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【レビュー論文】エクソソームは結局いいの?悪いの?最新研究を徹底レビュー!

“エクソソームは美容において革新的製品になりうるが、ヒトでの効果においてはまだ議論の余地がある”

Therapeutic Values of Exosomes in Cosmetics, Skin Care, Tissue Regeneration, and Dermatological Diseases ; Cosmetics 2023

目次

エクソソームってなに?

エクソソームとは何かと言いますと、細胞から分泌される小さい粒々のことです。

1980年代頃から様々な細胞がこの小さい袋、小包と言いますが、これを分泌することが観察されました。

大きさは30ナノメーターから200ナノメーターで、様々なタンパク質や脂質、messenger RNAやmicro RNAなどの遺伝子伝達物質を含みます。

特に幹細胞という新しい細胞を生み出す細胞から出されるエクソソームは、細胞が生きていく上での環境を整えたり、遺伝子発現を調整します。

そのため、エクソソームは細胞の成長に関わって、肌の健康に良い影響を与えると考えられています。

美容におけるエクソソームの効果

2023年にシカゴ大学から、化粧品、スキンケアなどにおけるエクソソームの治療価値に関するレビュー論文が発表されました。

”Therapeutic Values of Exosomes in Cosmetics, Skin Care, Tissue Regeneration, and Dermatological Diseases”Cosmetics 2023

レビュー論文とは、複数の研究報告・論文をもとに情報をまとめて結論を出した、信頼性の高い論文です。

でもう早速結果なんですが、実際の論文の図を出すとこんな感じになっていました。

結論をまとめるとエクソソームの役割は、

”活性酸素や炎症に関わる因子の発現を抑え、肌のコラーゲン合成を促進する”

ということと、その結果として

”肌の弾力を高め、シワを軽減する”

ということでした。

詳しいメカニズムをみてみると、脂肪幹細胞由来培養液骨髄幹細胞由来エクソソームは、

活性酸素種(ROS)やTNF-αを減らし、代わりにTGF-βを高めてMMP-1やpro-collagen type1を活性化させました。

簡単に言うと、環境ストレスから肌を保護して、肌にハリと潤いを与えるアンチエイジング効果が期待できると言うことです。

さらに2021年に発表された中国の研究によると、

エクソソームは肌のアンチエイジング効果だけではなく、傷の瘢痕化を抑える、つまり傷跡を残りにくくしたり、しみの予防育毛にも応用できる可能性があることが示されています。

”The novel mechanisms and applications of exosomes in dermatology and cutaneous medical aesthetics”Pharmacological Research 2021

”エクソソームは肌のハリや傷跡改善、しみや育毛にも効果的かも”

エクソソームを使いたがらない医師が多い理由

ここからは“エクソソームを使いたがらない医師が多い理由”

について解説していきます。

これだけ良い効果がクリニックや研究報告でうたわれているエクソソームですが、なぜ医師の中には使いたがらない人がいるのでしょうか?

結論を言いますと、エクソソームはまだエビデンスが少ない、つまりヒトにつかうには科学的な根拠が乏しいからです。

エクソソームについて様々な研究報告があるものの、ほとんどは実験室で細胞を対象にしたもの、またはヒトでの研究でも小規模であり、効果があると確信を持てないのです。

例えば、最初に紹介した2023年シカゴ大学の美容論文ですが、エクソソームがアンチエイジング効果があると主張する根拠となる研究をいくつか見てみましょう。

エクソソームがシワの改善役立つという記載の横に、根拠となる引用論文の番号がありますが、こちらをみてみると2021年の中国の論文にとびます。

その中で、シワ改善の根拠となりそうな報告を探すと、こちらの3つの研究が表にまとめられていました。

詳しくみてみると、

一つ目の研究がヒト真皮線維芽細胞から抽出したエクソソームを同じ線維芽細胞および光老化マウスに投与

二つ目がiPS細胞から抽出されたエクソソームをヒト真皮線維芽細胞に投与

三つ目は胚性幹細胞をヒト真皮線維芽細胞に投与

ヒトに対して行われた研究はありませんでした。

同様に、同じ中国のレビュー論文に記載のあるエクソソームのシミ予防効果や、育毛効果のセクションでも、

引用されている研究は細胞や動物を使ったものがほとんどです。

他にも、エクソソームの研究として紹介されていても、

実際の研究で使用されているものが抽出されたエクソソームではなく、エクソソームを含む幹細胞培養液という場合もあります。

幹細胞培養液とは、幹細胞という分裂能力が高い細胞を実験室で育てる(培養する)時にできる液です。

これは、エクソソームも含みますが、他にも細胞を成長させる因子や成長の環境を整える成分が数多く含まれます。

つまり、エクソソームだけが実験の結果をもたらしているのではなく、他の成分があることで美容に良い結果を出している可能性があり、

その場合、美容施術には値段の高いエクソソーム製剤ではなく、より値段の手頃な幹細胞培養液を使った方がコスパ良く効果がでると考えられます。

まとめると、

①実際にヒトにエクソソームを使用して効果が出たという研究が少ないこと

②本当にエクソソームが美容の良い効果をもたらしているかが不明であること

以上の理由から科学的な根拠を求める医師は、

エクソソームを自分のお客様に使うにはまだ早いと考えているのではないでしょうか。

おまけの雑学ですが、エクソソームには色々なものがあり、由来する細胞によって期待できる効果が異なります。

脂肪や血液の幹細胞由来のエクソソームであったり、

多機能幹細胞、胎盤、皮膚を構成するケラチノサイト由来のもの、

さらには、生乳由来のミルクエクソソーム小麦由来のエクソソームまで、こんなにあるのかと思うほど様々あるんです。

”エクソソームはまだヒトに使用した場合の科学的根拠が少ない

まとめ

美容業界で話題のエクソソームについて解説をしました。

エクソソームの効果としては、まずは肌のアンチエイジング効果しみやしわを改善・予防し、さらに傷の改善や育毛にも効果的である可能性があります。

様々な効果が期待できるエクソソームですが、まだ実験室レベルの報告が多く、ヒトでの効果に関してはまだまだ今後の研究が必要でしょう。

培養に使う幹細胞の種類によっても効果は変わってきますし、

最近は、エクソソームの純度を高めたピュア・エクソソームという製剤も出てきていますが、

純度が高まることで効果がさらに高まるかは、今後の研究をみてみないとわからないですね。

ただ、美容医療というのは医学の一分野で、これからでてくる報告によっては、エクソソームの効果がさらに期待できるかもしれません。

このように正しい知識というものは時間が経つにつれ変わっていくものなので、日々情報をアップデートしていきましょう。

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