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【糸リフトの論文】ほうれい線とマリオネットラインを上げる糸リフトの入れ方を紹介!2024年韓国の報告

逆行性および順行性ベクトルを活用したスレッドリフト技術は、ほうれい線とマリオネットラインの改善に効果的である”

*タイトル

“Reverse and Antegrade Vector Thread Lifting Techniques: Correcting Nasolabial and Marionette Lines”

*著者、雑誌名、公開年

Soo Yeon Park et al., Journal of Cosmetic Dermatology, 2024

この記事のポイント
  • 研究背景と目的
    ほうれい線(鼻唇溝)マリオネットラインの改善を目的に、糸リフト技術の効果を向上させるため、


    逆行性および順行性ベクトルを用いた新しい手法が検討されました。
  • 方法と結果
    3人の女性患者を対象に、ポリジオキサノン(PDO)スレッドを用いた施術を行い、


    糸の引き上げ方向適したスレッドを組み合わせた結果、各患者で大幅な改善が見られました。
  • 考察と結論
    スレッドの素材に加えて、効果的なリフト技術を患者の顔の特性に合わせて調整することが、


    持続的な効果と安全性を実現するために重要である

糸リフトという美容施術を聞いたことはありますか?

糸リフト(Thread Lift)とは、顔や首などのたるみを引き上げる美容施術の一つです。

特殊な医療用の糸皮膚の下に挿入して、リフトアップ効果を得る方法で、メスを使わないため「切らないリフトアップ」とも呼ばれています。

ただ、糸リフトは施術する先生によって入れ方も違いますし、失敗例もSNSなどで多くみられますよね。

どのように糸が入ってどこが引き上がるのか気になると思います。

今回は、悩んでいる方の多い、ほうれい線とマリオネットラインの改善方法について、2024年韓国の研究を紹介していきます。

施術を受ける人施術をするドクターにとっても興味深い内容だと思いますので、ぜひご覧ください。

目次

研究背景 〜糸リフトで効果を出すには〜

しわやたるみの治療として糸リフト(スレッドリフト)が注目されています。

糸リフトの効果に関わる要素は、大きく分けて、

①糸そのもののポテンシャル

②施術者の技術

③施術を受ける側の肌状態

の三つの要素が関わってきます。

糸リフトに使用する糸の組成と太さは、リフトアップ効果と効果の維持期間を決定する上で極めて重要な役割を果たします。

歴史的には、ポリプロピレン (PP) を含む非吸収性の糸がこのような手術に広く使用されていました。

しかし、現代の医療現場では、ポリジオキサノン (PDO) という成分をつかった糸が、効果を認められ主流になりつつあります。

さらに、ポリL乳酸 (PLLA)ポリカプロラクトン (PCL) などの材料から作られた糸も、多様なニーズに合わせて使われるようになっています。

PDO糸は吸収性糸の中でも引張強度に優れ分解持続期間が 6 か月以上と比較的長いことから好まれ、広く使用されています。

PDO糸の組成は弾力性に影響し、糸の太さ引き上げ強度の維持に極めて重要な役割を果たします。

さらに、コグという皮膚に引っかかるトゲトゲ部分がついている糸では、糸のバーブ (コグ) の数とサイズがリフティング効果に大きく影響するため、バーブの組成、太さ、形状、サイズにより糸の効果に多様性をもたらします。

包装されたリフトの糸を開封すると、周囲の湿気にさらされることで分解プロセスが引き起こされます。

肉眼ではすぐには見えませんが、糸は湿気に触れると徐々に劣化します。

臨床の場面では、開封されたことのない古い製品を使用する場合、開封後すぐに劣化が始まって糸が切れることがあります。

糸の成分・品質は類似しているにもかかわらず、厳密な管理を受けていない製品は、製造の最終段階で周囲の湿気にさらされている可能性があります。

その結果、糸の効力と寿命の両方が低下してしまうのです。

ヤング率は弾性率とも呼ばれ、弾性体の長さが加えられた応力に対してどのように変化するかを示す係数を表します(図1)

弾性率が高いということは、硬くて圧縮されにくい素材であり、修復能力が高いことを意味します。

弾性率は、PDO、PLLA、PCL などの糸の組成だけで決まるのではなく、製造プロセスによっても異なります。

弾性率の高い糸を使用すると、最初は優れたリフトアップ効果が得られますが、筋肉や組織が動くと異物感を引き起こす可能性があります。

逆に、弾性率の低い糸を使用すると、顔の動きや表情の不快感は最小限に抑えられますが、リフトアップ効果が弱まる可能性があります。

糸リフト手術の持続性は、アンカーと固定部位、および使用される糸の材料組成など様々なものの影響を受けています。

ほうれい線(鼻から口元にかけての深いしわ)マリオネットライン(口角から下に伸びるライン)は、改善を希望する人が多く、リフトアップに高い技術が求められます。

本研究では、先に概説した基本原理を拡張し、一般的に使用されている糸を使用したリフトアップを、ほうれい線やマリオネットラインの改善にどのように適用できるかを紹介します。

新しい「逆行性」および「順行性」のスレッド挿入技術を用いて、施術の精度と効果を向上させることを目的としています。

図1:ヤング率は弾性率とも呼ばれ、加えられた応力に応じて弾性物体の長さがどれだけ変化するかを示す尺度

研究方法 〜女性3名を対象に効果を観察〜

43歳、48歳、53歳の女性3名を対象に糸リフトの施術を行いました。

使用したスレッドは、ポリジオキサノン(PDO)素材で、挿入方向やスレッドの形状(バーブ付きなど)を個々の顔の構造に合わせて調整しました。

また、挿入方法には「クリスクロステクニック」や「リバーステクニック」を用い、効果の向上及び持続力が高まる仕組みを考えました。

対象者

• 女性3名(43歳、48歳、53歳)

• 主な施術部位:鼻唇溝(nasolabial fold)とマリオネットライン(marionette line)

• 患者ごとに異なるスレッドの種類と挿入パターンを採用

施術詳細

1. スレッドの種類

• 使用されたスレッドは**ポリジオキサノン(PDO)**製で、長さは6~10cm。

バーブ付き(トゲ付き)スレッドで、組織を引き上げるための引っ掛かりを提供。

多方向(bidirectional)および逆行性(reverse vector)パターンで挿入。

2. 挿入方法

クリスクロステクニック: 異なる挿入口からスレッドを交差させて挿入することで、組織間に繊維状の構造を形成。これにより、引き上げ効果の持続性が向上する。(下図A)

リバーステクニック: 頬骨部(zygomatic arch)を起点に、髪の生え際方向(temple hairline)へ向けて、顔の下から上方向にスレッドを挿入する(図2B)。刺入点を目尻近くにすると吊り目になってしまうので注意が必要。

(図2C)の方法では、組織をこめかみの生え際にひっぱり、上向き方法の組織の移動を可能にする。方法で糸を挿入する際は、浅側頭筋膜を使用して糸を固定し、血管や神経のある空間より上にカニューレを通すことで合併症が起こらないようにする。

図2:糸をクロスするように挿入することで繊維構造に似た支えを構築する。

施術症例の紹介

施術後、3名全員でほうれい線とマリオネットラインの深さが大幅に改善されました。

患者1(43歳) ほうれい線の改善

図3

43 歳の女性患者、マリオネットラインを気にして来院。長さ10 cmの双方向糸 (Epiticon BI、Jetema Inc.、韓国) を使用し、両側に 4 本ずつ、合計8 本の糸をクリスクロステクニックで挿入。上の画像は、施術直前の患者の様子 (A) と施術 1 か月後の様子 (B)

患者2(48歳) マリオネットラインの改善

図4

48 歳の女性患者が、頬の脂肪のたるみ、マリオネットライン、ほうれい線を気にして来院。耳珠に挿入ポイントを指定し、長さ 8 cmの多方向および双方向スレッド (Epiticon Original および BI) を2本、ほうれい線とマリオネット ラインの方向に挿入(図4B+C)。顔の両側に合計 8 本のスレッドを使用。

耳珠と頬の境界にカニューレを正確に挿入し、SMAS 上の浅い脂肪層をターゲットにカニューレをすすめて糸を留置する。

患者3(48歳) ほうれい線の改善

図5

ほうれい線が気になる53歳女性。ほうれい線の上に3つのエントリーポイントをマークし、長さ8cmの双方向糸(Epiticon BI、Jetema Inc.、韓国)をリフトアップのために逆方向に挿入(図4D)。合計6本の糸が使用され、画像は施術直前(A)と施術1か月後(B)

糸の固定点として、眼窩縁の外側眼窩肥厚部に固定することが望ましいです。糸の挿入は、nasolabial fatの位置からスタートして、逆行性(尾側から頭側へ)で行います。長さ6〜8cmのPDO糸がよく使用されます。

まとめ 〜安全に糸リフトを行うために〜

スレッドの種類や挿入角度、方向を調整することで、より自然で長持ちする結果を得られる可能性があります。

合併症をできるだけ減らすため、糸は適切な深さに入れることが必要です。

糸がSMAS層の下に挿入されると合併症が発生する可能性があり、耳下腺または顔面神経が損傷する可能性があります。

また、糸を浅く挿入すると、皮膚に凹凸やくぼみが生じる可能性があります。

別の研究によると、スレッドリフト手順で使用される糸の数が多いほど、合併症のリスクが高くなるようです。

慢性炎症反応の発生はまれですが、研究では、繰り返す外傷や縫合糸のコグと周囲の組織との間の微小な動きにより、顔面の軟部組織に慢性炎症が誘発される可能性があることが強調されています

さらに稀な合併症として、医原性の浅側頭動脈仮性動脈瘤が記録されています。

例えば、Nimiiらは、27歳の男性が中顔面スレッドリフト手術後にこの合併症を発症し、耳介前部に痛みのない脈動する軟部腫瘤が生じた症例を報告しました。

外科的介入が必要となり、仮性動脈瘤の切除と浅側頭動脈の顕微手術による再建が必要となりました。

スレッドリフト手術を進める前に、施術者と患者がこれらの潜在的な合併症について情報を得て、リスクと利点を慎重に比較検討することが極めて重要です。

また、Hongらは、糸リフトの持続性に寄与する要因を調査しました。

これらの要因には、

糸に使用される材料、糸の太さおよび引張強度、固定および保持強度のためのコグの構成および数、コグの方向、組織の弾力性に基づく糸挿入の深さ、顔の解剖学的構造に基づく適切なリフトベクトルおよび固定ポイントの選択、吸収性糸の有効期限

が含まれます。

糸リフト手術を行う際に、最適な結果と患者の満足度を確保するには、施術者がこれらすべての要因を考慮することが重要です。

この研究には、考慮に値するいくつかの限界があります。

まず、スレッドリフト手術の有効性を評価する客観的な評価が欠如していることです。

この研究では、ほうれい線とマリオネットラインの矯正に大幅な改善が見られましたが、標準化された評価尺度や定量的測定などの客観的な尺度が欠如しているため、

改善の程度を正確に判断したり、他の治療法と結果を比較したりすることが困難です。

加えて、対象者が3名と少数であるため、研究結果を一般化するにはさらなる検証が必要です。

効果の持続期間や長期的な副作用についての詳細なデータは不足しており、これらは将来の研究課題となります。

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