性ニキビ瘢痕のさまざまなタイプの中で、アイスピック瘢痕は治療が最も難しいことで知られています。
アイスピック瘢痕は、皮膚に垂直に「V 字型」に陥没し、真皮の全層を貫通する幅2mm未満の陥没です。
ボックスカー瘢痕は、垂直な壁面と平らな底を有する円形の陥没で、直径1~4mm、深さは0.1~0.5 mmです。
ローリング瘢痕は直径が最も大きく(4~6mm)、より浅い瘢痕です。
ニキビ跡治療 〜非エネルギーベースの治療法〜
ケミカルピーリング
浅層および中層ピーリングは、浸透深度が限られているため、軽度の萎縮性瘢痕またはニキビ関連の色素沈着に効果は限定されています。
深い萎縮性瘢痕、特にアイスピック瘢痕の治療には、真皮網状層中層まで浸透できる TCA (>50%) などの強力なピーリングが必要です。
強力なピーリング剤を皮膚に塗布すると、特徴的な白い霜のようなものが現れ、タンパク質沈殿と凝固壊死の始まりを示します。
治療後数日で、皮膚の壊死層が剥がれ、治療部位は周囲の健康な皮膚によって再上皮化されます。
近年、化学的皮膚瘢痕再構築法(chemical reconstruction of skin scarring, CROSS) と呼ばれる新しいピーリング技術が使用されています。
これは、深層ピーリングを個々の瘢痕に最適な量でピンポイントに塗布することで、顔全体に塗布した場合に起こる瘢痕や色素沈着のリスクが軽減されています。
CROSS法では、爪楊枝や針などの鋭利な塗布器具を使用して、周囲の健康な皮膚を傷つけずに、傷のみにピーリング剤を塗布します。
現在、CROSS法に用いられるピーリング剤として、TCA(トリクロロ酢酸)が最も人気があります。
公開されたデータによると、ニキビ跡の改善の程度は、塗布されたTCAの濃度と正の相関関係にあることが示されています。
しかし、複数の研究で、50%程度の比較的低い濃度を含め、幅広い濃度のTCAで、合併症を比較的少なくニキビ跡の外観を大幅に改善できることが示されています。
フェノールは、CROSS 治療で最近好まれるようになったもう1つの深層ケミカルピーリングです。
現在、市販されているピーリングの中で最も深層まで到達し、最もリスクが高いと考えられています。
フェノールピーリングを顔全体に塗布すると、全身毒性、不整脈、腎臓および肝臓の障害、瘢痕形成、および長期の色素沈着を引き起こす可能性があります。
ただし、CROSSテクニックを使用した場合、フェノールによるこれらの合併症はまだ報告されていません。
興味深いことに、Dalpizzolらによる比較研究で、88% フェノールがTCAの実行可能な代替手段になることができ、
フェノールはニキビ跡の外観を軽減するのにTCAと同等の効果があることがわかりました。
さらに、この研究でTCAで治療された数人の患者で副作用としてニキビ跡の拡大が観察されましたが、フェノールでは起こりませんでした。
今後の研究では、これらの有害な結果が本当にケミカルピーリングの成分の違いによるものなのか、それとも塗布精度の違いによるものなのかを判断する必要があります。
ダーマブレーション
ダーマブレーションは、電動ワイヤーブラシまたはダイヤモンドフライスを使用して皮膚の外層を機械的に除去する外科的な皮膚再生処置です。
時間の経過とともに、残存した皮膚の構造によって再上皮化および真皮コラーゲン形成が起こり、より滑らかな肌が得られます。
ダーマブレーションは、皮膚の除去が真皮網状層レベルを超えないように設計されているため、ニキビ跡のうち皮膚表面のローリング瘢痕やボックスカー瘢痕に効果的ですが、深いアイスピック瘢痕に対する臨床的改善はあまり期待できません。
ダーマブレーションは1回の施術でニキビ跡の改善効果が期待できますが、皮膚剥離を真皮網状層までにとどめないと瘢痕形成のリスクがあります。
ダーマブレーションに関連する合併症、特に術後の持続的な疼痛、紅斑、長期の色素沈着についての報告は数多くあります。
Rubensteinらは、研究でダーマブレーションを受ける前に経口イソトレチノインを最近使用した 6 人の患者にケロイド瘢痕が生じたと報告しています。
しかし興味深いことに、別の研究では、経口イソトレチノインを服用しながら皮膚剥離術を受けた7人の患者に、6 か月および12か月の追跡評価で肥厚性瘢痕は見られませんでした。
経口イソトレチノインの最近の使用がダーマブレーションの禁忌であるかどうかは不明ですが、患者の投薬歴を確認することは依然として重要な考慮事項です。
ダーマブレーションは、ニキビ跡の治療に今でもシンプルで効果的な技術と考えられています。
しかし、多くの欠点があり、重度のニキビ跡の適応となることは少ないため、徐々に他の治療法に取って代わられてきました。
マイクロダーマブレーション
マイクロダーマブレーションは、アルミニウム酸化物結晶を表皮に擦り付けて皮膚を剥離する簡単な外来処置です。
角質層〜真皮乳頭層まで、皮膚への侵襲少なくかつ穏やかに除去するため、軽めのケミカルピーリングに似ています。
20%グリコール酸ピーリングとマイクロダーマブレーションの有効性を比較したスプリットフェイス研究では、
2つの治療法の間に有意差はなく、大きな改善は見られませんでした。
サブシジョン
サブシジョンは、1995年にオレントリヒによって発明されました。
彼らはこの手術を、注射針を皮膚の下に挿入し、扇のように動かす手技であると説明しました。
これにより、ニキビ跡の瘢痕を皮下組織につなぎとめている線維が分断し、瘢痕をその下の組織から効果的に解放します。
その結果、サブシジョン層の間に血栓が形成され、線維化により新しい組織が形成され、瘢痕部分の皮膚が持ち上がります。
サブシジョンは、多くの患者でローリング型のニキビ瘢痕を改善することが一貫して示されており、
Goodman and Baron Qualitative grading systemなどのニキビ瘢痕スコア評価スケールを使用したいくつもの研究で、100%の成功率が報告されています。
一方、サブシジョン単独ではボックスカー瘢痕には効果が乏しく、アイスピック瘢痕にはほとんど効果がないことが証明されています。
サブシジョンと他のニキビ跡治療の組み合わせで、ニキビ跡改善の相乗効果をもたらすとの意見があります。
理由の一つとして、サブシジョンをして時間がたつと、真皮と皮下層の結合が再発して瘢痕改善効果が減弱することが挙げられます。
昔の興味深いスプリットフェイス研究では、サブシジョンしたニキビ跡の下に吸収性外科用縫合糸を挿入してコラーゲン新生をさらに促進しましたが、有意な追加改善は得られませんでした。
別の研究では、サブシジョンと他の手技、特に皮膚に陰圧をかける吸引を組み合わせると、サブシジョン後の結果が改善されることが示されました。
あるスプリットフェイスランダム化比較試験 (RCT) では、サブシジョンの後にクライオローリングを行った側は、サブシジョンの後にダーマローラーを行った側よりも大幅に改善したと報告しました。
最近の研究では、サブシジョン後に50%TCAを塗布すると、患者に好ましい結果が得られたり、
サブシジョンとマイクロニードリング、多血小板血漿 (PRP)、またはその両方を組み合わせると、ニキビ跡の外観が相乗的に軽減されました。
興味深いことに、2019年の研究によるとPRPの併用はサブシジョンの結果を向上させるだけでなく、合併症率も低下させるようでした。
一般的に、サブシジョンは外来で簡単に実行できる効果的な外科手術です。
他のさまざまな治療法と組み合わせることができ、ローリング瘢痕やボックスカー瘢痕に悩む患者にとって優れた選択肢となるでしょう。
マイクロニードリング
マイクロニードリングは、多数の針で皮膚に小さな穴を何百個もあけ、皮膚の若返りを促します。
21世紀初頭に発明されたこの方法は、ニキビ跡などの瘢痕だけでなく、小じわやしみ、その他の加齢に伴う皮膚疾患の治療にも広く使用されています。
多くの組織学的研究で、治療後数日から数週間で、表皮の厚さの増加、エラスチンとコラーゲンの形成促進、さまざまな再生成長因子の放出が報告されています。
比較的単純で、ダウンタイムが短く、合併症率が低いため、マイクロニードリングはニキビ跡の実用的かつ効果的な治療法として多く用いられてきました。
単独療法として、マイクロニードリングはローリング瘢痕、次いでボックスカー瘢痕、アイスピック瘢痕に効果的であることが示されています。
ほとんどの研究では、アイスピック瘢痕の改善はごくわずかですが、Guptaらによる研究ではアイスピック瘢痕に若干の有意な改善が見られました。
著者らは、2.0mm針ダーマローラーを用いた深めの刺激が、この改善効果をもたらした可能性があると示唆しました。
マイクロニードリングは効果的に皮膚の奥へ有効成分を伝達させる手段でもあるため、PRP療法と組み合わせて研究されることが一般的に行われます。
しかし、多数のRCTでこの併用療法に関する結果はまちまちで、PRPの追加により有効性が大幅に向上したと報告しているものもあれば、最近の研究では有意差がまったくないと報告しているものもあります。
PRPの代替手段も長年にわたって研究されてきました。
局所インスリンの使用は、マイクロニードリングと組み合わせた場合、PRPよりも効果的であることが示され、ボックスカー瘢痕において有意に優れた反応を示しました。
また、さまざまな研究で、マイクロニードリングとTCA やグリコール酸などのケミカルピーリングを組み合わせると、患者の転帰が改善されたことが示されています。
El-Domyatiらは、TCA とマイクロニードリングで治療した皮膚では表皮の厚さの増加が特に顕著であったのに対し、PRPはコラーゲンとエラスチンの生成をよりよく増強するようだと述べています。
パンチ法(くり抜き手術)
ニキビ跡のパンチ法による治療では、円形の刃を皮膚から皮下組織まで挿入し、組織をくり抜きます。
くり抜いた組織は、除去するか、皮膚移植で置き換えるか、挙上することで組織を周囲の健康な皮膚まで持ち上げて隆起させることができます。
パンチ法は皮下脂肪まで貫通するため、マイクロニードリングやサブシジョンなどの治療法では対処が難しい深いアイスピック瘢痕やボックスカー瘢痕に特に有効です。
パンチ切除によって生じる 2 ~ 3 mm の穴は、縫合糸で閉じられます。
くり抜かれた組織が3~3.5mm を超える場合は、目立つ傷跡の形成を防ぐために、傷跡になりにくい楕円形での閉鎖法またはパンチ挙上を行う必要があります。
複数のニキビ跡を同時に切除できますが、縫合での修復後に過剰な皮膚張力が発生しないように、少なくとも4~5mmの間隔を空けて切除することをお勧めします。
最後に、パンチ挙上法は、組織を完全に切除するのではなく、円筒状の組織を挙上するパンチ技術です。
このテクニックは、平らな底面を持つボックスカー瘢痕に対して最良の結果をもたらします。
デメリットとしては、挙上した部分が引っ込んでパンチされた組織の縁の周りの治癒を妨げ、目立つリング状の瘢痕を残す可能性があることです。
パンチ法は、他の治療法では治らない深いアイスピック瘢痕やボックスカー瘢痕に特に有効で、最後の手段として使用されます。
補助療法として使用されるレーザー技術を除けば、この分野では最近の進歩はあまり見られません。
フィラー注入
フィラー注入は、萎縮性ニキビ跡のある患者にとって人気のある治療の選択肢です。
フィラーの種類とブランドは多岐にわたりますが、その持続性によって大まかに、短期持続性(一時的)、半永久的、または長期持続性(永久的)と分類できます。
短期持続フィラー
フィラーの持続性が異なるのは、その生分解性によるものです。
たとえば、ヒアルロン酸 (HA) は、体内でヒアルロニダーゼによって自然に分解される、生分解性の高い物質として知られています。
現代の技術の進歩により、架橋によってヒアルロン酸が安定化され、持続性が6か月ほどから18 か月以上に延長されました。
ヒアルロン酸は、単相性(uniform mix of low-molecular-weight and high-molecular-weight HA) または二相性(cross-linked HA in non-crosslinked HA suspension)に分類できます。
ある研究では、フラクショナルレーザーリサーフェシングを2~5回行った後でもアイスピック瘢痕が残存していた患者に、二相性HAの注射を行ったところ、高い患者満足度スコアが得られました。
別の研究で、空気圧式インジェクターを使用して2人の患者に単相性HAを注射したところ、各患者でニキビ跡グレード1段階の改善が見られました。
興味深いことに、二相性フィラーはヒアルロニダーゼ分解に対する耐性が高いことが示されていますが、単相性フィラーの方がボリュームアップ効果が高いことが示されています。
もう一つの短期持続性フィラーは、コラーゲン注入です。
注入コラーゲンは豚または牛由来で、ニキビ跡によるボリュームロスを回復するために真皮深層に直接注入されます。
コラーゲン注入剤の欠点は、アレルギー誘発性があることで、注入の数週間前に患者ごとにテストする必要があります。
半永久・永久フィラー
ポリ-L-乳酸(PLLA)は、半永久的な治療効果を得るための、人気のある注入剤の一つです。
線維芽細胞を直接刺激して真皮でコラーゲンを合成することで作用を発揮し、結果は注入後すぐには現れず、最適なコラーゲン生成とECMリモデリングには数週間から数ヶ月かかります。
効果は約24ヶ月持続すると報告されていますが、カナダの症例報告では、PLLAを使用したローリング型ニキビ跡の修正は最大4年間維持できることが示されています。
PLLAは2, 4, 6か月の追跡調査でウシコラーゲンよりも効果的なフィラーであることが証明されており、患者の満足度が高く、アレルギーテストの必要がないです。
ただし、PLLAもやはり他のフィラーと同様にアイスピック瘢痕の改善効果はごくわずかです。
PLLAのデメリットとしては、陥凹のない正常皮膚に注入された場合、しこりや膨らみになる可能性があります。
カルシウムヒドロキシアパタイト (CaHA) は、PLLAと同様にコラーゲンの生成と線維組織の形成を刺激する半永久的な生体刺激性のフィラーです。
CaHAフィラーはカルボキシメチルセルロースゲルに懸濁したマイクロスフィアで構成されています。
注入すると、ゲルキャリアは急速に分解され、残ったマイクロスフィアが即座にボリュームを補充することができます。
重要なのは、線維芽細胞の活性化によって長期的なボリューム回復が達成され、最大24か月またはそれ以上コラーゲンの生成が促されることです。
ある研究では、ニキビ跡の患者10人中9人に0.1~0.3 mLのCaHA フィラーが注入され、12 か月の追跡評価でローリング瘢痕が50%以上改善しました。
他のフィラーで観察されたのと同様に、アイスピック瘢痕には改善が見られませんでした。
効果が永久的に続くと言われるフィラーとして、ポリメチルメタクリレート (PMMA) フィラーがあります。
ポリメチルメタクリレートは非生分解性の合成ポリマーで、もともとは歯科および眼科インプラント用に設計されましたが、後に軟部組織増強用に改良されました。
以前は、PMMA注入剤には不均一な微小粒子のサイズや微細な不純物が含まれていたため、肉芽腫の形成率が2.5%もありましたが、精製の手順が厳格化されてニキビ跡患者の治療成果が向上しました。
現在、最も一般的に使用されているPMMAフィラーは、牛由来のコラーゲンとリドカインに懸濁した20%PMMAで構成されています。
この PMMAフィラーのニキビ跡に対する有効性をテストした最新の臨床試験では、97人の患者のうち67人に大幅なニキビ跡改善が見られました。
別の研究では、同じフィラーの患者満足度は90%もありました。
それぞれ12か月および7か月の追跡調査で肉芽腫形成は報告されませんでした。
しかし、肉芽腫は遅れて発生することが知られているため、このPMMAフィラーの安全性プロファイルをより適切に評価するには、より長期の追跡調査が必要です。
スレッドリフト(糸リフト)
スレッドリフトは、長いとげのある縫合糸を皮下に挿入して引き上げる、外科手術を伴わないシンプルなフェイスリフト処置です。
皮膚のたるみがリフトアップされるだけでなく、糸の周りで線維芽細胞が活性化し、コラーゲンの合成が促されます。
現在、スレッドリフトのニキビ跡治療への応用について議論している研究は1件しかありません。
この2021年のイタリアの研究では、Donnarummaらが吸収性ポリジオキサノン (PDO) のコグ付き糸を使用して、主にボックスカー瘢痕を持つ 5 人の患者にスレッドリフト手術を実施しました。
2人の患者で改善スコア 2 (「非常に改善」)、3 人の患者でスコア 3 (「改善」) を報告しました。
特筆すべき有害事象は見られませんでしたが、スレッドリフトのニキビ跡治療効果を評価するには、さらなる研究が必要です。
結論と考察 〜ニキビ跡の種類に適した施術を〜
ニキビ跡の治療は、今日に至るまで医師にとって大きな課題となっています。
利用可能な治療法を詳しく分析すると、瘢痕の種類は、評価する際に考慮すべき最も重要な要素の1つであることがわかります。
ローリング瘢痕については、ケミカルピーリング、マイクロニードリング、フィラーによって瘢痕の外観が著しく改善されることが発表データで示されています。
しかし、ローリング瘢痕の根本的な原因、つまり真皮を皮下組織層からひっぱり凹ませる線維に対処するには、サブシジョンが唯一のアプローチです。
サブシジョンを前述の治療と組み合わせると、サブシジョンの効果をさらに高め、治療回数を少なくすることができます。
逆に、ボックスカー瘢痕とアイスピック瘢痕は、どちらも真皮と皮下組織の間に線維による固定がないため、サブシジョンに対する反応性が低いです。
浅いボックスカー瘢痕は、表皮と真皮乳頭層上部をターゲットとするケミカルピーリング、マイクロダーマブレーション、マイクロニードリングで改善効果を得られます。
アイスピック瘢痕は特に治療が難しく、文献のレビューによると、最も一貫性があり成功する臨床結果は、TCAまたはフェノールによるCROSS法の複数セッションで達成されることがわかっています。
さらに、真皮深部〜皮下組織に達する深いボックスカー瘢痕とアイスピック瘢痕の重症例では、萎縮性瘢痕を目立ちにくい線状の瘢痕に置き換えるパンチ法などのアプローチが必要になります。
このレビューで議論されている無数の研究で見られるように、ニキビ跡の普遍的な治療法はありません。
この研究の限界として、多くの治療法が異なる研究デザインや評価基準で行われているため、直接的な比較が難しい点が指摘されています。
また、サンプルサイズが小規模であったり、長期的な追跡調査が不足しているケースも存在するため、今後のさらなる研究が必要とされています。